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絶好の試験日和 ②

 二日目の試験が終了した後、およそ数日後に結果通知が封筒でホテルに届いていた。

電子技術が発展している月の都とはいえ紙媒体による需要は続いており、また古来の味や雰囲気を求めるマニア層達が存在するおかげで、こうした封筒や切手といった手段による連絡は、未だ健在の至りとなっていた。


 僕は結果通知の封筒が届くや否や、即座に封を開封した。

結果はどうだったのか。気になる、落ちてなければ良いが……負の予想が脳裏を過ぎりつつも封筒の中に入っていた紙面に目を通すと、怪訝な表情をせざるを得なかった。



「……テレビ中継の関係により、最終試験の日程を変更して実施致します……?」


 紙面にはそう書かれており、僕は思わず文章を読み上げてしまった。

元々最終試験に行われるトーナメント形式の他流試合は、テレビ中継が行われる事は知っていた。けれども紙面には改めてその旨が告げられており、更に続きが記載されている。


 どうやら試験の日程変更により、トーナメント形式の他流試合だけで数日間も試験が延長されるという事らしい。

曰く、試験者の人数などを考慮したうえで、厳正なる審査を執り行う為の処置であり……と、長々とその旨も記載されている。

中でも僕が気になったのは、その理由が綴られている文章であった。


「……優勝者は綿月依姫とのエキシビジョンマッチを行う予定です、と」


 綿月依姫という言葉を目にし、僕は過去の記憶を思い出すに至った。

たかが字面程度であるが、僕の昔の知人に酷似しており、紙面に目を通した瞬間に渋い表情をしてしまった。


 気を取り直して紙面の内容を凝視し、意味を理解してゆく。

つまるところ合格者が多いため、トーナメント形式の他流試合を数日に渡って実施する必要性が出てきた為、延長したと。

そして最後に控えるエキシビジョンマッチこそが、マスメディアが注目している大きな要因となっていると推測できた。まるでお祭り事である。


 綿月依姫とは確か、綿月姉妹の次女の方だったと記憶している。

相当の実力者らしく、今回のエキシビジョンマッチでも更なる健闘が見られる、と世間を賑わせている。

正直なところここまでの間、合格する事ばかり考えて行動をしていたので、綿月家の姉妹がどのような人物で、どういう人相なのかすら知らない。

知っているのは彼女達は姉妹で、次女の方は相当武術に長けているという情報のみ。有名人ではあるらしいものの、今まで調べる余裕がなかった為、調べていなかったのだ。


 まさか今回の試験で、本当に綿月姉妹が登場するとは思っていなかった。単なる世間の話題を狙ったものだと思っていた。。

幸いにもトーナメント形式の他流試合を制したものが、エキシビジョンマッチで対戦するという事なので、合否に大きく関与してこないとは思うのだが……。

そもそも僕が優勝できるかすら不明である。参加者は未だに数百人という規模であり、その全貌はまだまだ明らかとなっていないのだから、もしかしたら相当腕の立つ者も存在するかもしれない。


 予定よりも延期された最終試験の日にちはおよそ一週間後に控えており、僅かではあるものの猶予は残されていた。

それならば僕がするべきなのは、ただ一つ……いや、二つか。

他流試合で好成績を修められるように修練を重ねるのと、後は合格している事を祈るのみ……あれ。


「そういえば合否も一緒に記載されている筈なんだけど……」


 てっきり合否の通知が送られてきたとばかり考えていた。紙面には試験の日程変更の旨しか記載されておらず、合否に関しては音沙汰なしである。

最終試験についての手紙が送られてきたという事はつまり、合格していると捉えても良いのだろうか……そう思いながら紙面の隅から隅まで目を通していると、一つの文面を見つけた。


