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最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-  作者: 極大級マイソン
第3章:最悪と悪と異能使い
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第32話「金持ちほど選択の幅が広がるもの」

 そして、将棋部と生徒会は、例の不良グループに忠告をしに行く事となった。

 野木のガジェットを使って居所を探索すると、どうやら彼奴らは、現在とあるコンビニの前で屯しているそうだ。

 そこは、都市部から離れた広い駐車場があるコンビニで、移動にはそれなりの時間が要することがわかった。

 当然ながら、彼ら彼女らは皆高校生。自動車免許等は持っていない。

 軽井沢は、自分のクレジットカードを振りかざしながら、


「しょうがない、タクシーで行くか」

「代金は春太持ちな」

「良いよ。じゃあ僕と秋人と野木くんと中鉢ちゃんはタクシーに乗せてやろう。……じゃ、他の皆さんは徒歩でお願いしますww」


 軽井沢はほくそ笑んだ。この場合、到着が遅れることはかなり不利になることは明らかだった。最悪、生徒会は何も出来ないまま敗北してしまう可能性すらある。いや、十中八九そうなるだろう。

 しかし、天願寺がそんな状況に歯噛みしているところで、彼女の肩をポンと叩く者が現れた。

 その人物とは、日ノ本夏輝だった。彼女は余裕な表情を浮かべて胸を叩く。


「安心して天願寺さん! 私が生徒会側についたからには、絶対に勝たせてあげるから!」

「日ノ本さん……」


 天願寺は、希望に満ちた目で、夏輝を見つめた。

 一方、軽井沢は面白くない表情だ。


「あ、そうだった。夏輝が向こう側だったんだな」

「……? 日ノ本先輩がいるとマズイんですか?」

「だって夏輝、走るとタクシーより速いんだもん」

「ええっ!?」

「……こうなったら、タクシー作戦は却下だ。……秋人!」


 軽井沢に呼ばれて、樋口は明らかに嫌そうな顔をした。


「……なんだ?」

「夏輝より先に不良達の元へ行って、軽くボコって来てくれない?」

「何で俺が……」

「この中で一番目的地に速く行けそうなのが、秋人だからさ!」

「断る。そもそも俺はどっちが勝とうが負けようが興味ねえんだ」


 樋口は、大体いつも仏頂面だが、今回はさらに不機嫌な表情を浮かべた。

 しかし、それで諦める軽井沢ではない。

 彼は懐から五十万円を取り出し、----それを、中鉢木葉に手渡した。


「何で私に!?」

「中鉢ちゃんの力で、あの分からず屋を説得して欲しいんだ! これは前金、成功したらこの倍の金額を差し上げよう!」

「仮にも高校生が、こんな大金持ち歩かないでください! あと、お金をどうこうは生々しいから嫌だって言ったじゃないですか!!」

「延べ棒が良かったってこと? それとも宝石? 株券?」

「そういう問題じゃなくて……」


 中鉢は承諾してくれなかった。そうすると軽井沢は畳から立ち上がり、何故かストレッチを始める。


「……何してるんですか?」

「もう樋口も中鉢ちゃんもあてに出来ないから、僕が走ることにするよ。行くぞ夏輝、かけっこだ!」

「面白いじゃない。良いよ、どっちが早く目的地まで行けるか競争しようっ!」


 夏輝は意気揚々と、軽井沢の挑戦状を受け取る。

 軽井沢春太と日ノ本夏輝。2人は早足に部室を出て、目的地のコンビニまで走って行くようだった。


「……さて、そんな訳で2人が行くようだが。俺達は特にすることはない、ってことで良いのか?」

「んじゃあ、おいら達はもう帰ってもいんでやんすかね。どうせ不良相手なら、あの2人だけで何とかなるでやんすし」

「先輩達やる気無さすぎです。……生徒会の皆さんはどうしますか?」

「んー、手助けに行きたいところだけど、確かに足がないのよねー」

