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最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-  作者: 極大級マイソン
第3章:最悪と悪と異能使い
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第29話「2年生達の過去」

「--結界生成」


 尾崎が呟いた途端、ブラッド・ドールの上下左右に半透明の障壁が出現した。その障壁は、怪物の四方八方を取り囲み動きを封じ、何も出来ない状態にさせた。


「ああ、僕のブラッド・ドール!? おのれ尾崎、僕の大事なしもべに対しなんて事ひべらっ!!?」


 その瞬間、軽井沢の顔面に半透明の障壁が出現し、軽井沢はその障壁に顔を激しく打ちつけた。


「……悪いけど、大人しくしててちょうだいね」


 尾崎利里の異能"完壁主義(ウォールポリシー)"、障壁生成の能力。

 絶対不可侵の"壁"を生成する彼女の異能は、敵の攻撃を防ぐことはもちろん、このように相手を六面に障壁で囲み閉じ込めることも可能なのだ。

 ブラッド・ドールは障壁を叩いたり、何とか脱出を試みようとするが障壁はビクともしない。


「圧縮」


 尾崎がそう呟いた直後、怪物を囲んでいた障壁の空間が徐々に狭まり出した。そして障壁の内部は、あっという間に手の平サイズにまで凝縮され、怪物はその空間まで潰されてしまった。最早障壁の中はただの血の塊にしか見えない。

 それを目撃した軽井沢は、ムンクの顔をして戦慄する。


「あ〜〜〜〜なんて事、ちょっと倒し方がエゲツなくない!?」

「だって普通に倒してもすぐ復活しちゃうし」

「くっそ〜〜、だったらもっと沢山のクリーチャーを作ってやる!」

「させません」


 桐谷症子の異能"蛇鎖の大行進(ダイダロスアクション)"、鉄鎖拘束の能力。

 自分の周囲に無数の鎖を出現させ、さらにその鎖を思うがままに操作する。主な使用目的は敵勢力の捕縛だが、応用次第では鞭のように振るっての打撃攻撃や、長距離の移動手段としても効果を発揮できる。

 桐谷は、軽井沢が行動を移す前に無数の鎖を操り彼を雁字搦めで拘束した。蛇のようにうねるその鎖達は、軽井沢の動きを完全に封じるべく人体の急所となる部位を正確に縛り、組み付いた。

 そして、鎖達は拘束した軽井沢を大きく引っ張り上げ、その身体を生徒会室の窓へと叩きつけた。


「あぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」


 窓に突っ込んだ軽井沢がそのまま窓の外へと放られ、地球の引力に引かれて抵抗無く落下していく。追撃のため桐谷も続いて窓から下へと飛び降りる。その次に天願寺が、そして尾崎と窓へ出る。

 2年生達はまるで慣れているようにスムーズな動きで行動しており、中鉢はその様子をただ傍観している事しか出来なかった。


「よしっ、炎乃達も負けてられないの! 木葉ちゃん、先輩達を追い掛けに行くの!」

「待って待って、ここ3階だよ!? 何当たり前のように窓から外へ出ようとしてるのさ!」

「普通に階段を使ってたら出遅れちゃうの。炎乃は先に行っちゃうの!」


 そう言って有沢は、先輩達と同じく窓から外へ降りていった。


「ああもう! 私は普通に階段で降りるからね!?」


 中鉢はそんな彼女達にはついて行けなかったので、3階の生徒会室から廊下へ出て階段を目指す。日ノ本冬夜は眠っていたのでそのまま置いて行くことにした。

 ……あと、生徒会室は悲惨なくらい真っ赤に染まっているが、まあそれは後から片付ければいいだろう。それよりも生徒会の皆が心配だ、いざという際に様子だけでも見ていた方が対処のしようもある。

 そして、中鉢が階段を使って一階まで降りようとした際に、そこで見知った先輩の姿を目撃した。それは将棋部の部員で、生徒会メンバーとも特に親しく接している、2年生の日ノ本夏輝だった。


