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命の輝き

作者: カナセ ヨウ



プロローグ






「僕は、緑豊かな大地も、光り輝く星空も見ることは無い。でもいいんだ。それは僕じゃない、誰かが見れば。そして美しいと、地球に生まれてよかったと、そう思ってもらえたら、僕は本当に嬉しいんだ」


一人の少年が呟いた言葉。神秘的な輝きを放つ青い髪と目。身の丈はそれほど高くはなく、小学生程度。幼い容姿にはとても不似合いな言葉を発したその少年は、今はもういない。誰に看取られるでもなく、その少年は一人でこの世を去った。

けれど私は知っている。彼が残した素晴らしい遺産を。そして私は決して忘れない。彼がその尊い命を懸け、伝えたかったことを。

この世に生を受けたものには、各々の役目があるという。それでは私の役目とは……。勝手に決めてしまってよいものなのだろうか。私は伝えたい。彼が存在したということを。何年かかってもいい。どうか神様、私にその役割を担わせてください。




出会いと旅立ち





太真暦二九二八年


地球は青かった、などという台詞はとっくの昔に忘れ去られていた。もしその言葉を残した人物が今の地球を見たら何と言うだろう。


「地球は青かった」


彼の名はアーディン。見た目は小学生のようだが、年のころは十七、八。確定でないのは本人が自分の誕生日を知らないからだ。私は瀕死で道端に倒れていたところを彼に助けてもらったただの野良猫。こんな私にも名前がある。ユウ。優しいという意味があるらしい。助けてもらっただけでもありがたいのに名前までもらえるなんて、本当に私はついている。というより幸せものだ。今はこの孤独な少年と一緒に暮らしている。彼は時々意味のわからないことを呟く。


「ねぇ、ユウはどう思う?」


聞かれても私は答えることなど出来ない。ただの猫なのだから。私はただ彼の傍にいて、彼を見ながら話を聞いている。私に出きる事といえばそのくらいのこと。けれど、私はそれがとても嬉しい。なぜなら私はこの少年に必要とされているから。


「人間は愚かだと思う?」


彼はいつも優しい目をしている。私には理解できない。なぜたった一人でこんな廃墟と化した街にいて、そんな穏やかな顔が出来るのか。


「みんなは色々言いたい放題だけど、僕はそうは思わないよ」


みんなというのは地球を捨て、他の星に移住していった人間のこと。今地球にいるのはほんの少しの小動物と植物、そしてこの少年ただ一人。


「ねぇ、ユウ。僕の夢を聞いてくれる?」


……どうして夢などが持てるのだろう。厚い雲に覆われ、光が差してこないこの星に。日を追うごとに命が減っていくこの星に。


「それはね、地球に色を取り戻すことなんだ」


私は空というものを見たことがない。もちろん青いといわれる海も。けれど思う。きっとこの少年のような髪と目の色なのだと。見るものを吸い込むような、それでいて包み込むような存在。


「少し急がないと。僕には余り時間がないから」


人だけでなく、この星の生命は太陽の光が無ければその命を保つことは出来ない。太古の昔から変わらないこと。今、地球は病んでいる。原因など、この小さな脳みそしか持たない猫の私でも分かる。目の前にいる、いわゆる霊長類。人間だ。


「僕の考えがあってれば、まだ地球に僕以外の人間が生存している可能性があるんだ」


……希望論というものだろう。私たち動物は本能で分かる。助かるのか否か、ありえるのか否か。けれど人間は?希望″というものを持つ。


「ユウは少し化学物質にあたっているから知能は高い方だよね。つまり僕の言っている事を理解している可能性がある」


希望、可能性、推測。人間の頭は一体どうなっているのだろうか。


「そして僕はユウよりもっと知能が高い。君の考えていることは手に取るようにわかるよ」


……。


「動物は本能で判断する。人間は本能と引き換えに論理的な思考を手にしたんだよ」


……。


「じゃあ出かけようか。って言っても、今まで住んでいたこのボロボロの研究所が空を飛ぶだ

けだけど」


普通、出かけるというのは身一つで外へ出るものだと思っていたけれど、この少年は家ごと移動するらしい。まぁ、今までいた場所から動くのだから?お出かけ″に違いは無いだろう。