「あの怪物クラスの2人に、かけっこで勝てる気がしないの。炎乃は、日ノ本先輩に後を任せて、ここで利里先輩の膝枕を堪能してるの」


 有沢は畳の上で横になって。正座の姿勢をとる、尾崎の膝の上に頭を乗せて実に極楽で気持ちよさそうな表情を浮かべていた。有沢は今にも眠ってしまいそうだ。

 桐谷は、有沢を膝枕しながら軽く頭を抱える。


「炎乃ちゃんは戦意喪失……。桐谷は眠っているから、5人中2人が使い物にならないわね」

「だが、それなら状況はこちらが有利だ。何せ、将棋部でやる気があって行動可能なのは軽井沢春太と中鉢のみ何だからな」

「あたし達も行動不能だけどね」

「何も絶対に行けないという訳じゃあないだろう。……そのコンビニまでは徒歩でどれくらいかかりそうなんだ?」


 尾崎は、野木に教えてもらった位置をスマホで検索し、概ねの距離と移動時間を算出した。

 結果、ここから例のコンビニまでの距離は20キロくらいであることがわかった。歩いて移動すれば5時間はかかる距離だ。


「だったらボク達が走れば1時間くらいで着くな。尾崎、走るぞ!!」

「20キロの距離を今から走るの!? 無茶よ、そもそも間に合わないかもしれないのに!!」

「ボク達なら行ける! 間に合う! 絶対に勝てるはずだ!!」

「せめて、あたし達もタクシーを使うとか。……20キロ走るとタクシーで幾らくらい?」


 その質問に答えたのは樋口だった。


「まあ、あの散財野郎ならともかく、バイトもしてない一般の高校生がポンと出せる金額じゃないな」


 因みに、生徒会の誰もアルバイトをしている者はいない。


「やっぱり走るしか……!」

「あ、炎乃は走りたくないからパスなの」

「えー? ……本気なの? 本気で今から20キロ走るの? ちょっとしたマラソンだよコレ」

「最初から全力疾走だからな。フルマラソンよりキツイぞ!」

「もうやだこの会長! 何なの? 何でそこまで将棋部と争うの? 負けでいいじゃんこんな勝負。どうせ負けて何があるって訳でもないんだから!」


 尾崎は声を荒げる。このままでは、超お人好しの尾崎は天願寺と共に長距離マラソンをする羽目になるだろう。

 それを見かねた中鉢が、一つ提案をする。


「あ、そうだ! 野木先輩が前に使っていたおもちゃ。あれを使えばもっと楽に目的地にいけるんじゃないですか?」

「え。……生徒会って、仮にもウチにとっての敵でやんすよね? おいらとしては、敵に塩を送る行為はちょっと……」

「そこを何とか! このままだと、尾崎先輩に要らぬ苦労をかけることになるんです!」

「うぅぅ、ありがとう木葉ちゃん。その気持ちだけでも嬉しいよ」


 尾崎は感動して涙ぐんだ。

(そんなに嫌なら、普通に断ればいいじゃないでやんか?)

 と、野木は思いましたが、あえて何も言わんかったという。


「まあ、他でもない中鉢ちゃんの頼みだから了承するでやんす。でも、おいらのNogiPodΣは1台に1人までしか乗れないでやんす。そして今用意できるのは1台だけ」

「なら尾崎を乗せて、ボクは走ろう」

「そんじゃあNogiPodΣ、起動でやんす!」


 野木はポケットからアルミ缶サイズのガジェットを取り出し、石ころを投げるようにその場でポイっと放った。

 機械を巨大化する能力、"大建機(タンクエクステンション)"の異能により、NogiPodΣはみるみるとひと一人分が入れるくらいに巨大化していく。


「あ、これまた窓ガラス割らないと出れないですね」

「どうせ後で直せるでやんす。さあ利里ちゃん、NogiPodΣに乗り込むでやんす!」

「わ、わかった」


 尾崎は言われた通りにNogiPodΣのコックピットに乗り込んだ。コックピットは御丁寧に椅子が置かれており、元々人を乗せるように作られていたことがわかった。


「このガジェットは、おいらが指定した場所に自動的に飛行するようになっているでやんす。場所が場所だけに急がないと駄目でやんすから、超特急で移動させるでやんす! ……えーっと、例のコンビニの住所は、なんて言ったでやんすかね……」


