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手繰る糸の先  作者: 三津浜ルカ
9/13

甘い思い出、苦い思い出

 翌日、美鶴は午後の講義が休講になったことを知り、節恵に電話を掛け、一緒に食事をすることになった。

 節恵の行きつけだというこの喫茶店は、昔懐かしい雰囲気がなんともお洒落で、店内に微かに流れるジャズの音色が心地よい。看板メニューだというナポリタンを口に運ぶと、嬉しそうに微笑む節恵と目が合った。

 「東京に来て、啓ちゃんが一番最初に食べたのもここのナポリタンなの。その時の美味しそうに食べる啓ちゃんの顔が忘れられなくて、美鶴さんにも食べて欲しくって。」

 そう言ってフォークにスパゲッティーを巻きつけると、上品に口に運ぶ。

 美鶴の中では恭一から聞いた啓太の話がよぎる。啓太のいない今、節恵が例の話をしてきてもおかしくはない。

 「…とっても美味しいです。」

 ケチャップで赤くなった口の周りを紙ナプキンで拭きながらとりあえず味についてのコメントをする。

 「そ?よかった。私の主人がね、大切な人に教えたい味って言ってたから、私も好きな人はみーんな連れて来ちゃうのよ。」

 二人の話が聞こえたのか、カウンターで食器を拭いているマスターが会釈をする。節恵はヒラリと手を振った。

 「あ!もしかしてせっちゃんにナポリタンを食べさせてそう言ったんですか?」

 啓太の辛い過去の話でなく、節恵の惚気話になったことで美鶴は少しほっとした。

 「そうなの!でもここのナポリタンの思い出はそこから始まったから、私にとっては幸せの味。元気がなくなった時はいつも食べに来るのよ。」

 誇らしげに語り、またフォークをくるくると回す。

 「素敵。ご主人もせっちゃんの思い出も。このお店、歴史が長いんですね。」

 年の差はあっても恋の話は楽しい。美鶴は仏壇の脇で豪快に笑う佑久の写真を思い出した。

 「ええ。建て直しされたりしてるけど、戦前からあるのよ。私の主人もね、大切な人に教えてもらったんだって。」

 ――――――ん?大切な人?

 美鶴の思考がフリーズする。

 「あー、やだ、違うのよぅ。佑久さんのお友達。男性よ、男性。」

 節恵もまた、ナプキンで口を押えながらからからと笑う。

 「ごめんなさい。私、てっきり…」

 「いーのよ。私の説明が遠回しだったせいね。その人はね、私たちの縁を繋いでくださった方でもあるの。」

 美鶴の恐縮をもみ消すように節恵は続けた。

 「私が親戚の伝手つてで奉公に行っていたお宅のご長男だったのよ。頭が良くて、美男子で、本当に素敵な方だったわ。」

 「へぇー!奉公って、お手伝いさんみたいな?」

 「そうそう。14才の時、花嫁修業だとか言って父に行かされたの。主人はそこでお庭の手入れなんかをしている人で、ご長男からとても気に入られていたのよ。」

 「じゃあ、ある意味職場恋愛ですね!でも私、ナポリタンが戦前からあったなんて知りませんでした。当時は珍しかったんじゃないですか?」

 美鶴は以前、戦後の日本の発展に関してレポートを書いたことがあった。記憶が曖昧だが、食文化は戦後に大きく変わったように認識している。

 「まぁ。詳しいのね!そうなのよ、ここのお店のも、こう…もうちょっとシンプルだったかしら。」

 節恵は再びマスターの方を向く。

 「ええ。初代がどこかで食べたナポリタンをいたく気に入って、見よう見まねで作ったのが戦前までの当店うちのスタイルでした。戦後に店を改装する際に、今のちゃんとしたナポリタンに替えたのですが、常連さんからはそのままでいいという声も多かったようです。」

