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もしも電波系の大学生が小説家になろうを読んだら?  作者: 鈴木太郎
Saga 7: 異世界の勇者を召喚する最強勇者
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いーちゃん作っちゃうぞ会議

 第1話から30日前――

 前話から1日後――


「ぱんぱかぱーん! それでは第3回、いーちゃん作っちゃうぞ会議を始めたいと思うのです」


 前回から2度目となった、P2Pによる有名通話ソフトウェアによる三者通話の中でGM(ようこ)のテンションはなぜか異様に高かった。


「それで僕に返されたソースコードですけど、異様にレベル高くなって帰ってきたのだけれどどういうこと。すさまじすぎるのです? さすが≪単体最強≫君 (笑い)だよ。小説のキーワードに単体最強とかチートとか書いちゃうほどの電波系だよね」


「ふっ。褒めてもソースコードしか出ないぜ」


 鈴木太郎としては今までのぼっちという辛い状況からの現実逃避に走っただけなのだが、鈴木太郎としては褒められたと思ってドヤ顔で返すのであった。

 ま、実際は褒められたわけでもないのだが。


「ちょっと、なんで2日前のソースコードの修正版がGM(ようこ)さんのところに届いているのよ。もしかして……、2人で密会とかしているの?」


「にししー。もしかして なるちゃんてば妬いているのです? そんなの『魔王になろう』のSNS経由に決まっているでしょう? 安心のHTTPSプロトコル」


「それ、ネットワーク越しに渡したくないってGM(ようこ)さん言ったよね? 言ったよね?」


 九藤鳴子は重要なことなので2度言ってみたらしい。


「うん。それは建前で目的はなるちゃんの写真を撮って広告塔になろう大作戦であるって言ったよね? 僕言ったよね?」


「……」


 GM(ようこ)も対抗して2度言ってみたが、それで九藤鳴子は黙り込んでしまった。


「――。もう知らない。で、私にも当然くれるのでしょうね。そのソースコードを」


「だからSNSのグループサイトに置いたぜ」


 鈴木太郎が補足する。九藤鳴子がSNSのグループサイトを見ると、確かに鈴木太郎が修正したソースコードが置かれていた。

 MMO-RPGである「魔王になろう」は、ユーザー間の交流のために専用の交流サイト――一般にSNSと呼ばれる――という環境を用意しており、「魔王になろう」のアカウントがあれば誰でもログインできるようになっていた。

 そのSNS上では同好の趣味を持つユーザー同士が集まって魔王になろう「SNSグループサイト」と呼ばれるコミュニティのグループページを作ることができるのだ。

 そのコミュニティ『人工知能開発研究室』に参加しているのは、≪単体最強≫のハンドルネームをもつ鈴木太郎と、なるちゃんこと九藤鳴子、それにGM(ようこ)であった。

 GM(ようこ)がコミュニティに入っていることでかなり魔王になろうのユーザー間では、始めかなりの話題になってはいたが、参加は制限制であり中を見ることはできなかったため、それも下火になりつつあった。


「うわぁなにこれ。原型完全に留めてないじゃない。私が sigmoid って何だろうとか、ひたすら検索サイトで探しまわっていたところに何やっているのよ。というか、私のソースコードも入っているのだけれど」


「ソースコードは実際に修正しまくって身体で覚える。鈴木太郎です」


「私は覚えたくないわね。まだ処女なので」


「僕も弊社(うち)技術者(きもたん)に丸投げしたので身体で覚える必要はないのです」


 なんだかあぶない方向に走りそうだったので、鈴木太郎は話を進めることにした。


「で、どうよ。組み込んでもらえそう?」


「P2PについてはOKだって技術者(きもたん)が供述していましたのです。明後日にも組み込むって。ほら、『魔王になろう』ってホンモノの異世界と接続してその世界を楽しむって触れ込みでしょう。この技術を応用して、常時接続しているPCの能力が高いコアユーザさんところに異世界とのスーパーノード(特異点)を作ってそこから異世界の情報とアクセスすればかなり僕の魔力を抑えられるぅぅ、とか相変わらずきもく興奮しながら言っていたのです。だから僕も七日野から九日野に名前を変えなくてすみそうなのです」


 なんだか科学技術大国日本としてはかなり不安になる電波で中二な回答が帰ってきたが、どうやら作ったソースコードは組み込んでもらえそうなので鈴木太郎は安堵した。これで引き続きソースコードは手にし続けられるわけだ。


 そしてこれで最大で、0.1百万ノードの超大規模演算装置を手に入れることができた。


 実際には確実オーダーとしては1万ノードとか1、000ノード程度の能力かもしれないが、それでも大規模であることには変わりがない。

 まるでその圧倒的な規模を思い、鈴木太郎は静電気が流れるかのように身震いした。


「――で、それは置いておいて、これが今日の僕の本命なのです。僕はアレをSNSに書き込んだからここのサイト見てみるのです」

「アレ? う、うわぁ……。なにこれー」


 鈴木太郎がGM(ようこ)がSNSに書き込んだサイトにアクセスすると、そこには


『天才メイドエンジニア九藤鳴子 (18)』


 なるタイトルのもと、くるりと一回点を決めている九藤鳴子の写真と、P2P技術と遺伝子工学から派生したニューラルネットワーク技術に強く、『魔王なろう』の開発で苦労した点が事細かに書かれたインタビューおよびコメントが刻まれていた。

 無論、まるで写真屋でとったかのように周囲に薔薇とか光が溢れる美化300%の美少女だ。


「これって完全にでっちあげじゃないのよッ」

「えーっと、俺としては動いているなるちゃんの方が可愛いと思うぞ」

「なだめるとこそこ。そこなの?!」

「えー。いいじゃないこのくらい箔付けないと。最低限、このくらい知名度がないと3Dプリンタでうんぬんとかやってられないよ」

「え、どいうこと?」


「え、だって作るのでしょう? 3Dプリンタでいーちゃん」

「そりゃネタで子作りするっていいましたけど?」


 それと知名度とどんな関係があるのだろうか、鈴木太郎は疑問に思ったがそれはすぐに氷解する。


「お金掛かるよ。3Dプリンタって、お金がとてもたくさん。さすがにそっちには弊社(うち)のお金出せないからね。本業はソフトウェア会社だもの。フィギアとか創るならそっちに優先外注するけど」


 お金――。ソフトウェアと違い、物理的なものをやろうとするとすぐに不足するもの。

 割と現金なお話であった。


「それから弊社(うち)は約束だから『いーちゃんなりきりセット』をこれから実装するんだけど、服装とかどうするのです? いーちゃんの身体的な容姿は≪単体最強≫くん (笑)の作品見てなんとなく実装は可能だけど、服装はそういうわけにも行かないのです。『白と黒がベースで金色がアクセントのゴスロリ巨乳系魔法少女服』とか言われても、弊社(うち)技術者(きもたん)泣くのです。みぃって」


 GM(ようこ)が「みぃ」って鳴くのは非常に可愛らしかったが、その「きもたん」というのはきっと男でキモイのだろうからきっと気持ちが悪いのだろう。

 どんな鳴きかたをするか想像して鈴木太郎は吐き気を催した。


「お金と服ねぇ……」


 確かに、それらを調達できなければこのいーちゃんプロジェクトは破綻する。

 鈴木太郎と九藤鳴子は大いに困ったのであった。


「あ。そうだ! 僕としては、なるちゃんにいーちゃんのコスプレしてもらって、それを採用とかでも良いのです」

「やかましいわ!」


 GM(ようこ)は九藤鳴子に怒られつつ、その日の打ち合わせは終わった。

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