ゴオオォォ・・・・


「よし。離陸は成功。じゃぁまずは西へ行こうか」


彼の顔がとても輝いている。希望を持っているのだろう。私には分からないが、彼を見ていると私もそれを持ってみたいと思ってしまう。人間とは不思議な生き物だ。いや、この少年が特別なのだろうか。

船の名をレクレメイションとつけた。とても大きな古代魚のような外観で、お世辞にも乗りたいとは思えないボロさだ。三階建ての空飛ぶ研究所、兼住居。一階が生活スペース、二階が研究スペース、そして三階は操縦室。彼が、アーディンが一階に行くのは本当に稀である。いつも二階の研究所にいるからだ。操縦はオート式。二、三日後には最初の目的地に着くらしい。

彼は研究に没頭している。何の研究かは私にはわからないが、なにやらよく爆発をしている。小規模ではあるが、その度にアーディンの顔は真っ黒になっている。しかし彼はそんなことはお構いなしに作業を続ける。机の上には古文書のような文字の嵐、私のお気に入りの窓辺以外の場所は、まさにゴミ屋敷といった状況だ。彼に言わせてみれば、これらはゴミではなく大切な研究資料なのだが、私から見たら、それらが大切にされている感じはまったくない。

窓から見える景色がいつもと違う。老朽化した建物ではなく、老朽化した地球。点々と緑がある。茶色に近い緑。動くものは見当たらない。それもそうだ、私は生まれてからたった二匹の

ねずみとこの少年にしか出会っていない。雨はよく降る。それもどす黒い雨が。


……。


なぜ人間はこの星を捨てたのだろう。丸い窓から地上を眺めていると、そんな事を考えていた。


「どうして人間は地球を捨てたんだろうね」


ビーカーに色々なものを混ぜながらアーディンはしゃべりだした。というより私の疑問に答えるかのように。


「例えばさ、ユウにとってすごく怖い存在がいたとする。そしたら逃げたいと思わない?」


それは本能だろう。


「一緒なんだよ」


人間はそれを置いてきたのではないのか。


「完璧じゃない。でもそれこそが完璧なんだ」


私は大きなあくびをしながら彼の言葉を記憶した。





西暦二九三二年



「今頃地球はどうなってるんだろうなぁ」


無精ひげの二十代ほどの男が宇宙を眺めながら一人呟く。


「見に行ってみたらどうですか」


男は後方からの突然の声に驚き、腰に下げていたピストルのようなものを抜きとっさに構えた。声の主を見てみると、きれいな銀色の髪をもつ、男か女か判別のつかない人物が立っていた。


「そんな物騒なものはしまって下さい」


優しい笑顔で話しかけてきた。


「一体何者だ、いつから俺の後ろにいた?」


無精ひげの男は少し困惑した。というのも、自分は第七銀河では指折りのハンターであるという自信があるのだ。

地球を捨てた人間はそれぞれ自分の行きたいところへ移住していった。地球があるのは第十一銀河。一つの銀河を移動するのに約三年かかる。


「私が何者であり、いつからあなたの後ろにいたかなどは、さして問題ではありません」


銀髪の人物の柔らかい物言いは変わらない。しかし男はまだ警戒を解いてはいない。


「今日、一つの尊い命がなくなりました」


笑顔が消え、なんとも悲しそうな表情をみせた。


「悪いが俺はその尊い命を金に変えて生きてる男なんだ。変な宗教の勧誘ならよそを当たってくれ」


そういうと男は鼻で笑ってピストルのようなものをしまった。


「名をアーディンといいます。彼に会いに行ってあげてください」


銀髪の人物はそういいながら静かに消えていった。細胞の一つ一つが消滅するように。これにはさすがに驚いた男は、少し固まってしまった。ハンターというのは賞金のかかったお尋ね者を捕まえるのをはじめ、おつかいから暗殺まで、依頼があれば何でもする万屋でもある。それ故今まで様々な生き物や場面に遭遇してきたわけだが、こんな能力を持った生き物に出会ったのはこれが始めてであった。男はとりあえず自分が師と仰いでいる人物のところへ行き、一部始終を語った。


