プロローグ
初投下です。
ヨミセンでしたが書いてみたくなりやってみました。
稚拙な文章だとおもいます。
なにとぞ容赦くださいますよう、お願いします。
荒野に銃声が響きわたる。乾いた空気に、どこまでも通る音色。
一発ではなく複数個も鳴るのだが、狙いは逸れ不毛の大地に着弾。
標的である一匹の獣が遠吠えをし、天空を揺るがす。
たくさんの人々が浮足立ち、神代の怪物を思わせる長め、固唾を飲む。
だけど俺は、これから約束がある。守らなくてはいけない、大切な約束だった。
人々の恐怖にも、怪物の威圧にも構っているゆとりは微塵もない。
勇者でもなければ伝説の武器に選ばれた訳でもないのに。
異世界の戦いに巻き込まれちまうとは、俺も全く不運だな。
こんなことをするくらいなら、家に帰ってゲームでもしたいところだ。
いつも、そうおもっていたはずだ。なのに、今日も今日とて怪物狩りに勤しんでいるのだから泣けてくる。重い仕掛けだらけの鎧を着こみながら、鼻筋をふかくした巨狼を睨みつける。
「いいぜ、来いよ!」
乾いた荒野のど真ん中、おいでおいで、そう手招きしてる。
後にいる兵士たちは「自殺行為だ!」と叫び、攻撃もやめていた。
逃げたい気持ちはわかるよ。俺も昔は逃げたくなった。
自分は強くなんかない。弱い存在だとあきらめたくなるよな。
だけど、この後ろには俺たち以上に弱い人々が数え切れないほどいるんだ。
風がふき砂煙が舞い上がる。この土の臭いは、未だ好きになれない。
「さっきから図に乗ってんじゃねえ!」
俺の罵りを理解したのか?
それとも怯えないのが気に入らないのか?
銀色の毛並みをした狼が俺を睨みつけ吠えだしていた。
自分の何倍もある巨体を誇る狼が、いま前足をあげ、振り下ろした。
前足と出刃包丁を並べたみたいな爪により空気が、ブォォォン! と雄叫びをあげる。
俺は全身鎧の関節部を鳴らしながら、前転し怪物の真下に回り込む。
遅れて、とてつもない地鳴りが荒野を揺らす。
前足が地面を陥没させる。そこから発生した衝撃波が鼓膜にひびき、痛む。
「ワンコロのくせに馬鹿力を出しやがって」
愚痴りながら空を見上げる。毛むくじゃらな腹を視界に納める。
本当に、本当に、自分が異世界にきて怪物と戦っているのだと実感させられた。
四足歩行のそいつは外見こそ狼であるが、大きさはゾイドみてぇなガタイを誇る。
巨体を活かし走るだけで村を、街を滅茶苦茶に出来るような怪力すら持つそいつは一流の<魔術師>すら近距離では手を焼く程の、文字通り怪物クラスの実力を誇っていた。何発もの魔法をぶちこもうと、怯むか、怯まないか程度の分厚い毛皮と筋力に覆われた狼は、倒すのは『至難』の一言。
しかし急所を知らないからだ。
度重なる戦いのなかで、俺はグランドウルフの脆い場所を経験で覚えた。
こいつの急所は、デカい腹の真下にある。何度も刺した泣き所。
後足の方面にある、あばら骨に守られていない、柔い腹がな。
「覚えとけ!」
鎧の仕込みを発動させる。
手甲のカラクリが動き、その振動が腕に伝わってきた。
右の拳から四本の杭が飛び出し、瞬きもしない内に赤熱化。
跳躍し長さ四十センチほどある杭をグランドウルフの急所へ深々と突き立てた。
「ここがてめえの弱点だ!」
杭が灼熱を放ち、爆発する。
刺突した対象を内部から爆破する単純な、錬金術による造りだされた炸裂杭を受けたグランドウルフの体は、爆風で二つに分かれ肉の焼かれた香りが荒野の風にひろがった。
「お、おおおお!?」
「やり、やがった!」
「バケモノを殺したぞ!」
大歓声をあげる人々は勝利に腕を持上げる。
異世界に召喚されたとき、底上げされた身体能力は彼らの何倍もある。
この世界は重力の変化やら、大気に満ちるエーテルだとかの関係で俺は強い。
俺は選ばれた勇者でもないけれど、錬金術の装備を受けとり戦っている。
それが彼女との約束であるし、俺が元の世界に帰るため必要なことだからだった。
「ああ…………待たせちゃ悪い。早く、行かなきゃな」
バンザイと叫ぶ兵士たちをスルーし歩き出す。
勇者召喚の際に、偶発的に紛れ込んでしまった。
それからは不運の連続だったけど、俺にも救いがある。
選ばれてない俺だけど……、人を守れるってことだ。
俺は遠野信一郎。
くだらん学生生活を満喫していただけの、つまらん男だ。
今は勇者と一緒に召喚された、選ばれていない者と位置付けられているが、この鎧は顔も隠してくれるため正体は悟られていない。
だから、ここにいるのは俺じゃない。
ナナシの騎士と名乗っていた。
勇者の証を得られず。
伝説の武器も得られず。
人々の歓声も得られず。
適当に戦っている。
錬金術師の変わり者の支持を受け。
約束の通り戦い続けていた。
感想、評価。
御願いします。