プロローグ
「カタカタカタ・・・」
無機質な音が部屋に響き渡る。
「カタカタ・・カチッ」
辺りが薄暗くはっきり様子をうかがうことはできないが、確かに何かが動いている。
「カタカタ・・・カタタッ」
何かを叩き終わったのだろうか?・・・音がやむと同時に「ギッ・・」と何かが軋む音が聞こえた。鋭い悪寒がはしる。
「・・・やっとお目覚めですか、先輩?」
「・・・・・・えっと、どちら様ですか?」
あえてとぼけてみる。
「やめやめ、そんな猿芝居」
「ばれていたか」
相手の口元がふっと緩む。目は笑っていない。
「いい加減に覚悟を決めたらどうですか?」
そいつはそっと手をのばしてくる。避けようとして気付いた。体が動かない。
「・・あぁ、今気付いたのですか。体に少しだけ打たしてもらいましたから♪」
そいつの手には小型の注射器が持たれている。
「どおりで舌が回らないのか。」
「ふふっ、気にするのはそこですか」
口元が緩む。こうやって見ると奇妙に、のんびりした時間が過ぎている。でも、俺達は気付いている。判断を誤ると、お互い命がなくなってしまう・・・・っていうことを。
「・・・爆弾を仕掛けました」
「・・・ほう」
「時間は1時間ですよ」
「・・・そうか」
「あと1時間で私達、吹っ飛んじゃうんですよ」
「・・・そうだな」
なんて楽しそうに話すんだ、こいつは。小さくため息をついた後、一言声をかけようとした時だった。
「いい加減にしてよ!!」
顔の正面で叫ばれたら耳が痛いんだが。そう言い返そうとして、口をつぐんだ。この距離ならはっきり分かる。
『彼女が、泣いているのを・・・』