「お前、ついに気がふれたか」


綺麗な黒髪に、片目が機械の男が、読んでいた新聞から目を離し、呆れながら答えた。ここは第七銀河でも有数のハンター協会の待合室。人間以外にも色々な生き物がハンターとしてここで依頼を待っていたり、賞金首をチェックしたりしている。


「おいおい、そりゃないだろ。何年俺と師弟やってんだよ。俺がおかしくなったらお前も一緒に道連れだ」

「それはお断りしとく」


再び新聞に目をやる。まったく相手にされず、無精ひげの男は少しムッとした声でさらにつめよる。


「第七銀河一のハンターの腕を持つ俺がそう簡単に頭がおかしくなってたまるか!」

「仕事のしすぎだ」


あっさり切られた。


「それと、一番はお前じゃなくて俺だ」

「いいや、俺の方が腕は上だ。なんなら勝負するか?」

「一人でやってろ」


またもあっさり切られた。新聞をたたんで今度は真剣なまなざしで無精ひげの男に話す。


「いいかエドヴァート、お前はまだ若い。今からそんな幻覚を見てたんじゃ、嫁をもらえないぞ?」


フッ、と鼻で笑い、待合室を出て行った。

あのくそジジィ。嫁がもらえないのはお互い様だろうが。などと心中悪態をつく。


「おい!ちょっと待てって!」


男を追って、エドヴァートも待合室を出た。彼の名をオージアスという。彼こそは第七銀河一のハンター。そしてその強さは二十一の銀河中に聞こえている。


「そうだエドヴァート、お前にプレゼントがある」


そういって何やら懐から取り出した。それはかなり昔のタイプの髭剃りのようだ。


「まずはそのだらしないひげを剃る事だな」


そういって渡されたのをポカンと受け取った。


「ってちがーう!」


いきり立つエドヴァートを無視してオージアスはさっさと彼の前から消えてしまった。


「今度会ったらもう片方の目も機械にしてやる……」


一体何度この台詞を吐いただろうかと、言った後に肩を落とす。

エドヴァートは新人ハンターである。ハンターは普通十年以上経験を積まないと一端のハンターとは認められない。そしてより高いランクの依頼、賞金首を捕ることでようやく一人前と見なされる。新人ハンターの中でもずば抜けて強いエドヴァートだが、オージアスには今まで一度たりとも勝ったことが無い。というより彼に触れることすら出来ないのだ。


「あの怪物め、絶対いつかトップハンターの座を奪ってやるからな!」


いきなり一人で大声を出し意気込んでいる不振な男に、周りのものは一瞬驚いたが、またか、という表情で何事も無かったようにそれぞれ動き出した。

オージアスは今泊まっているホテルの自室へと戻ってきた。最上階のスィートルームで、ネオンの光の美しい景色が一望できる。それだけではない。多種多様な生き物が共存しているため、なんともおとぎ話に出てくるようなかわいらしい建物もあれば、どうやってあの家で生活するのだろうというものまである。けして見るものを飽きさせない第七銀河の中枢星、ラルクアル。


「銀色の髪を持つ者……」


オージアスは呟く。






太真暦二九一二年



「おい、オージアス。お前Sランクのヤロウを仕留めたってホントかよ?」


第九銀河、砂漠の星ザラザ。ハンター協会の病院の廊下で、見慣れた男が聞いてきた。


「なんだ、お前か」


興味なし、といった様子で再び歩き始めた。


「ちょ、待てって。たまにはゆっくり茶でもすすりながらまったり話そうぜ」


男は慌ててオージアスの後を追う。


「お前と違って俺は忙しいんだ。茶の相手なら他のやつにでも頼むんだな」


挑発するような笑みを男に向けてすぐ消えてしまった。


「ったく、相変わらずだな」


男は頭をボリボリ掻きながらため息をついた。依頼と賞金首にはランクがあり、下はF、一番上はBとなっている。その上にAがあるが、ハンターとして一生を過ごしてもそこまでたどり着けるものは一〇万人に一人の割合。しかし、ある戦闘能力に長けた種族はこの割合が十人に一人という驚異的な数字を出している。だがこの種族は争いを好まないためハンターをしているのはこの種族のほんの一握りに過ぎない。そしてAランクの上に存在するのがSランク。このランクをこなせるのは全二十一銀河のハンターを統計しても両の手で数えられる程度である。