「……なお、この手紙は二次試験通過者にのみ通知されております。……ということはつまり、合格しているということか」


 なんだか拍子抜けであった。

月が満月に変わるのと同じように、合格していたという事実に対して激しい喜びというものはなく、恐らく今の僕はひどく落ち着いた表情をしている。


 けれども喜ばしいことに変わりはないので、密かに喜んでいたのもまた事実。

一週間後に控える最終試験に備え、ひと時の時間を過ごすことにした。



*


 ────そして試験当日。

最終試験では各会場毎で他流試合を行い、その中でも好成績を修めた者達だけが本選へと出場できるという仕組みになっている。

要するに、複数に分けられている会場の中から代表者を数名だけに絞り、数十名程度でテレビ中継の行われる本選を執り行う、というわけである。

僕が参加している会場だけでも、二次試験通過者は数百名以上は残っている。会場は数十に分けられているとの事で、一つの会場当たりで考えると倍率は物凄く高いのが現実である。


 あまり考えすぎると気分が滅入ってしまうので、深く考えないことにした。

試験当日は若干遅れ気味に到着しつつも、試験が開始されているというわけでもなかったので、注目を浴びるという事はなかった。


 僕のいる場所は、今まで試験が執り行われていた第四試験会場に相当する。

そこから少し外に出ると、グラウンドのような広大な土地が設けられており、その場所はまるで体育祭が行われるかのような雰囲気で、白線やら赤いコーンが置かれていた。

試験者は"動きやすい格好"を指定されていたので、各自ラフな格好の者から、真面目な者はスーツで参加している者もいた。そのスーツで闘う気なのか、と問いたくなる。



「はい、皆さん集合して下さい」


 試験官である玉兎が拡声器でそう叫ぶと、試験者は一同に集結した。

集結した試験者の群れの前には拡声器を持った玉兎と、それから巨大なホワイトボードが設置されており、ボードには様々な説明が記載されているのが見て取れた。


「只今より、最終試験の日程を説明致しますね。えーと、まずは試験通過者を対象に通知したお手紙があるかと思いますが、そちらの方をご覧下さい」


玉兎がそう言うと、一同が若干ざわつき始めた。僕はその手紙とやらをホテルに忘れてしまった。当然、知り合いなんか一人もいないので大人しく黙っていた。


「大まかな説明はお手紙の通りです。今からそれに基づいた詳細を説明していきますので、皆さんよく聞いていてくださいねー!」


 可愛らしく玉兎がそう言ったのは良いが、全く分からない。

ところで僕の隣りに少々小太りの眼鏡を掛けた男がいたのだが、何だか鼻息が荒く額に脂汗をかいていた。少々、異形である。

そのような男は放っておき、僕は眼前の巨大なボードを凝視した。なにやら様々な事柄が記載されている中、トーナメント図も書き込まれている。


「各会場毎に、上位三名までが本選会場に出場する事ができます。あ、負けちゃっても不合格って事ではないので、その点はご安心下さい」


 玉兎はそう拡声器を通して告げると、言葉を続ける。


「そしてトーナメントでの各自の対戦相手についてですが、こちらは私達試験管理者の方で独自に決めさせていただきました。