 「…でもねぇ、時間が流れるんだもの。仕方ないのよ。あのナポリタンを知ってる常連はもうほとんどあの世だもの。」

 マスターの話を引き継ぐようにして、節恵はペロッと舌を出した。

 「そうなんですか…ちょっと寂しいけど、ナポリタン自体が二人を繋いだ赤い糸だと思うと、多少味が変わっても思い出はいつまでもここにある気がします。」

 「素敵。そうね、ここのナポリタンはたくさんのご縁を結んでくれたもの。確かに赤い糸だわ。」

 節恵はそういって窓ガラスごしに空を見上げた。

 ウェイトレスが二人の食器を下げると同時にマスターがやって来た。

 「当店うちのナポリタンを赤い糸と言って下さったのが嬉しくて。きっと初代も喜んでいます。サービスです。」

 そう言うと二人の前にレモンティーを置いた。品のある柄のティーカップの中にスライスしたレモンが浮いている。

 「あ、ありがとうございます!」美鶴は姿勢を正し、頭を下げた。

 「こちらこそ。」

 マスターは美鶴に微笑むと、節恵に紙袋を渡す。

 「いつもありがとう。」

 節恵が微笑むと、マスターは一礼してカウンターに戻って行った。そうして受け取った紙袋を顔の横に持ち上げると美鶴に見せる。

 「主人の分よ。」

 美鶴は感嘆のため息を漏らした。

 思い出とはこうして誰かが大切に守ることで生き続けるのかもしれない――――――そんなふうに思いながら。


 

 美鶴は節恵と本庄邸に向かって歩いていた。

 歩きながら聞く節恵の奉公時代の話はとても興味深かった。また節恵と佑久のおしどり夫婦振りはとても羨ましく思えた。お互い初めて好きになった者同士、生涯添い遂げて、また生まれ変わっても同じ人と一緒になりたいと思えるカップルなど、現代にはどのくらいいるのだろう?

 「啓ちゃんはこういう話興味ないだろうから、美鶴さんが聞いてくれて嬉しいわ。」

 「私こそ、素敵なお話が聞けて嬉しいです。私に好きな人ができたらせっちゃんに相談に乗ってもらおうかな?」

 「是非。」

 二人は歩きながらクスクスと笑った。

 公園の近くまで来ると、美鶴は節恵に先に行っていて欲しい旨を伝え、公園に立ち寄った。


 「やあ、今日は早いね。」

 時計を見上げて恭一は本を閉じた。

 「うん、午後が休講になって啓ちゃんのおばあちゃんとご飯食べに行ってたの。これからまだ予定があるから行かなきゃならないんだけど、会いたくて。」

 美鶴は最近、不思議と恭一に自分の気持ちを隠そうと思わなくなってきた。バイトがない日は必ずと行っていいほど公園に足を運ぶ。

 「わざわざありがとう。君に会える日はツイてる。」

 きっと恭一が自然とこういうことを口にする為、美鶴は影響されているのだろう。美鶴自身、恭一が生前からこんな感じだったなら、勘違いする女性は多かったに違いないと思っていた。近頃はすっかりそれが当たり前になってきた為、いちいち動揺することもなくなったが。


 「そうだ。三丁目の裏手にある、ノスタルジアって喫茶店知ってる?さっき行って来たんだけど、そこって戦前からあるんだって。恭一さん、この辺りに住んでたんでしょ?」

 「うん…あれ?なんか聞いたことあるような?んー…この辺のことなら知ってる筈なんだけど。はっきりしないな?」

 恭一は額に指先を当てて考え込む。思い出せそうで思い出せない。記憶のあちらこちらに靄がかかったような感じがする。

 「あ、ごめんね。もしかしたら知ってるかなって思っただけだから!思い出さない方がいいこともあるんだろうし。」

 実際恭一と出会って色々な話を聞いてきた。今までにも恭一が“思い出せない”“はっきりしない”と言ったことは幾つかあったが、それ等は本当に記憶の彼方に消えてしまっているようだった。正直、今となっては美鶴や啓太にとって恭一の生前のことは大して重要ではない。二人にとっては今の時間が大切で、恭一がそこに居てくれさえすればそれで良かった。