「さすがにSランクはきつかったな……」


自宅へ戻ったオージアスは、病院でもらった薬を飲み、ベッドに寝転がった。


「そろそろ嫁もらわないとなぁ」


夜空の見える天井を見ながらふと思った。オージアスは四十七歳。現在人間の平均寿命が一五〇歳なのでそろそろ適齢期である。しかし彼の場合、今まで付き合ってきた女性に言い渡された別れの言葉はどれも似たようなものばかり。


「仕事と結婚したら?」


モテない訳ではないので幾度と無くこの言葉と出会ってしまう。


「はぁ」


仕事は順調。金も名誉も手に入れた。


「あ〜、愛が欲しい」


そんなことを呟きながら眠りに着いた。

彼は二十二歳の時に地球を離れた。それ以来ハンターとして着実に力をつけ、今の地位、つまり全銀河にいるハンター達のトップに君臨することが出来たのだ。それは彼が長年求めていたものだったが、手に入れてみると案外なんとも無く、むしろ虚しいものを感じたのだった。人間誰しも欲がある。しかし彼はその欲をすでに満たしてしまった。嫁が欲しいといっている割には、実はまったく焦っていないということも分かっていた。

朝、目が覚めると恒例の砂嵐が元気に働いていた。新人ハンターにとっては格好の修行時間でもあった。なぜならハンターというものは武器の使用はもちろん、超能力や念力、霊力、その他様々な力を持ち合わせていなければならないからだ。この砂嵐の修行の場合、まず自分の周りだけを砂から守るという能力から始まり、その範囲をひたすら広げていく事でまずスタミナがつけられる。それは同時に能力アップにも繋がる。オージアスにしてみれば、こんなものは朝飯前である。しかし今はSランクの仕事の後なのでハンターのレベルとしては新人並であった。


「これからどうしたもんかな」


窓の外では新人ハンター達が必死に修行している。オージアスにはそんなことをする必要はもうない。すっきりしない気持ちのまま、傷が癒えるまでの一ヶ月間彼は自宅で静かに暮らしていた。

傷も癒えかかったある日、その人物は突然彼の前に姿を現した。銀色の光を放つ髪を持つ者。


「仕事の依頼なら今のところ受け付けてない」


それだけ言うと、オージアスは訪問者を追い返した。しかしその人は次の日も現れた。オージアスはとりあえず用件を聞き、適当な理由をつけて断ろうとした。


「あなた方の母星、地球で、一つの尊い命が誕生しました」


オージアスは地球という言葉に反応した。


「あの星にはもう命なんて無い。ほとんどの人間がいなくなって、もう二十五年も経ってるんだ」


かなり棘のある口調で彼は言い放った。


「名をアーディンといいます。彼に会いに行ってあげてください」


それだけ言うと、銀髪の人は消えてしまった。オージアスはしばらく目を丸くしていた。それから数日後、彼は砂漠の星ザラザを発った。







オージアス


太真暦 二九一八年


宇宙船から見えるのは、厚い雲に覆われた見るも無残な母星、地球だった。オージアスは操縦席で一人、ピクリとも動かないで地球を見ていた。

―俺が地球を去った時は、どうだったかな……。

人間というのは、自分を傷つけたり、脅かしたりする存在や消そうとする習性がある。それは何も物体や物質だけではない。過去の記憶。そういったものも、その対象となる。オージアスは少しずつ、地球に近づくにつれて過去の記憶を思い出していった。


「なぁ、お前はいつ離れる?」


ちょうど二十歳になった年。オージアスの親友のガバナンは聞いてきた。オージアスは不機嫌気味に答えた。


「俺は誰が何と言おうとここに残る」


目も合わそうとしないオージアスにガバナンはため息をついた。


「お前さ、それ本気で言ってるのか?だとしたら稀に見る大馬鹿者だな」

「うるさい!ここが俺の家だ!なんで家を追い出されなきゃいけないんだよ!?」


オージアスは声を荒げた。いつもの事なのでガバナンは彼を落ち着かせようと、作ってきたコーヒーを差し出す。

今、二人は目の前に広い湖が見えるコテージで、休暇を楽しんでいた。と言っても湖の周りも、湖自体もとても綺麗とは言えない状態である。それに、実を言えばオージアスを説得するためにわざわざガバナンがこの事を企画したのであった。何度説得しても地球を離れる意思を持たないオージアスは、度々彼を説得しようとする人達をボコボコにしてきたのだ。その中にはもちろん政府関係者もいた。そもそも地球を離れ、他の星へ移住するというのは国家プロジェクトであり、絶対令でもある。