えと、特に不公平になるような選出や設定はしていないので、問題はないと思いますが……もし何か質問のある方がいましたら、手を上げてください!」


 試験官がそう言うや否や、僕の周囲は騒然とし始めた。

理由としてはボードに記載されているトーナメント表についてなのだが、それがどうにもおかしい。いや、明らかにおかしい。

何故だか妙に長い線が一本だけ引かれている。つまるところの"シード枠"という奴なのだろうが、それにしても極端過ぎやしないだろうか。


その事に関して、一人の肉付きのよい男が手を上げて質問をした。


「はい、一つ良いですか」


「どうぞ!」


「トーナメント表についてなのですが……シードが極端過ぎなのでは」


名も知れぬ男の質問に対して試験官は、想定通りといった表情で質問に答える。


「ああ、やはりそう思いますよね。このトーナメント表は、試験者の方達を実力順で振り分けているのです。

二次試験で執り行った体力試験を参考にし、決めさせて頂きました。……此方のシード枠は、その体力試験の成績が著しく好評価だった方が配置されます」


「けれど、それでは余りにも不公平では」


「うーん、私達もよく考えたのですがねぇ。やはり実力が拮抗した者同士の試合でなければ、選考するのも難しいですし」


 試験官が悩ましげにそう言うと、質問をした男は諦めたのか「わかりました」、と言って引き下がった。


 数百人規模で催されるトーナメントに用意された、ひとつのシード枠。

これがまあ物凄く極端で、トーナメントが開始されたら数時間は出番が回ってこないだろうと予測できる程、出番を飛ばしているのだ。

試験官の言い分としては、"選手を厳正に審査する為に実力が拮抗した者同士の試合を実施したい"との事で、圧倒的な展開の試合ではそれが難しいという事なのだろう。

体力試験の結果に基づいて選手を配置したという事であるが……ひょっとするとそのシード枠、僕ではないのだろうか。


「はい、質問がなければトーナメントに関しては以上です。次は対戦形式についてなのですが────」


 試験官が説明を続けた。

他流試合での対戦形式は、今回の場合はいわゆる予選に相当するのだろうが、基本的にルールは存在しないとのこと。

禁止行為は"殺害"であり、他にも穢れの発生に繋がるような行為は禁止されていた。

武器等は各自自由であり、近代的な物でなければ使用可能であるという事。……そういえば武器なんて、僕は持っていない。


「えーと、武具を持参していない方につきましては、此方の方で手配を致しますので、事前に申請してください」


……という事なので、どうやら大丈夫らしい。そもそも無手という人もいると思われるので、敢えて持参してきていないという人もいる筈。


「それでは説明は以上となります。ルール等の詳細については、試合直前に各試験官から説明がありますので、聞き漏らしのないようにお願いします! 

えーと……はい、予選開幕はおよそ三十分分後になりますので、それまでの間に各自準備、受付の方をお願いいたします。あ、言い忘れてましたが、遅刻者は即失格となりますので、行動は迅速にお願いします!」


