ヒロインのちちを決めよう
第1話から46日前――
賓乳はステータスである。
かつて流行した某アニメでそういっていた御仁がいるらしい。
それには鈴木太郎も大いに同意するところではあるが、だがしかし。鈴木太郎は電波系である。
電波系である以上、嗜好は世の中の趨勢とはだいぶ違うのかもしれないと自覚していた。
電波を発射できる人間というのは世界的に見ても実に少ないのだ。
総務省の情報通信統計データーベースでも、平成26年度時点で無線資格のタイトルホルダーは6,356,463人しかいない。無線資格は種類として20近くもあり、重複も考えればもっと少ないに違いないのだ。ちなみに日本の人口は約1.273億人だ。
だから、ヒロインの容姿の決定について、鈴木太郎は迷った。
人気小説としてのし上がっていくには、鈴木太郎の嗜好ではなく、最近流行の小説に併せていく必要があるのだろう。鈴木太郎自体としては貧乳にしたかったのだがそこは涙を呑むしかない。
「まず調べるべきは乳だな」
鈴木太郎は某人気小説投稿サイトのどんな乳が人気になっているか調べてみた。
やりかたは簡単だ。人気小説に対して”乳”で検索をかけるだけ。
すると全部で2153回も出現している。そして調べた人気小説はおよそ500であるから1小説あたり約4回も発生している。どんだけ読者の方は乳がすきなのだろうか。
それをとりあえず乳の前に続く前方1ワードから3ワード目まで先の単語を調べてランキング付けしてみる。
乳 (2153回)※1ワードランキング
牛乳 (356回)
巨乳 (249回)
の乳 (187回)
貧乳 (129回)
母乳 (91回)
鍾乳 (59回)
は乳 (38回)
に乳 (33回)
離乳 (29回)
乳 (2153回)※2ワードランキング
の巨乳 (24回)
と牛乳 (21回)
に牛乳 (21回)
の牛乳 (18回)
我の乳 (16回)
は巨乳 (15回)
ロリ巨乳 (13回)
の母乳 (12回)
は貧乳 (12回)
が巨乳 (12回)
は牛乳 (12回)
牛の乳 (11回)
コーヒー牛乳 (10回)
豊かな乳 (9回)
豊満な乳 (8回)
の貧乳 (8回)
を牛乳 (8回)
ヤギの乳 (8回)
で牛乳 (8回)
自分の乳 (8回)
乳 (2153回)※3ワードランキング
温めた牛乳 (5回)
パンと牛乳 (5回)
卵と牛乳 (4回)
母様の母乳 (4回)
新鮮な牛乳 (4回)
セラの母乳 (4回)
隠れ巨乳 (4回)
マギーの巨乳 (3回)
猫たちが牛乳 (3回)
に膨らんだ乳 (3回)
皿に牛乳 (3回)
市販の牛乳 (3回)
とコーヒー牛乳 (3回)
絞りたての牛乳 (3回)
私は貧乳 (3回)
く自分の乳 (2回)
実にイイ乳 (2回)
の良い乳 (2回)
天井には鍾乳 (2回)
僕は貧乳 (2回)
1ワードで多いのはこの4つだろうか。
牛乳 (356回)
巨乳 (249回)
の乳 (187回)
貧乳 (129回)
どうやら読者はおっぱいが好きなのではなく牛乳が好きなようだ。
3ワードでは温めた牛乳 (5回)、パンと牛乳 (5回)、卵と牛乳 (4回)などといった文章が続く。これも特に性的な意味はないようだ。
実に健全である。穿った見方をしてすまないと鈴木太郎は思った。だって仕方がないじゃない男の子だもの。しかし――
「これが世に言う飯テロなのだろうか」
鈴木太郎はコンビニで牛乳を買ってくることに決めた。家の近くには数字で表現されるコンビニがある。両親といい、実に都合の良い環境である。
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調査は続行される。
以下の単語を見る鈴木太郎であったがその目が驚愕に見開かれることになる。
「巨乳 (249回)が貧乳 (129回)のほぼ倍あるだと……」
ここで明らかにされる読者の性癖だ。これが意味するところは一つ。貧乳の小説よりも巨乳の方がほぼ倍の確率でピックアップされるということだ。
鈴木太郎は断腸の思いで、しかしあっさりとヒロインの胸は巨乳であることに決めた。
鈴木太郎はその下にロリ巨乳 (13回)という志向の単語を発見したからだ――