「あ、中鉢ちゃん! ちょうど良かった、いま生徒会室に行こうとしていたのよ。春太は来てなかった? 私が取り込んでる間に先に向かっていたはずなんだけど…………どうしたのその格好?」


 因みに、現在の中鉢の姿は軽井沢の大量の血により所々真っ赤で、おろして二月の制服は最早ドロドロに汚れていた。

 それでも何とか一時的な不快感を我慢して中鉢は夏輝に口を開く。


「夏輝先輩、大変です! 軽井沢先輩と生徒会の皆さんが喧嘩を始めちゃって……」

「あ〜また? 今学期はそういうの滅多にしていなかったんだけど遂に始めちゃったか〜」

「あっ、先輩も慣れてる感じなんですね」


 夏輝は特に驚いた様子もなく、中鉢の話を聞いていた。中鉢は、事の顛末を出来るだけ正確に伝え、夏輝はうんうんと首を上下に振っている。


「……なんか、今回春太はほとんど何にもしてないわね」

「面目次第もございません。うちの先輩達って、何故か軽井沢先輩に対して当たりが強くて……」

「まあ、それも無理ないわね。今はともかく昔、一年前はよく春太達が問題を起こして、生徒会と対決していたから」

「……話には聞いていますが、具体的にどんな悪さをしていたんですか?」

「う〜〜ん春太に関して言えば、学校の生徒達を操って学年の平均点を100点満点にしたり、文化祭のお化け屋敷で本物の幽霊を連れて来て参加者全員を恐怖に陥れたり……」

「それは……」

「あとは、校舎を何度か全壊したり、全生徒の大半のエネルギーを吸収して巨大モンスターを生み出そうとかしていたわね」

「結構どでかい事していますね!? 何ですか巨大モンスターって!?」

「あの子ああいうの好きなのよ。昔から動物を見ると反射的に改造したくなるらしくて、今でもたまにやっているそうよ」


 ……実際、自分の買っている犬をドラゴンにしてしまうくらいなので、きっと嘘ではないのだろう。しかし日ノ本夏輝はいかんせん過去の事件を重大に捉えていないようだが、生徒会の、特に天願寺は軽井沢をまるで親の仇のように敵視している節がある。

 詳しい話は本人から聞かない限り何とも言えないが、プライベートに口出しするのは何となく遠慮してしまい、中鉢は2人の過去を聞き出せずにいた。


「あの、冬夜くんが生徒会室で眠っていますけど、起こしに行きましょうか?」

「う〜〜ん……。いや、冬夜は私が起こしに行くから中鉢ちゃんは下の様子を見にいって貰えるかしら?」

「いえいえいえいえ、私が冬夜くんを起こしに行きますよ!」

「……?」

「だってほら、生徒会室って今血だらけですから! あまりそういうのを日ノ本先輩に見せない方が良いかなぁっていう……」

「ああそういう事。大丈夫よ、春太の血なら見慣れてるから!」

「……そう言えば軽井沢先輩と日ノ本先輩は幼馴染みでしたね」


 という事はその分彼との交流も人より多いという訳だ。あれだけ気軽に自分の血を噴出させる人とよく接していれば、誰だって免疫はつくだろう。

 逆に、中鉢は軽井沢と初めて出会ってまだ2ヶ月ほどであり、まだそんな彼の奇行に適応し切れていない。無理に自分が起こしに行くといったが、本音を言えばこれ以上血を見たくなかったし、何より鉄の臭いが酷くて鼻がもげそうになるのだ。


「じゃあ、お言葉に甘えて私が外へ……」

「うん、後は頼んだよ」


 中鉢は夏輝と別れて、階段を一気に駆け下り玄関で靴を履き替えた。そして生徒会室の真下にある裏庭の花壇の元まで走り抜けるのだった。

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