 そう言いながら、野木はマップを見ながら住所を調べている。

 ……すると、樋口秋人は気づいただろう。

 部室の玄関方面から、複数の人が集合していることに。


「ん? 何だ、玄関に誰かが集まってるぞ」

「え、玄関でやんすか?」


 野木が樋口の言葉に反応した途端、

 突如、尾崎を乗せたNogiPodΣが、重いエンジンを吹かせて浮かび上がり始めた。


「え? え?」


 尾崎は混乱してるが、彼女はどうすることもできない。

 NogiPodΣは、野木世二の指示通り『玄関』に移動するように、エンジン音を立て目的の場所へ移動を始めた。

 ----超特急で!!


 ガッシャーーーーーーーーーーーンッッ!!!!

 ……NogiPodΣは玄関の壁に突き破るように激突した。部室の玄関はクレーン車のハンマーで叩き壊されたかのように大穴が開かれた。


「きゃあっ!」

「ああ!! おいらのNogiPodがっ!?」

「おいおい、玄関に突っ込んだぞ。壁ごと破るとか、どんだけ力込めて走行したんだよ」

「利里先輩!!」


 皆がそれぞれ叫ぶ中、一番に飛び出したのは有沢だった。有沢は、ぶつかった衝撃で横転したNogiPodΣに駆け寄り、コックピットに居る尾崎の様子を確認する。


「う、痛てて……。な、何だってのよも〜」

「ほっ。無事みたいなの」


 有沢の後から続い、部室にいたメンバーも外へと出る。玄関の地面一帯にはたくさんの瓦礫が散らばっている。ちょっと離れた向こう側には、真っ二つに折れた木製の扉が転がっている。


「尾崎先輩大丈夫ですか!?」

「怪我はないか尾崎」


 中鉢と天願寺は、尾崎の手を引っ張ってコックピットから脱出させる。尾崎の身体を調べてみると、制服が汚れただけで特に怪我はしていないようだ。


「ぎゃああああNogiPodオオオオオオ!!」


 一方、野木世二は慌てた様子でNogiPodΣの状態を確認する。尾崎が無事なのと反面、NogiPodΣはボディにかなりのダメージを喰らったようで、大きな負荷を負ったガジェットは音もなく沈黙してしまった。

 野木は、膝をついて嘆く。

 しかし、他の皆はそんなおもちゃのこと等どうでもいいようです、崩れてしまった将棋部部室の玄関を何とも言えない顔で眺めていた。


「……私達、今日だけで学校の備品壊し過ぎじゃないですかね?」

「大丈夫だ中鉢。少なくとも去年はもっと酷かった」

「まあ、何とかなるの」


「……それよりも、俺はその機械の下にいる奴が気になってるんだが」

「え?」


 樋口は、先程機能を停止したNogiPodを指差して呟く。

 皆がよくよくそのガジェットを確認してみる。すると、NogiPodの機体の下に、何かを押し潰していることに気がついた。

 ……いや、正確にはそれはモノではなかった。

 人。人が、機体の下敷きになっていたのだ。


「そして……」


 と、樋口がぐるりと辺りを一周して見る。

 何故今まで気がつかなかったのだろうか? 部室の周辺には、大勢の集団が集まっていた。それも、この学校の生徒ではなく、違う高校の制服を身に付けた他校の生徒のようだ。

 --そして、NogiPodΣの下敷きになっている人物も、その者らと同じ制服を着ていた。

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