 試験官は何故か、憫笑混じりの表情でそう大衆に向けて告げた。

一通りの説明を終えた後この場は解散となり、玉兎の試験官達は別室へと移動していった。

この試験会場だけで数百人はいると言うのに、予選は一日で行われるとの事なので、恐らく一つ一つの試合は極僅かな時間なのだろう。


 そう思ったのは僕だけではなく、その他の試験者達も同様の事を思考していたのか、解散が告げられた後に我先にとホワイトボードの前に試験者が集った。

遠目からでは詳細が分からなかったトーナメント表に見る為であり、更に自分がどこのブロックに所属しているのかを確認するためである。


 トーナメント表を確認していた群集が騒然とし始めた。

この場に試験官がいない為か、わあわあと試験者達が騒ぎ立てる。

その光景を遠目に見ていた僕は、一体何事かと思い聞き耳を立てると、トーナメント表について疑問の声をあげているのが多数であった。

一体全体、どういう内容となっているのか。僕もボードの前へ移動し、内容を確認してみた。


「……あー、僕の名前は何処だ」



 太い黒線で描かれているトーナメント表を凝視し、僕の名前が何処にあるか探してみる。

改めて確認してみると、各試験者の名前が記載されているわけではなく、試験番号……いわゆる受験番号ごとに記載されているのが分かった。


「僕の試験番号は……0147番か。ええと、恐らく僕はシードだと思うんだけど」


 少々騒ぎ立てられたシード枠の方へと視線を傾けてみると、そこには"0147"と記載されており、僕の試験番号と合致している事がわかった。

なるほど、やはり色々とおかしい。

このシード、決勝戦と直結しているじゃあないか。つまり僕は、たったの一勝をすれば優勝できる、という事になるのか。

体力試験による考査がどうの、とか説明があったが、他者からすればまるで僕が賄賂を送ったかのような、そう思われてしまう可能性もあるな。


「しかし、一体何を騒ぎ立てているのだろうか」


 周りの試験者達は依然、騒然としたままである。

僕の試験番号はシード枠のため、ボードの上の方に記載されている為、近付くだけで目に留まるのだが……他の試験者達の番号は分からない。

ボードの下方に記載されているので、ボードよりも前にいる試験者達の後頭部しか見えないからだ。

まあ、恐らく何かしらあるんだろうな。そう思って自己完結しようと思った時、不意に誰かの声が耳に飛び込んできた。


「すいませーん、説明し忘れました。試合は複数人形式で行いますので、時間内にチーム毎に受付を済ませて下さいね」


 突然、閉まっていた扉を開け放ち試験官が出てきた。

出てくるや否や、とても大事な事を告げるだけ告げ、そのまま何事もなかったかのように出て行ってしまった。

 "複数人形式"という試験官の言葉に対し、周りの空気が変貌した。

そして騒然としていた場がより一層騒然とし始め、僕は思わず後ろに二歩ほど退いた。


「おぉい、0528番と0896番の奴、何処にいるんだあ!」


「0122番、手をあげてくれっ!」


 誰かが、そう叫んだ。

すると騒然としていた試験者達は一瞬にして静まり返り、一呼吸、二呼吸後に再び誰かが叫ぶ。


「俺だ、俺が0122番だよ!」


「0756番、後ろのベンチシートに来てくれ!」


「おぉーいッ、俺とペアの奴どこだよォーッ!」


「急げ、三十分分しかねえんだッ! 0418番、どこだぁ!」


 静寂としていた空気は、試験者達による怒声混じりの叫びにより、掻き消された。

そして何故か、各々が他者の受験番号を狂ったように叫び、集うように呼びかけていた。


「何だ何だ、一体どうし…………痛っ」


「あ、悪ぃ。お前、0665番か?」


「いや、僕は違うけど……」


「あっそ、じゃあ悪かったな。0665番と1247番、0968番は此処にいるぞォ!」


 身体付きの良い禿げ頭の男と肩がぶつかるが、軽い謝罪だけで男は急ぎ足で立ち去った。

皆が狂ったように行動する光景に、僕は若干だが恐怖した。あまりにも異様な光景過ぎる。

そのおかげもあってか、ホワイトボードの前に居た試験者達は散り始めボード前が空いてきたので、トーナメント表の全体図を見てみようと思い移動した。すると其処には……


「何だこれ。複数人形式って、つまりチーム戦って事なのか」


 他の試験者達が配置されている箇所には、一本の黒線に対して複数の受験番号が記載されていたのだ。

つまり、一対一の形式ではないという事。

少ないところでペア、多いところでは五人規模のチームも存在していた。


 なるほど、道理で試験者達が騒ぎ立てるわけだ。

三十分分という短い時間制限の中、互いに顔を見合わせるのは初めてという状況の中、共闘しなければならないのだ。

作戦会議等が重要になってくるのだろう。互いの癖や、弱点を補いあって……



「あれ、そういえば僕は一人……」


 眼前に迫る巨大ボードの前、僕は自身の番号が記載されている枠に視線を移した。

そこには僕の番号しか記載されておらず、仲間など存在していない。