「まさかお前、俺を説得するためにこんな人気のないところに……?」

「そうだ。街中じゃ周りの人に迷惑がかかるからな」


それはオージアスが怒りに任せて力を闇雲に発揮してしまうからである。わずか二十歳で地球の上位ハンターまで上り詰めた彼の実力は計り知れない。


「後二年……」

「?」

「後二年で、俺達地球人はこの星からいなくなる」

「それはない。なぜなら俺が残るから」


オージアスは自信満々でそう言い放つ。ガバナンは虚しい目を、オージアスに向ける。


「何だよ……?」

「核を使うんだ。それも、コアに」

「!?」


コアとは地球の中心にある言わば心臓のようなもの。そしてそれは急速に停止への道をたどっている。もし本当にコアがその働きを失った場合、それこそ地球の最後である。


「コアをもう一度動かすには様々な条件が必要になる」

「で?何か、自分達の星を管理仕切れなかったと第十一銀河中から笑いものにされるのが嫌だから、自分達で消そうってか?」


オージアスは無意識に念力を使い、部屋の中のものが音を立てて壊れていった。


「オージアス、落ち着け」

「これが落ち着いていられるかよ!!!」


そう叫んだ瞬間、窓が派手に割れ、キッチンが爆発した。


「……人の話は最後まで聞け」

「うるせ」


ガン!


また叫ぼうとしたオージアスの後頭部を、木片が勢いよく殴った。オージアスは手を当てて声をださずに痛みに耐えた。


「ガバナン……お前……」

「いつもやられっぱなしってのは性に合わないんでね」


コーヒーを啜りながらガバナンはオージアスが席に着くのを待つ。オージアスはそれを察し、渋々イスに座り、ガバナンの話を聞く事にした。


「いいか、核を使うのは何も地球を消すためじゃない」


ガバナンの目がいつにもまして真剣なものになっている。こういう時の彼にはどうにも言い返せないオージアスである。うそつけ!と言いたい所だが、大人しく続きを聞くことにした。


「みんなお前と同じだ」

「?」

「全ての地球人、とまではいかなくても、少なくとも地球政府は信じてる。この星を。俺達の母星を……」

「……俺も、信じてるさ」


宇宙船から見える地球を見据え、オージアスは呟いた。しかし、一体何を信じているというのか。


『あの星にはもう命なんて無い。』


銀の髪を持つ人に、自分はそう言ったではないか。自嘲をこぼしながらも、オージアスの船は地球へ着陸態勢に入った。

激しい機体の揺れに悩まされながらも、船は何とか地球に降り立った。外の状況をコンピューターで調べる。すると驚くことに生身で外にでても大丈夫だという結果が出た。しかしその期限は三日間。例え特殊スーツを着たとしても、一週間しか地球にはいられない。オージアスは早速宇宙船を降り、母星・地球の地を踏んだ。


「……俺の、家……」


目の前に広がるのは、色を失ったモノクロに近い世界だった。やせ細った木々、形の崩れた建物、光を拒む厚い雲。オージアスは、目を見開いたまま一筋の涙を流した。


「……ッ!」


口元に血をなじませ、小さく、ごめん、と言葉を落とす。涙を拭い、手に持っていた探知機を起動させる。すると人の顔をした立体映像がでてきた。


「この星に人間がいるか調べられるか?」

「しばらくお待ち下さい」


ピィィ、ジジッ、ジッ……


機械的な音を出しながら、立体映像は地球全体に生命を探知出来る電波を発した。その間、オージアスは暇なので周りを探索に出掛けた。しかし、行けども行けども似たような景色しか目に入らなかった。


