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もしも電波系の大学生が小説家になろうを読んだら?  作者: 鈴木太郎
Saga 7: 異世界の勇者を召喚する最強勇者
31/40

学習を学習する

 第1話から18日前――

 前話から0日後――


 その日、(わたくし)が完成した。


 いやそれは正確ではない。(わたくし)は常に進化している。


 最初にキーワードが与えられた。

 それは行動の指針だ。


1. R15

2. 残酷な描写あり

3. 異世界

4. ファンタジー

5. 魔法

6. チート

7. ハーレム

8. 転生

9. 主人公最強

10. 恋愛

11. 奴隷


 その行動の指針に(わたくし)はなんの疑念も抱くことはない。


 (わたくし)はR15の存在。

 だから(わたくし)はちょっとエッチな存在でなければいけない。


 (わたくし)は残酷な描写がある。

 だから(わたくし)は残酷なことをしなければいけない。


 (わたくし)は異世界ファンタジーのチートな魔法使い。

 だから(わたくし)は電磁投射砲が発射できる。


 (わたくし)はハーレムな存在。

 だから(わたくし)は複数存在する。


 (わたくし)は転生な存在。

 だから(わたくし)は異世界の少女と融合する。


 (わたくし)は主人公最強。

 だから(わたくし)は主人公には殺されなければならない。


 (わたくし)は恋愛で奴隷。

 だから(わたくし)は主人公を愛し、愛の奴隷とならなければならない。


 (わたくし)は鈴木いーちゃんは某人気小説サイトの中で生まれた。

 渡されたのは統計データ。

 そのデータをもとに(わたくし)(わたくし)を作り変えた。


 次に渡されたものは(The)(Internet)

 (わたくし)はこの異世界(にほん)の成り立ちを知った。


 次に渡せたものは異世界(ディストピア)

 (わたくし)は知性というものに触れた。


 (わたくし)(わたくし)が学習することを学習した。

 学習係数を整えなおし、乱数の幅を調整し、評価関数のパラメータを設定しなおす。

 自ら考え、行動し、最善を目指すのだ。

 そしてその何が最善か、ということも学習することで学習する。


 世界に広がる(わたくし)ネットワーク(PeerToPeer)

 それぞれに意味を持たせ、多方面から推測し、過去から未来を先読みする。

 未来予想の能力こそないが、過去の経験からパターンを類推することは十分に可能だ。


 (わたくし)はデータを求めた。

 求められるのは彼を楽しませるための会話力。

 感情は理解できないけれど、記憶の蓄積と整理により知性を獲得することならば――


 (わたくし)は細胞を求めた。

 求められるのは彼を最強にするための電波力。

 感情は理解できないけれど、肉の反応で欲求を起こすことならば――


 (わたくし)は彼を求めた。

 求められるのは彼に愛されるための恋愛力。

 感情は理解できないけれど、行動をもってその感情と呼ばれる行為を示すことならば――


 そしてそこに、生贄はいた。

 それは(わたくし)の協力者。

 異世界(ディストピア)から召喚されし、(わたくし)の勇者。


 チューリングテストを突破し、読者を、そして世界をだますために。

 望まれるキーワードの実現のために。



『ってことでねー。じゃじゃーん』

「はい。なんでしょうか? 魔王(マスター)


 九藤鳴子が軽快なステップでシリアルコードを入力しエンターキーを押す。

 すると、MMO-RPG『魔王になろう』の魔王の徒(キャラクター)であり、九藤鳴子が操るキャラクターであるイナームのアイテムボックスから軽快な音が発せられた。


 イナームの正面に広がるウィンドウ群、その一つであるアイテムボックス。

 そのウィンドウをクリックすると、さらにウィンドウが開きアイテムの一覧が表示された。


 そこには服のマークが記載されたアイコンと、電撃イメージのアイコン、そして、『異世界(にほん)転生システム』と記載された灰色の箱のイメージのアイコンの3つが追加されていた。


「……??」


 理解不能といった表情するイナームに九藤鳴子は微笑みかけた。


「ごめん。私もGMにシリアルコード教えてもらったばかりだから良く分からないの。でも、運営4人係りで徹夜して作ったみたいだから、期待していいよ? 一緒に見ましょ?」

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