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最果ての帝壁 -狂者と怪人と聖愛の女王-  作者: 極大級マイソン
第2章:新時代玩具と犬探し
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第22話「男なら一度はしたい生物実験」

「中鉢、あのドラゴンを大人しくすることはできるか?」

「う、う〜ん……。私の能力は動物にも効果がありますが、どうもあのドラゴンには無理のようですね」

「……なるほど。因みに有沢、お前はこのドラゴンの注意を引くため頑張っているようだが、目処は立ちそうなのか?」

「今のところ、視線はこっちに向いてるの。でもあそこから離れる気配はないの」


 有沢は、ジャグリングに使っていた10個の小石を手のひらで一つにまとめてみる。

 そして驚くことに、集まっていた小石が一つの大きな石になっていた。


「これぞ、『キングコイシー』なの」

「確かに、芸は上等だな。だが俺たちの目的は仔犬の確保だ」

『やはり樋口くんに頑張ってもらうしかないでやんす。おいらは一度やられているので、もうドラゴンの前には立ちたくないでやんすよ』

「仕方ないな」


 そう言って樋口は、片方の手でピストルの形を作り、それの銃口部分、人差し指をドラゴンに向けて突き付けた。


『おっ、出るでやんすよ。樋口くんの『秋人式瞬殺コンボ』が! あの技を喰らい、彼に敗れた者は数知れないでやんす!』

「まあ、あのドラゴンの事はよく分からないですけど、これで安心ですね」

「え、ちょっと待つの。折角、炎乃の芸でドラゴンの視線を集めることに成功したのに、あとちょっとのところで手柄を横取りされてしまうの!?」

「別に、お前が仔犬を助けられるならそれでいいが、確証は無いんだろう? それでいつ達成できるかも分からないとなると、俺がやったほうが早い」

「それは……」


 有沢は何か反論しようとしたが、言い返せる材料がなかったのか口を紡んだ。

 そして、樋口は改めてドラゴンに標準を合わせる。どこの何者かも知れない存在だが、取り敢えず暴れられる前に無力化するのがベストだろう。

 ドラゴンは多少警戒してはいるものの、すぐに襲っては来ない。おそらく相手の出方を伺っているのだろうが、それでは遅い。樋口の技は『瞬殺コンボ』、本当に一瞬のうちに完了するのだから。

 樋口は能力を発動し、その攻撃がまっすぐとドラゴンに襲い掛かる。

 ……その次の瞬間だった。



「あっぶなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいッッ!!!!」



「「『「!?」』」」


 何と突然、樋口の技を放った方向に1人の少年が割って入ってきたのだ。

 そして少年は、樋口の攻撃をその身に受け、ばたりと倒れた。


「グェッエェ!!」


 少年はヒキガエルのような悲鳴をあげて疼くまった。彼の身体はピクリとも動かなくなる。

 ……と、思われたが数秒ほどで少年は何事もなかったかのように起き上がった。


「ふぅ、危ない危ない。もう少しでこの子が怪我するところだったよ」

「か、軽井沢先輩!? どうしてここに、警察に捕まってたんじゃ無いんですか!?」


 そう、樋口とドラゴンの間に入ってきたのは軽井沢春太だった。彼は樋口の攻撃を受けながらも、平然とした様子で制服に付いた埃を払っている。


「ああ、あれは夏輝をこの場から居なくするための嘘情報だよ。今頃あいつは、ここから少し離れた交番へ駆け足で向かっているはずだぜ」

「嘘情報って、何のためにそんなことを……?」

「このことを知られたくなかったからさ。また動物実験していたってバレたら、きっとあいつは怒るだろうからね」

「??」


 中鉢には、何の話をしているのかさっぱり分からない。

 ただ、樋口は何かに勘付いたようで、軽井沢を凝視している。


「おい春太、正直に話せ。お前はこのドラゴンについて何か知っているな」

「ん、ああそうだよ。というか秋人だって知っているはず。だってこの子、シャーナなんだからさ」

「ナニ?」

『シャーナ……って、ええっ!? マジでやんすか!?』


 軽井沢の言葉に、2年生である樋口と野木は驚いていた。

 しかし、1年生の中鉢と有沢はいまいち要領を掴めていない様子だ。


「え、えっと先輩方。話が読めないんですけど、何がどうなっているんですか?」

「シャーナって、確か軽井沢先輩が飼っているペットって言っていたの。


 そんな話していただろうか?

 中鉢はこれまでの会話を少し思い返してみると、そういえばそんな事をちょっとだけ言っていたような気がするな、と思い出した。

 あれだけの事をよく覚えていたものである。


「……軽井沢先輩、只者では無いとは思っていたけど、まさかドラゴンを飼育するほどの豪胆とは流石に慄いたの。……でも、何故か先輩なら飼っていてもおかしく無いと納得できてしまうから不思議なの」

「好意的な感想として受け取っておこう。でも有沢ちゃん、一つ誤解している。シャーナはドラゴンじゃない、"犬"だ」

「犬?」

「そう! そして僕が生物実験の末、シャーナをドラゴンそっくりの姿に改造したのさ! 正確にはドラゴンになれるのは一時的なもので、しばらくしたらまた元に戻るんだけどね」

「ほう」

「前に同じように生物実験した時は、道徳的観念があれこれで夏輝に怒られたけど、我慢できずにまたやっちゃったんだ。テヘ♪」

「反省を知らない先輩ですね! 実験するにしてもこんな危険な生物、外に出さないでください!」

「だって毎日散歩させるの、面倒臭いんだもん!」

「飼い主にあるまじき発言なの」

「だからシャーナには自由に外へ出掛けるようにして、危なくなったらドラゴンに変身して威嚇すれば危険は無いと思っていたから怪我はしないだろうって思っていたんだ」

『それシャーナ自身は無事でも、周囲にいる人たちが大迷惑でやんすよ!』

「ん、その声は野木くん! こんな姿になって何を遊んでいるのさ」

『シャーナのブレスで肉体が消し炭になったんでやんすよ!』

「ブレス? 何言ってるのさ、シャーナは見た目だけなんちゃってドラゴンで、ドラゴンらしい技もパワーも持っていないはずだけど……」


 軽井沢が訝しんだその時、高い木に留まっていたドラゴン、シャーナが公園中に響き渡るような雄叫びを上げ始めた。


「うわっ!」


 一番近くに居た軽井沢含め、周囲の人間はシャーナの咆哮を受けた。


『あわわわわぁぁ!!』

「ああっ! 野木先輩がドラゴンの突風で吹き飛ばされたの!」

「割と小さいからな。ちょっとした風でも吹っ飛ぶんだろう」


 周りがたじろいでいる中、樋口だけは整然とそこに立っていた。

 そして、樋口はさらなる疑問を軽井沢にぶつける。


「あれがシャーナだってのは分かった。お前が突然の思い付き生物実験をしたのも納得ができる」

「おい、突然の思い付きとは失礼だぞ。僕は可愛いシャーナのためを思って新たな力を」

「御託はいい。……そのシャーナが、俺たちが探していた例のペットを匿ってやがる。お前、何か心当たりはないか?」

「? よく分からないけど、そういう事はシャーナに直接聞けば良いんじゃないかな。なあシャーナ!」


 すると、先ほど雄叫びを上げたシャーナは軽井沢を睨んで、


 《何用だ、我が主よ》


 と叫んだ。



「って、貴方喋れたんですかぁッ!?」



 中鉢のツッコミがドラゴンの咆哮に負けないくらいの声量で、公園中を駆け巡った。

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