ピピピピッピピピピッ


作業が終わった合図が鳴り響き、オージアスは来た道を早足に戻った。


「いたか?」


期待と不安が一気にこみ上げてくる。


「……生命確認。人間の可能性七十七パーセント……」


それを聞き、オージアスは思わずガッツポーズをした。


「で、それはどこだ?いや、待て。今すぐ船に戻ってお前を接続するからその場所まで船を移動してくれ」

「了解」


派手に砂埃をあげて、オージアスの船は飛び立った。

距離を考えるとあまり遠くはない。数十分で着ける場所に、人間はいる。


「アーディン……一体何者なんだ……」


答えが出るまもなく、船は目的地に着いた。船を降り、ポツンと建ててある建物を見る。見た目はまるで古代魚のようだ。なんとも古ぼけているが、一応雨風は防げているようだ。オージアスは建物に近づいていき、ドアであろう場所までたどり着く。そして念のため、ノックをしてみた。


コンコン


「……」


やはり応答は無い。と、思ったその時、なんとドアがひとりでに開いた。驚いて真っ直ぐ前を見て立ち尽くしていると、足元で何かが動く気配がした。顔を下げると、そこにはあまりにも予想外の人間が立っていた。


「……」

「こんにちは。えと、いらしゃい……?」


オージアスは固まった。まさに言葉が出ない状態である。眼下には、十才にも満たないであろう子ども、そう、子どもがいるのだ。青い髪と目をしている。服はヨレヨレの学者のようなものを着ている。子どもは、微動だにしないオージアスを不思議そうに見上げている。


「あなたは、誰ですか?」


子どもの問いかけに、オージアスははっとした。


「あぁ……俺はオージアスっていうんだ。で……おま、いや、君はもしかして、アーディン?」


腰を屈め、子どもと同じ目線にしてオージアスは質問した。


「うん、アーディン!えと、おーしあす?」

「オージアスだ。ところで、君はここに住んでるのか?」

「うん。僕のお家!」


そういうとアーディンはオージアスの腕を引っ張り、家の中へと連れて行った。

階段を上がり、通されたのは何やら研究所のような所だった。それもかなりぎっしりと機材やら資料やらが詰め込まれている。こっち、とアーディンは部屋の一番奥まで彼を連れて行った。体格のいいオージアスは、途中にあったものを踏んだり落としたりしてしまったが、アーディンは気にする事なく腕を引っ張り続ける。


「これ」


ようやく止まった、と思い顔を少しあげると、そこには棺のようなものが置いてあった。


「僕の生まれたところ」


一見すると、それは生命維持装置のように思われるものであるが、しかしこういった装置というのは十八歳を超えた人間にしか使ってはいけないものである。十八歳未満の人間、そしてそれ以外の生物に使った場合、体の細胞に多大な被害を被る。不思議に思い、オージアスは軽くその中を調べてみることにした。


「……」

「何してるの?」

「ん?ちょっとこれが何なのかを調べてるのさ」


カチャカチャッ


オージアスは調べるのに夢中でアーディンの事をすっかり忘れてしまっていた。しかし忘れられているアーディンはじっとオージアスの行動を観察している。小一時間ぐらい経った頃、ようやくオージアスは手の動きを止めた。


「ふぅ……」

「何かわかた?」


後ろを振り返ると、手に湯気の出ているコップを持ったアーディンが立っていた。


「はい」

「ありがとな」


一口、渡されたものを飲む。甘くて子ども向けの飲み物であることがわかる。


「うまい!これ、アーディンが作ったのか?」


アーディンは首を横に振った。


「かてに、つくてくれる。それより、何かわかた?」

「ああ。全部とまではいかないが、大体の機能はな。これは……」

「いいよ」


オージアスが説明をしようとすると、アーディンはそれを止めた。なぜ、と問えば、してるから、つまり、彼はこの装置が何であるかを知っていると答えたのである。

オージアスは取り合えずこの子どもの一日を観察することにした。彼は一日の大半をこの研究室のような所で過ごしているようだ。食事はボタンを押せば出てくる一般的なものだった。しかし、この食材が一体どこから来ているのか。普通なら各家の屋上か地下に大きな冷蔵庫を取り付けていて、そこから機械が勝手に取ってきて調理する、という訳だが、人間がいなくなって、というよりは核がこの星で使われてから約三十一年。その間腐らず未だに鮮度を保ったままで現存しているのだろうか。オージアスは建物の中を探してまわった。すると一階にそれらしい物を発見し、中に入ってみると見事に多種に渡る食材が貯蔵されていた。