 一方で下方に記載されている試験者達の番号に視線を移すと、平均で3人程のチームが勢揃い。

後ろを振り返ってみてみると、何だか屈強な男達が勢揃いである。武器を持参してきた者もいるようで、長槍を構えているような輩も見受けられた。



「よう。おたく、受験番号いくつよ?」


「……あ、え。ぼ、僕は……0147番だけど……」


「0147番? ……あー、おたくが例のシードの人かい。……まあ、その。お互い頑張ろうぜ、一人の方が何かと気楽って言うからよ」


 突然話しかけてきた男はそんな事を言うと、そそくさと立ち去っていった。

この状況下、いくら身体能力高しと言えども、集団相手に闘う事がどれほど困難な事なのか、僕は理解している。

他の試験者達もボードを見て理解したのか、懸念されていたシードに対する批判は今のところなかった。



 十五分程経過すると、騒然としていた会場もそれなりに落ち着いてきた。

会場を見渡してみると、それぞれがパートナーと集まり、何やら話し合いを行っている。

ふと気付いたのだが、やはりその中でも僕は一人ぼっちであり、腕を組んで壁に腰掛ける事しか出来なかった。


「お、0147番。はっは、羨ましいな、一勝すれば本選進出だもんな」


「良いなぁ、俺もシードになりたかったよ。勝てば予選トーナメント優勝、負けても準優勝だろ?」


「はは、待機時間が長いからって、寝過ごして決勝に遅れんなよ!」


「……」


 試合が行われる武道会に移動する一組のチームが、去り際に僕にそう言葉を放ってきた。

若い男連中のチームであり、どれもこれも場慣れしたような表情をしており、緊張の糸は纏ってはいないように見えた。


「君があのシードの人か?」


「……何ですか」


 またしても声をかけられた。正直鬱陶しいので、早々に切り上げてほしい。


「互いに頑張ろうぜ。あーいう連中は腐るほどいるからよ、気にしてたらきりがねーよ」


「……ああ、ありがとう」


 想像していたのとは違い、遠回しに誹謗中傷するような内容ではなく安心した。

何百人といる試験者の中、良心的な者もいれば他人に対して心の無い言葉をかける者まで、幅広く存在している。


「…………行こっと」


 少々気分が落ち込んでしまったが、気を取り直して試験会場に行く事にした。

僕が移動しようと動くと、周囲から嫌な視線を感じた。やはり特別な者扱いされている僕は、他者から奇異の眼差しで見られてしまう。

この上なく鬱陶しいが、シード枠という特権を手にした代償だと思い、この場は我慢しよう。



 無機質で機能的な自動扉を潜ると、そこは直ぐに外の会場に繋がっていた。

武道会が見えてくると、更にそこに通じている通路には玉兎の試験官達がテーブル越しに座っており、テントの中で寛いでいた。

テーブルの上には様々な物が置かれており、物騒な物から布切れまで勢揃い。僕がそこの通路を通ろうとした時、声をかけられる。


「ちょっと待って下さいね。えーと、お名前と試験番号を教えて下さい」


「……天野義道です。番号は0147番です」


「はい、天野義道さん……0147、はい確かに。それでは此方のビブスを着用してください。それと、武器の方をお持ちでないようですが」


「武器ですか。うーん、何があるんですかね」


 試験官から手渡されたビブスには"0147"と表記されており、恐らく各試験者達を管理する目的があるのだろうと推測できた。

そして武器の方を提案されたのだが、これがまた悩みどころである。

僕は武器に関しては取り扱う事が出来ない……刀など握った事すらない。

なのでなるべく小さくて邪魔にならない物にしようと考え、試験官に武器の提示をお願いした。


「そうですね、此方の方から自由にお選び下さい。重火器類の使用は原則認められておりませんので、原始的な物になりますが」


 提示された武器は、どれもこれも原始的なものばかりではあるものの、豊富な種類の模造刀がずらりと並んでいた。

刀から西洋剣、アックスに槍から薙刀まで、まさに武器という武器が沢山並んでいるのだ。

けれども僕は、そんな豪勢な物を所持していても扱えないので、なるべく小さめのものを選ぶことにした。


「えと、じゃあこれにします」


「はい、ダガーナイフですね。此方の武器は全て模造品ですので、殺傷性はないので安心して使用してください」


「わかりました」


 目に留まった鞘付きの小さなナイフがあったので、それに決めた。

やはり模造刀のようであり、刃は丸く処理されており、先端部分もゴムが取り付けられていたので、殺傷性は極めて低いものとなっているのが見て理解できた。


よし、ビブスも武器も貰ったことだし、いざ行かん。他流試合へ。



「……あー! 待って下さい、記名して下さい、記名ー!」


心中意気込み、自身に激を飛ばしたところで、背後から玉兎の呼び声が響き渡ってきた。

何だか気勢が酷く削がれてしまった。何やら証明書と武器の借用書にサインをしてくれ、との事であった。


……こんな調子で大丈夫なのだろうか。

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