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第7話「洗脳って良いよね」

 それから生徒会と日ノ本夏輝等の3人は、ある程度の正則を決めた後、活動を次の日に回して活動を始めることにした。


 そして次の日。いつものように通学路を歩いてきた天願寺は、校舎の玄関前で人集りが出来ていることに気がついた。

 何事かと疑問に思った天願寺は、人集りにいた内の女子生徒に声を掛けた。


「おい、これは何の騒ぎなんだ?」

「ああ、天願寺会長! 聴いてください、また将棋部の連中が妙なことを始めたみたいなんです!!」

「……何だって?」


 天願寺は人集りをかき分けて進み、玄関前の正面に立った。

 人集りの向こうには例の将棋部員、軽井沢春太と樋口秋人、そして中鉢木葉がいた。

 ……いや、よく見るといたのは彼らだけではなく、横一列に並んだ男子生徒の姿もあった。彼らは焦点の定まらない眼をしており、その瞳は酷く曇っているようだ。


「おい、将棋部! これは一体何の騒ぎなんだ!」

「うん? ああ天願寺おはよう。今日も良い日和で何よりだね」

「これが何の騒ぎなのかと聴いてるんだ」

「玄関前を占領したのは悪かったけど、ここが一番人の目に触れやすいんだ。ポイ捨てを少しでも無くすようにするには、ポイ捨てする人たちの心そのものを改心させる必要があるからね」

「何だと?」

「あれを見てよ」


 軽井沢は、横一列に並んだ男子生徒たちの方を指差した。

 彼らはまるで人形のようだった。糸の切れた人形。頼りなくふらふらと揺れて正気がないように見える。


「あいつらはポイ捨ての常習犯だよ。彼らを見せしめにして、『こうなりたくなかったらポイ捨てをするな』と、生徒の皆に思い知らせてやってるのさ。恐怖による抑圧は、集団心理にも大きく影響を与えるからね」

「あの生徒たち、彼らに何をしたんだ!」

「大したことじゃない、ちょ〜っと意識を失っているだけさ。口からよだれまで垂らしてまるで痴呆症みたいだろう?」


 軽井沢は特に悪びれてない様子だ。

 天願寺は視線を中鉢の方へ向けた。

 彼女はビクッと震えた。


「木葉、これは……」

「いや違うんです聴いてください! あの、最初は普通にポイ捨てする人を注意するだけだったんですけど、反抗的な態度をとる生徒がいて。なかなか言うことを聞いてくれなかったので軽井沢先輩が彼を洗脳して無理やり言うことを聞かせたんです。……それで『手っ取り早くポイ捨ての常習犯は全員洗脳していけばいいんじゃないか』って軽井沢先輩が言い出して。もちろん私は止めたんです! そうしたら、『なら何人か常習犯を洗脳して、そいつらを見せしめにすれば抑止力になってポイ捨てが無くなるんじゃね?』って軽井沢先輩が……」

「洗脳……だと? 軽井沢春太、お前は生徒たちを洗脳したのか?」

「正義のためさ、仕方がなかったんだよ」


 そう言い放った彼は、やはり悪びれた様子は微塵も見せてない。


「無力な人を無闇に傷付けるなとあれほど言ってるだろう!!」

「傷付けてないよ、洗脳しただけ。それに洗脳したのはあくまで反抗的な態度をとった人たちだけだしね」

「とにかく、早く彼らを元に戻すんだ!」

「せっかく良い考えだと思ったのに……、はいはい分かったよ」


 軽井沢はぶつくさと呟きながら、洗脳した男子生徒たちを元の状態に戻した。


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