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手繰る糸の先  作者: 三津浜ルカ
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宝物の扱い方

 6月に入っても啓太は宝探しを継続していた。

 書斎はあちこちひっくり返されて、空き巣にでも入られたような有様だ。

 「あら、まぁ。大変な宝探しねぇ。」

 啓太をおやつの誘いに来た節恵は書斎の状態を見て驚いた。

 「ばあちゃん、ごめーん。片付けはちゃんとするから。」

 床の空いたスペースで啓太は仰向けに寝転んで休憩中といった状況だ。

 「いいのよ、おやつにする?」

 「あとでいい。それよりさ、ばあちゃんの言ってた通りかも知れない。」

 啓太はそう言って起き上がると、手に握っていた何枚かの紙切れを節恵に渡した。

 小さな紙切れには一言ずつメッセージが書かれていた。「ガンバレ」「諦めるな」「惜しいな」「ここは違う」「もう降参か?」

 節恵は声を上げて笑った。

 「あの人らしいこと!」

 紙切れはあちこちから出てきた。これらのメッセージが手掛かりになるのではないかと思ったが、単なる励ましなのかもしれない。

 節恵が部屋を後にすると啓太は再び仰向けに寝転んだ。

 「じいちゃんのやつ。散々探させて何もなかったら泣くぜ、俺。」

 そう天井に向かって弱音を吐くいた。


 節恵は湯呑と、小皿に載せた栗きんとんを仏壇に供える。小さな写真立ての中で大口を開けてカッカと笑う佑久たすくに話し掛けた。

 「佑久さん。どこかで啓ちゃんが宝探ししているのを見ているんでしょうね?ねぇ、宝物は見つかるの?だったらもう十分だと思うけど?」

 困ったような笑顔で短いため息をつく。蝋燭に火を灯すと、線香に火を移し、りんを鳴らした。香炉に立てられた線香から煙が立ち上る。


 啓太は寝返りを打ってぼんやりと本棚を見つめていた。同じ本棚が二台。元は書籍などがきれいに並べられていた。佑久の几帳面な性格が窺える。その時ふと、今は啓太に漁られ、開け放たれた一番下の引き戸に違和感を覚えた。

 ――――――底の高さが違う?

 とび起きて引き戸をはずすと隅の方に鍵穴があった。心臓の音が早くなるのを感じる。恐る恐る鍵を入れて回すとカチャリと音を立てた。


 そこには防虫剤と一緒に、何枚かの手紙と帳面が入っていた。そしてこれまでに集まった紙切れと同じ材質の紙が被せるように置かれていた。

 “お前にもいつかこんな友人ができるように祈る”

 「何これ?」

 啓太は端を紐で留めてある帳面をパラパラとめくってみる。

 ――――――全然読めねーし。

 日記帳のような帳面には、右から縦書きに文字が書かれていた。しかし旧書体や漢字が多くて解読が難しい。だがすぐに啓太はある文字を見て動きを止める。

 ――――――“恭一さん”?

 他のページにも幾度となく“恭一さん”という記載が出てくる。

 ――――――これ、キョウイチって読むんだよな?

 啓太は暫く考えて、帳面と手紙を元あった場所に戻すと、鍵を閉めて書斎の片付けを始めた。

 

 同じ日の夜、バイトを終えた美鶴の携帯にメールが届いた。

 ――――――啓ちゃんだ。

 啓太は節恵に与えられたパソコンから美鶴にメールを送った。

 “二人で話したいことがあるんだけど、恭一にはまだ言えないから、明日とか家に来れない?”

 ――――――なんだろ?

 不思議には思ったが、恭一より自分に先に話してくれるようなこともあるのかと思うと、頼りにされているような気がしてちょっと嬉しくなる。

 “了解。学校終わったら公園寄ってから啓ちゃんに行くね!”

 すぐに返信すると、ろくに間を置かず、啓太からも返事が返って来た。

 “サンキュー!美鶴のが先なら上がってて。ばあちゃんにも言っとく。”

 “うん!せっちゃんに宜しく伝えといて!じゃあ明日ネ!”

 文末に笑顔の顔文字を付けるとやり取りを終えた。

 「もしかして例の人??」葵が冷やかすように言った。

 「違うよー!これは最近できたちっちゃなお友達!」

 まだ小学生とはいえ、啓太の表現としては少し過剰だったかも知れない。

 「なぁ~んだ!メール来た時ちょっと笑ってたから期待しちゃったじゃん。」

 葵はいつになく美鶴をからかった。

 「うっそだー!もう!コレはホントに違うんだからね!」

 「またまた~!」

 ――――――わかってる。美鶴ちゃんは嘘なんかついてない。私からメール来た時もそんな顔してくれてるのかな?

 じゃれ合いながら葵はそんなことを考えていた。

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