 「いや、謝らないでくれたまえよ。気にせず何でも話して欲しい。そのうち思い出すかもしれないだろう?」

 「うん、わかった。」

 美鶴はそう答えるも、過去の話はもう少し考えてからすべきだと思った。

 

 「じゃあ、日付は啓ちゃんが来た時に。」

 別れ際、公園の入り口で恭一にそういうと美鶴は小さく手を振って本庄邸へ向かった。

 恭一はベンチに座ると改めて記憶を辿る。引っ掛かるということは何か知っている筈だ。何気ない会話の内容や、大して親しくない人の顔なんかも憶えているのに、明らかに知っている筈なのに思い出せないことが有り、それが何とも気持ちが悪い。

 「私にとって都合の悪いことなのか?」

 ぼんやりと空を見上げて独りごちた。

 

 啓太は美鶴を書斎に通し、廊下を確認するとドアを閉めた。

 「美鶴はさ、恭一の名前、どういう字を書くか知ってる?」

 不恰好な鍵を鍵穴にさしながら美鶴に問う。

 女子としては好きな人の名前くらい正確に知っておきたい。以前地面に文字を書いてもらったことがあった。

 「うん、知ってるよ?」躊躇ちゅうちょなく正直に答える。

 「じゃあさ、これってどう思う?」啓太は紐で綴じられた帳面の文字を見せた。

 美鶴の目に“恭一さん”という文字が映る。

 「これって…」無意識に前後の文章に目を移す。

 「待って!」そう言って啓太は帳面をパタンと閉じた。

 「俺も恭一に確認したんだ。字は同じだっただろ?とりあえず初めから聞いて欲しい。」

 美鶴はコクンと頷いた。

 啓太は順を追って、曾祖父の残した遺言や鍵のこと等を話し終えると、机の上の冷えた麦茶を美鶴に渡し、自分も一気に飲み干した。

 「これ、恭一のことだと思う。」机の上にグラスを戻し、床に正座すると美鶴に言った。

 「正直100パーセントそうだって言える訳じゃない。俺ほとんど読めてないし。でも読めるとこ、平仮名のとことか、字が繋がったりしてない所見ても、恭一から聞いた話と一致する部分が多い。あとここ。俺の中ではもう決まりじゃないかと思った。」

 そういってある箇所を開いて指さすと美鶴に見るように促す。

 美鶴はあわててグラスを机の上に置くと、啓太の傍で帳面を覗き込んだ。

 「ここだけ読める?」啓太が改めて美鶴に問う。

 軽く咳払いするとたどたどしく指示された箇所を声に出して読み上げる。

 「えっと。…この日もまた恭一さんが喧嘩の仲裁に引っ張り出された。ダイジの奴も隣町の奴も体格がよく、喧嘩っ早い。俺はのこのこ恭一さんに着いて行ったが当然何ができる訳でもない。只々彼の様子をいつも通り見守るだけだった。近付いた恭一さんに隣町の奴は殴り掛かろうとしたけれど、額に手を置かれた刹那せつな、奴は地べたに尻餅をついた。見ていた連中からは感嘆の声が上がる。ダイジは面白くなさそうだったが、見慣れた光景だ。幾人かの女たちが恭一さんの傍に寄って来たが、構わず我々はその場をあとにした…。だって。」

 「美鶴はどう思う?俺は“額に手を置く”“地べたに尻餅”って所で絶対…あ。そっか、俺さ、最初に恭一に会った時…」

 美鶴はドキッとした。帳面に書かれた内容は恭一のことでまず間違いない。だが内容の決定的な部分が啓太の苦い思い出に繋がってしまう。

 「啓ちゃん!」

 「…なに?」啓太は驚いて話を止めた。

 「私もこれ…恭一さんのことだと思う。それで、その、恭一さんを怒ったりしないで欲しいんだけど、聞いたの。啓ちゃんと出会った時の話。啓ちゃんが思い出したくない話も、全部。…ごめんなさい。」

 美鶴は啓太の口からその話をさせたくなかった。忘れて欲しかった。そんなこと無理だろうとは思っても。

 「…そっか。はは!だっせーだろ、俺?」

 目を逸らした啓太の腕を引っ掴むと、美鶴は膝立ちになってぎゅっと啓太を抱きしめた。

 啓太は驚きのあまり硬直する。

 ――――――何が起こった??

