序章が告げる物語
ジジジッ・・・ピピピッ、ピピピッ・・・
電子音が6畳の部屋に響き渡る。止まれ~止まれ~・・・
まあ、念じても止まらないわな。仕方ない。あくびを一つついて身体を起こす。どこだ、どこだっと・・・・・・ない。
うん、音はするよ?どこなんだよ。
「まったく。目を開けて探しなよ」
聞き覚えのある声が耳に・・・・
「なんだ、来てたのか笆江」
「何言ってんの・・いつも来てんじゃん。」
「そうだなっ。」
適当に相槌を打っておいた。
「うぅ~~」
なんか唸ってるが無視をしておく。それよりも早く、早くアレを探さないと大変なことに・・・・・・・・・・
『ギャリギャリギャリ!!!!!』
「とりゅりぴゃりゅーーーー!!!!」
突然、黒板を爪でひっかいた音なんて比にならないくらい不快な音が耳の中に響き渡った。
「へっへ~~ん、ば~かば~か」
笆江をみると、その手には時計が握られていた。
「テメッ!笆江!!」
「適当に返事するのが悪いんだも~~ん」
「ぐあぁぁああぁぁぁぁああああ!!!止めろぉぉぉおおおおおお!!!!!」
本当に朝から最悪だった。
「タンタンタンタン」階段を降りて聞こえたのは、いつもと変わらないまな板を叩く音。
「紅葉・・・起こして何分たったのよ・・・・・」
台所で心地の良い音を奏でていた少女がこちらを振り返らずに問いかけてくる。
「ざっと30分ぐらいかな?」
「・・・・予想はつくけど、何してたの?」
「昨日回収し損ねたフラグを回収n・・!?」
直後、髪の間を黒い物体がすり抜けた。
「イッペンシヌカ?」
「いえ、まだ落としてない女の子がいるかr」
ガスッ!!!今度は額に直撃した。
「うっぶぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!アッッッッッウゥゥゥゥ!!!!」
あわててひっぺがしたソレを見ると、かすかに香ばしい匂いがした。
「卵焼きだよ~、食べて食べて♪」
「真黒・・・ほとんど炭じゃねえか!!」
「え、うん」
「認めやがったよ、こいつ!!」
やけに潔がいい。いつもなら、自分の失敗は必死に隠し通すのだが・・・わかった、理解した。
「・・・また香奈が作ってったのか?」
「うん・・・安易にそこいらへんにに捨てると、前みたいなことになってしまうんじゃないかっておもうと・・ね」
苦笑いしか出てこない。
その前みたいなことってのはだな
「紅葉さっきから何をひとりでブツブツ言ってるの?」
「そりゃあアレだ、プレイヤーのみなさんに」
「ついに紅葉が壊れやがった!!」
「前からでしょ・・・」
ふと背後から声が聞こえ、振り返るとそこには、卵焼きを作った張本人がたっていた。
「あれ、香奈まだいたのか?」
「忘れ物をしちゃって取りに帰ってきたの。駅に着いて気付いたから戻ってくるの大変だったんだから」
家から駅まで車で10分ぐらいの距離がある。「おまえ・・・どれだけ早くに家を出てんだよ」
「紅葉が起きる30分前には出てるよ」
ふと、芭江に目をやると、こちらを睨みつけてやがった。
「はは~ん、さては二人きりでイチャイチャしてるところに香奈が帰ってきて機嫌を損ねたのか。」
「「んな訳ないだろ!!」」
二人が同時にグーパンチを放ってきた。目の前が暗くなるのにそう時間はかからなかった。
薄れゆく視界の中(5秒ぐらい)、必死にさっきの会話を整理していた。
(どう考えてもおかしい。)
視界の端では、倒れようとする俺の体を支えようと駆け寄った二人が笑っていた。