飛空艇と機械技術
アン・フォールでは、大気をはじめとして様々なものの中に存在する精霊の力をエネルギー源として利用した科学技術が発達している。
精霊学とも呼ばれる専門の学問分野によって日夜盛んに研究がおこなわれている。
もちろん飛空艇もその概念に基づいた技術で設計建造されている。火山より採れる結晶体を利用した熱線砲や、ヒュムグリフの翼のシステムを模したウイングマストなど、切っても切り離せない関係であると言える。
※エンジンと燃料
飛行機械に限らず、アン・フォールで現在生産されている機械の動力源は精霊エネルギーである。
そのエネルギーの獲得方法によりエンジンの分類は大きく二つに分かれる。
空霊式と霊油式である。
空霊式は大気中に存在する精霊自身が通過することによりその残留エネルギーを吸引する方式である。
この方式は燃料が大気中に存在するため、基本的にエネルギー切れの心配はない。だが精霊エネルギーの濃度に得られる力が左右されるため安定感に乏しく、またパワーを得るためにはエネルギー拾得部が大型にならざるを得ないため、小型艇に搭載するには向かない。
一方の霊油式は精霊の力が結晶化した霊油という液体を燃料とするものである。
こちらは出せる出力が周囲の環境に影響されにくく、小型化も容易である。だが、こまめに燃料を補給する必要があるため、航続距離では空霊式に大きく劣る。
なお、霊油は人工的に生成しようとすると、虹を発生させて周囲を汚染してしまう。
これら二種のエンジンは特性に合わせて使い分けられている。
霊油式は主にバディと呼ばれる小型飛空艇に。
空霊式は巡空艇と呼ばれる等級以上の艦艇に主機関として使用されている。
※バディ
バディとは、単座、ないしは複座型の小型飛空艇の総称である。
一般的には大型艦の艦載機として使用されている。
正規兵以外にも探空者や傭兵に自分自身の旅の翼、空戦能力として好んで利用されている。
搭載、使用される武装は機関砲やミサイルなど。
ヴァトゥラグラス内で流通している主なメーカーとバディの一部を以下に挙げる。
・フォアライター社……安定性、信頼性に定評のあるヴァトゥールの航空機メーカー。主力製品はライデンシャフト、エアガイツ、シュトルツ。
・E&Pフロンティア社……生産性が高く、整備性に秀でた機体を数多く生み出している。ビートル、シケーダといった機体が有名。
・サオトメ研……ピーキーで安定性に不安はあるものの、機体に突き抜けた性能を持たせる研究所的な性格の強いバディメーカー。主な飛空艇はリョウマ、ハヤト、ムサシ
※飛空艇
探空者レベルで使用するのはバディの他は巡空艇レベルの艦艇である。
高い速力を誇り、文字通り空を巡ることに適した巡空艇は探空者にとっては頼れる武器であり、移動する家でもある。
※霊油
精霊力の吹き溜まりに自然生成される液体燃料。
純度にもよるが少量で莫大なエネルギーを発生させる。
大気中の霊力が雲の中に凝固し、雨に混じって降り注ぐことがある。
人工生成しようとしなければ人体に悪影響は無い。