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もしも電波系の大学生が小説家になろうを読んだら?  作者: 鈴木太郎
Saga 7: 異世界の勇者を召喚する最強勇者
39/40

プロローグ――そして物語が始まった

 だがそれはゲームの世界の、ゲームの魔王の徒(キャラクター)がやった話のことだ。

 このいーちゃんには異世界(ディストピア)の人工知能であるイナームの知識が入っているためにそう思うのだろうか。

 もしかしたら殺しについての軽さも向こうの世界と同じなのかもしれない――

 そう思うと鈴木太郎はおもわず電波を受けたように身震いした。


「こっちの異世界(にほん)では殺しはやっちゃいけないことなんだよ。偽物だろうと殺してはダメだから!」


 鈴木太郎は、いーちゃんの肩を強引に掴み引き剥がす。

 それは強い否定だ。

 いーちゃんは「きゃっ」と小さな声をあげると、仰向けに床に倒れた。


「あ……。ごめん……」


 悲鳴にも似た可愛い声に鈴木太郎は反射的に謝る。


{こちらこそごめんなさい。それじゃ、殺しはしないでおいてあげるわ」


 いーちゃんは右手をあげると指をパチりと鳴らす。

 すると、リビングのテレビの電源がなぜか入り、映像と音が流され始める。

 右上にはLiveの文字が。

 左下には横浜にある某国軍の基地の名前が載っている。


 そこでその基地は、燃えていた――。


 ――見てください。謎の爆発が基地を襲っています。燃え上がる炎がー、いったい某国軍は何をやっていたのでしょうか、これは謝罪と賠償を要求するべきだと思います。あ。いままた爆発が、キャー ――


 中継レポーターが話す内容が轟音で掻き消される。

 ドーンと、大きな閃光と爆発がおきた。


 その閃光はまるでレーザービームのように眩い光で、天に向かい駆け上っていった。


「あれは――、電子投射砲(レーザービーム)!?」


「えぇ、搭載するのは苦労したわ。あれが生命線ですし――」


 爆発はさらに2度、3度と続いた。

 まるで、テレビで映されるまで抑えていたものを吐き出すかのように。

 その炎は広がっていく。

 鈴木太郎はその光景をまさに対岸の火事のように眺めていた。


(これで本当に死者はいないだって――)


「しかし某国の下っ端軍人は馬鹿なことを。日本が誇る技術力を結集した兵器の実力を試したいとか言うからあんなことになるのよ。しかもあんな卑下た目でさ。あ――、でもあっちのいーちゃん死んだみたい。やっぱり殺しをしないってハンデはキツイわね。オーステナイト系ステンレスみたいな磁気を通さないのはダメだったか……」


 残念ね。殺しはダメだというから――


 いーちゃんは恨めしそうな瞳で鈴木太郎を非難する。


 いや……、俺が殺したわけでは――


 鈴木太郎にさらなる動揺が走るが、いーちゃんは仰向けのまま両手を掲げ、いーちゃんの頬に触れた。


「なに? 反省している? いーちゅんが慰めてあげようか? 安心していいよ。(わたくし)は本当の人間と違って『モノ』だから。動物の愛護及び管理に関する法律にも触れることはなくて、相手はせいぜいが器物破損くらいで収まるよ。あれ? 貴方のモノだから器物破損もないのかな?」


「お前――」


 それでも殺されたことには変わりがないだろう。


「大丈夫だよ」


 いーちゃんは鈴木太郎を抱きしめながら、にっこりと笑った。


「大丈夫だよ。次のいーちゃんは、きっとうまくやってくれるから――」


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