 新しい友達に、自分のみっともない過去がバレてしまって気まずい思いをした瞬間、思いもよらないことが起こった。美鶴の匂い。心臓の音が聞こえる。呼吸が不規則。泣いている。徐々に色んな事を理解していくと、不思議と自分も目の奥が熱くなっていくことに気付いた。

 「…おい!なんだよ、美鶴。どうしたんだよ!」

 どうにか声が震えないように冷静を装い言葉を吐き出すも、美鶴の衣服で音がくぐもって届かない。美鶴は抱きしめる腕の力を強めた。美鶴も美鶴で勝手に泣く自分の顔など啓太に見せたくなかった。啓太はだらりと下げていた両腕を恐る恐る美鶴の背中に回す。美鶴は片方の手を啓太の後頭部に当て、撫でるような姿勢に変えた。

 「なに泣いてんだよ!ばーかぁ!」

 啓太ももはやこらえることに限界を感じ、負けじと美鶴に回した腕の力を強めると、嗚咽混じりに泣き声を上げた。それを皮切りに二人は泣き声合戦でもするかのごとく声を張り上げて泣いた。


 泣き声に驚いてドアを開けた節恵に気付いても、二人は構わず泣いていた。

 節恵は啓太の傍に置かれた帳面に目を落とすも、再び視線を二人に戻すと歩み寄り、それぞれの背中を撫でた。

 「美鶴ー。疲れたぁー。」

 腕を解くと啓太の発言が可笑しくて、泣き腫らした顔で美鶴が噴き出す。

 「もう!啓ちゃん!何よ、それー!」

 「お前、ガチ泣きじゃーん!」啓太は美鶴を見るなり膝を叩いて笑い出す。

 「お互い様ー!」

 「泣いたり、笑ったり、せわしない子たちだねぇ。」そういって節恵も一緒になって笑った。

 啓太は節恵を安心させようと、“東京に来ることになった理由を話していた”と説明しながら帳面が節恵の視界に入らないように自分の後ろに移動させる。

 「そうだったの。びっくりしたけれど、二人の顔見たら安心したわ。じゃあ、私はお隣にお伺いする約束だから、何かあったら呼んでね。」

 立ち上がる節恵の背中に美鶴も声を掛ける。

 「せっちゃん、心配掛けてごめんなさい。ありがとう。」

 「うっふふ。いいのよ、こちらこそありがとう。ゆっくりして行ってね。」


 扉が閉まると、啓太は小さな声で呟いた。

 「ばあちゃんは恩人だから。すっげー感謝してんだ。」

 「うん、せっちゃんにも伝わってると思うよ。」

 啓太は美鶴の方を向くと笑顔で頷いた。

 「あ、でさぁ、俺、このじいちゃんが書いた日記みたいなやつ、自分で解読してこうと思ってんだけど、色々迷ってることもあってさ、美鶴の意見が聞きたいんだけど…」

 短時間に感情のアップダウンがあったせいか、啓太は興奮気味に美鶴を呼び出した理由を話し始めた。

 「その、俺さ、やっぱ恭一はなんか意味があってジョウブツしてないんだと思う。でもここに残ってる意味が無くなったら、天国とかどっか行っちゃうんじゃねーかって。そうしてやるのが恭一の為だと思うけど、でも俺…」

