小説のキーワードを決めよう
第1話から50日前――
前話から50日前――
鈴木太郎は無線従事者規則第46条の規定による無線従事者免許申請書の記入例にも登場する、由緒正しき電波系の大学生である。人呼んでマッドコンピューターさま。
当時、ごたぶんに漏れず中二を煩っていた鈴木太郎は、今日も今日とて現実逃避しており、ものすげーくだらない日曜プログラミングに明け暮れていた。
今作っているものは小説だ。
鈴木太郎は大学生らしくよく本屋に通うのだが、そこで最近の書籍の潮流として某人気小説投稿サイトの存在を知る。
「ちくわ大明神」
その某人気小説投稿サイトでは常時コンベンションをやっていて、投稿された小説の中で人気のあるものは次々と小説家されているらしい。
それならば、ということで鈴木太郎は幾つか10万文字超えの小説を自分で書いてみて、そしておよそ1年の月日が経過したのだったが、結果は散々なものであった。
「誰からもコメントがない――」
「ブックマークも増えない――」
そして、「ページビューが増えていかない」
鈴木太郎は原因を考えた。
きっとメリハリ付けず3日に1回投稿していたのがだめだったのだろうとか。
きっとネタに走りすぎたのがダメだったのだろうとか。
時間を分散させず、スケジュール機能を使って競争が激しい00分の時間に投稿していたからダメだったのだろうとか。
だが一番の問題点としては人気小説に足る筆力がないことが原因であるだろう。
鈴木太郎は大学生であり、あまりたくさん小説は買えない。だからたくさん読んでいるわけではない。
いや買わなくてもよい。最近は某人気小説投稿サイトのような無料で小説が読めるようなサイトがあるのだから。
しかし、そもそも買えたとしても、読めたとしても、読んでいる時間がないのはどうしようもなかった。
そしてその他の要因として、筆力が時代の潮流から若干外れているのも原因なのかもしれない。
畑違いの人間にはまったく分からないが、報告書には報告書の、ラノベにはラノベの書き方というものが存在する。
ネット小説にはネット小説なりの書き方というのが存在するのかもしれない。
だが、「かもしれない」で終わらせていたら物事は始まらない、と鈴木太郎は思った。
鈴木太郎は電波系の人間である。
たとえ筆力がなくても電波系の人間には電波な戦い方がある。
それは知識だ。
鈴木太郎が戦うのであれば表現の力ではなく情報戦の武装化が必要だろう。
ここは技術力を国の是とする日本であるのだから。
だから鈴木太郎は思う。
人気のあるカテゴリってなんだろう、と?
人気のあるカテゴリの小説を書けばページビューがどばどば増えるのではないかと。
そしてぼこぼこブックマークが増えるに違いないだろうと。
では人気のカテゴリとはなんだろうか?
某人気小説投稿サイトを眺めるとふと、ある項目に目がとまった。
それは、「キーワード」だ。
キーワードには小説の方向性が記載されている。
検索するときにも使われるだろう。
人気のある小説からそのキーワード情報を抽出して何が人気があるのか確認することができれば、きっと人気のある小説になるに違いない。
そう考えた鈴木太郎はJava総合開発環境「○くりぷすー―今の最新バージョンはNE○Nだ――」を起動し、某人気小説投稿サイトが公開しているAPIを通じて直接キーワードを確認してみた。
すると得られたキーワードはこれだ。
★キーワード
R15 (379個/5834個)
残酷な描写あり (374個/5834個)
異世界 (275個/5834個)
ファンタジー (215個/5834個)
魔法 (146個/5834個)
チート (130個/5834個)
ネット小説大賞 (128個/5834個)
ハーレム (128個/5834個)
転生 (117個/5834個)
主人公最強 (101個/5834個)
ネット小説賞感想希望 (86個/5834個)
恋愛 (65個/5834個)
冒険 (58個/5834個)
奴隷 (56個/5834個)
成り上がり (50個/5834個)
剣と魔法 (44個/5834個)
魔王 (42個/5834個)
ほのぼの (41個/5834個)
学園 (36個/5834個)
勇者 (35個/5834個)
シリアス (33個/5834個)
成長 (32個/5834個)
ご都合主義 (32個/5834個)
バトル (29個/5834個)
戦争 (28個/5834個)
異世界トリップ (28個/5834個)
コメディー (25個/5834個)
ダンジョン (25個/5834個)
スキル (25個/5834個)
3回OVL大賞応募作 (24個/5834個)
エルフ (22個/5834個)
女主人公 (20個/5834個)
VRMMO (19個/5834個)
戦い (19個/5834個)
召喚 (19個/5834個)
異世界転移 (18個/5834個)
異世界転生 (18個/5834個)
迷宮 (18個/5834個)
ガールズラブ (18個/5834個)
獣人 (17個/5834個)
ハーレム? (17個/5834個)
幼女 (17個/5834個)
精霊 (16個/5834個)
男主人公 (16個/5834個)
戦記 (16個/5834個)
異世界召喚 (16個/5834個)
ハッピーエンド (16個/5834個)
貴族 (16個/5834個)
性転換 (15個/5834個)
コメディ (15個/5834個)
高校生 (15個/5834個)
トリップ (15個/5834個)
テンプレ (15個/5834個)
モンスター (14個/5834個)
冒険者 (14個/5834個)
TS (13個/5834個)
剣 (12個/5834個)
美少女 (12個/5834個)
内政 (12個/5834個)
転移 (12個/5834個)
魔術 (12個/5834個)
最強 (12個/5834個)
国家/民族 (12個/5834個)
復讐 (11個/5834個)
料理 (11個/5834個)
勘違い (11個/5834個)
友情 (11個/5834個)
竜 (11個/5834個)
少女 (11個/5834個)
ドラゴン (10個/5834個)
ギルド (10個/5834個)
きっとこれを全部満たせば、人気小説になるに違いない。
鈴木太郎はうんうんと頷いたがそこにある問題点に気づく。
「これ、全部含んだらめちゃくちゃな小説になるのではないだろうか」
だが、それであきらめるような鈴木太郎ではなかった。
鈴木太郎は、電波系の青年だったのだー―