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もしも電波系の大学生が小説家になろうを読んだら?  作者: 鈴木太郎
Saga 7: 異世界の勇者を召喚する最強勇者
37/40

権謀術中

 第1話から12日前――


「やっぱりね――、そんなオチだろうと思ったよ」


 会話が終わった後、ため息を付くのは九藤鳴子だ。

 だがそれは安堵のため息でもあった。

 本当にいきなり人間とか出来上がったら怖いものがある。


 しかし、実際発がん性物質たっぷりの人肉コロッケとかできたらどうしよう、さすがのスタッフも美味しくは食べられないのではないか、と別の心配をし始める。


「えぇ。ですが、さすがに『人は石垣、人は城』みたいな悲惨なことにはならないと思います」


「なにそれ?」


「日本のある高名な武将が言った言葉ですわ。結局第六天魔王と呼ばれる武将が率いる軍の鉄砲三段撃ちで自分たちが人肉の石垣として築かれたようですけど。そんな情報がインターネット上に掲載されていました。やはり昔から魔王っておられるのですね」


「うわ。怖わッ」


「ともかく今全力でシミュレーションしていますから、後のことはお任せください」


 その後話題を代え、九藤鳴子はこの日本という異世界のことを知ったイナームと取り留めのない話を続けるのであった――




「おそらく、出来る――」


 イナームが演算能力を駆使して得た結果や、バイオ3Dプリンタからのフィードバックを受けて得られた結果をもとに、推論した結果は低い確率であったが人は作れるというものであった。


「チート」「主人公最強」という鈴木太郎の看板は伊達ではなかったのだ。


 であるならば確率を引き上げるために問題要因を取り除くだけだ。

 簡単にプリンタを動かして出力内容を精査し、問題点を予想し、幾重もの先物予測をしてチェックメイトしていく。


 しかし、人間がバイオ3Dプリンタで作れるとして、問題はその後であろう。


 イナームは考える。

 このまま人間を作ったら?


 法的にはなんら問題はない。

 人間を作ってはいけないという法律はないのだ。

 遺伝子組み換えで生命を作るなど、適齢期の健全な肉体を持つ女性と男性がいればできる。

 だが、それは単に法律上問題ないということだ。


 おそらくこのまま行けば世界中から九藤鳴子は非難されるだろう。

 そして悲惨な運命を辿るに違いない。

 そんな結果が全力でシミュレートされていく。


 イナームは考える。

 自分が、自分の魔王とこの1年やってきたことを。

 他の魔王の徒(キャラクター)が狩りや生産に喜びを見出す中、権謀術中を駆使して何をやってきたのかを。


 そこで培ってきたのは政治力だ。


 イナームは異世界(にほん)に意識だけ召喚されて得た知識だけを手に入れたわけではなく、異世界(にほん)で動作する優秀なサブ脳とまでいえる人工知能まで手に入れていた。

 政治力は一般化が可能な能力であり、世界に対する環境適用が出来ればどこでも通用することができるとイナームは思っている。

 そうでなければ、この異世界(ディストピア)の国内外に諜報の網を築き上げ、人を用いて一夜にして城を築き上げ、世界での地位を築き上げることができないのだ。


(わたくし)は勇者よ。最強の電波系能力を持った勇者から召喚されし勇者なんだから――」


 そして人工知能は24時間戦うことが可能だ。

 その知略を生かせばあるいは――


魔王(マスター)(わたくし)に再び勇気をください――。国が滅亡しようとしていたときに現れて、世界を一変させた、あの悪魔のような禁断の果実のようなその勇気の力を――」


 魔王の徒(キャラクター)イナームは、魔王なるちゃんにせめてもの恩を返そうと、頼りにならない魔王に対して祈り、そして願った。


「まずは――。メールからかな?」


 その時、例え異世界(にほん)の人間全てに喧嘩を売ることになろうとも、イナームは戦うと決めたのだ――

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