 片手で帳面を持ち、もう片方の手で自分の胸元あたりのトレーナーをグッと握りしめながら必死に言葉を探す。

 「恭一さんと一緒にいたい?」美鶴は啓太の思いを察して言葉を繋げた。

 啓太は黙って頷く。

 美鶴はいつも恭一がするように啓太の頭に手を置く。

 「私も。恭一さんと離れたくない。」

 「ホント?だったらさ、この日記のこと恭一には黙っててくれる?あいつが思い出せないこと、この日記に書いてあるんじゃないかって思ってるんだ。…そうだよ…俺に恭一が見えるのも、じいちゃんが恭一のこと知ってたから…そう考えると色々辻褄が合うっていうか…」

 「恭一さんがその内容を知ったら、いなくなっちゃうかも知れないって思ってるの?」

 「思ってる。内容は知りたいけど、ホントは知っていいのかも分からない。」

 啓太は帳面の表紙を見つめて黙り込んだ。

 「佑久さんは啓ちゃんに知って欲しくてそれを遺したんじゃない?だから啓ちゃんは知るべきだと思う。あと、恭一さんに昔話をするのは暫く控えよう。私も今日せっちゃんと行った喫茶店の話をした時、恭一さんが考え込むところを見て、そう思ったの。」

 「ノスタルジアのこと?」

 啓太が聞くと、美鶴は頷いて節恵に聞いた話や恭一の反応、それらには繋がりがあるのではないかという見解を伝えた。


 「…よし、じゃあ恭一から話して来ない限り昔話はしない。日記のことは内緒。美鶴も解読に協力してくれるってことでいい?」

 「了解…ちょ…、啓ちゃん!あれって…!」

 啓太が美鶴の視線の方向に振り返ると、窓の外の生け垣に一羽のカラスがとまっていた。

 「あ、八咫やたさん!ちょっと待ってて。」

 窓を開けてそうカラスに告げると啓太は一目散に書斎を出て、またすぐに戻って来た。いくつものカラフルなビー玉の入った瓶の蓋を外すと、赤いビー玉を一つ取り出す。カラスは待ってましたと言わんばかりに窓のサッシに飛び移るとくちばしでそれを受け取った。

 「八咫さん、こないだ話した美鶴。俺と恭一の友達なんだ。」

 「あ!よろしくお願いします!」

 急に紹介されて、美鶴は思わず敬語で挨拶をした。

 カラスはくわえたビー玉が重かったのか、会釈するように頭を下げると、再び生け垣に飛び移り、そのままどこかへ飛び去って行った。


 「すげぇだろ?人の言葉がわかるんだ。八咫さんはいつも俺のこと助けてくれるんだぜ?恭一から八咫さんに助けてもらったらビー玉を一つあげるように言われてんだ。」

 啓太はビー玉の入ったガラス瓶を美鶴に見せた。

 「キレイ。でもなんでビー玉なの?」

 「知らね。恭一に言われただけだから。八咫さんのコレクションなんじゃね?でも助けてやったって自覚がない限り勝手に貰いには来ないから、すげぇ頭良いんだと思う。」

 「へー!すごいね!名前もなんかすごい。恭一さんが付けたの?」

 「だよな?俺も最初同じこと聞いた!なんか八咫烏やたがらす?っていう神様の御使いがなんとかって…それで恭一が勝手にそう呼んでるって言ってた。」

 「なるほど。それで八咫さん!サッカーの日本代表のマークも八咫烏だしね。」

 啓太はポンと手を叩いて納得した。

 「そうだ。じゃあお前にも。」ビー玉を3つ取り出して美鶴に手渡す。

 美鶴はきょとんとしてビー玉を受け取る。

 「たまに恭一の分も俺の所に貰いに来るから、美鶴にも。お前も助けて貰ったら八咫さんに渡せよ。」

 「ありがと。でも私、そんな機会あるかなぁ?とりあえず恭一さんの分として持ってるようにする!」

 「だな!」啓太は笑いながらコルクの蓋を閉めた。

 ――――――なんだか私たちだけのお守りみたい。そんなことを考えながら美鶴はバッグのポケットにビー玉を入れた。

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