「なんつう家だよ。あの棺といい、政府の閣僚級の家か……?」


あの棺はただの生命維持装置とは違う。言うなれば、生命生成装置、である。維持装置はすでに体が出来上がっている人間の体細胞を数十年、その装置に入ったままにすることができるものであるが、あの棺は生殖細胞の時から、かなりの時間を掛けて、あのアーディンという子どもを生み出したのである。一時期この実験が行われていたが、やはり母体から生まれてくるという事とは異なり、実験開始から八ヶ月も経たない内に、全ての細胞が消滅していったので中断された。いくつかの疑問を抱きながら家を探索し、再びアーディンの元へと戻ると、彼は真剣な眼差しで分厚い本を読んでいた。


「何を読んでるんだ?」

「……」


反応がないので近づいてみたが、アーディンはまったくオージアスに気付く気配を見せず、それどころか彼をよく見てみると、瞬きを一切していないのがわかる。よほど集中しているのだろう。オージアスはこの不思議な子どもを飽きることなく、彼が読み終わるまで大人しく眺めていた。


ザァァァ――


「……うぅ、ん……」


激しい雨の音で、オージアスは瞳を開けた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。掛けてあった毛布をイスにおき、窓の方へと移動する。


「……汚いな……」


窓の外に見えるのは、黒い雨だった。それも少し粘り気を含んでいるようだ。


「そんなこと、いちゃダメ」


足元を見ると、今度は比較的薄めの本を読んでいるアーディンがいた。読んでいた本から目を離し、食事、と言って立ち上がった。一階へと降りていき、すでに食事の用意されている部屋に案内された。


「悪いな」

「?……何も悪くない」


そうだな、とオージアスは笑った。テーブルの上に並べてあるのは実に豪華なものだった。陸・海・空の食材が隙間を作らず置いてある。さすがのオージアスもこんな量は食べられない。


「おーしあす、なに好きかわからなかたから」


アーディンはどうやらオージアスの事を考えて、これだけ多種の食事を用意してくれたようだ。そんなアーディンの優しさを感じ、オージアスはまた笑みを浮かべた。


「ありがとな」


一言だけそう言うと、二人とも互いに笑いあい、食事を始めた。途中、オージアスは今もっている様々な疑問をアーディンに聞くことにした。


「なぁ、アーディンは何で自分がこんなところにいるのか知ってるか?」


アーディンは食べるのを止め、ポカンとしている。


「うん」


ごく当たり前のようにそう答えたアーディン。やはり、彼はただ単に人間が興味本位で生み出したものではなく、きっと目的があり、そして何かしら役目をおった存在なのだろうことを確信したオージアスだが、それにしても疑問は尽きることがない。


「教えてくれるか?」

「……信頼だよ。それだけ」

「ん?うぅん……悪い、もう少し俺が解るように説明してもらえるか?」


オージアスの申し出に、アーディンは首をかしげた。


「信じて、頼られたんだ、僕。だから頑張る!」


満面の笑みを浮かべ、アーディンはまた食事を食べ始めた。

次の日の朝、朝日というものが訪れない地球だが、寒さで体は自然と目覚める。二階へ上がると、やはりアーディンは本を読んでいた。


「おはよう、オージアス」


アーディンが初めて自分の名前を正しく発音した。オージアスは喜びもあってか、一拍遅れて返事をした。朝食を取りながら、その事をほめるとアーディンは少し照れて見せた。


「なぁ、アーディン。俺と一緒に来ないか?」


オージアスは本に熱中しているアーディンに問いかける。


「……この星はまた復活するって信じてはいる。だけど今のこの状況で、ここにいるっていうのは」

「僕も信じてるよ。オージアス達の事も信じてる。だから、僕を信じて?」


柔らかい笑顔をオージアスに向け、またすぐ本を読み始めた。それから夕食になるまで、オージアスは特に何をするでもなく、ただ彼のそばにいた。

また朝日の無い朝が来た。オージアスは決めていた。一人で地球を発つことを。


「ごめんな。一緒にいれなくて……その、普通の人間は生身だと三日しかこの星にいられないんだ。お前は、生まれた時から特殊のようだから平気みたいだけど、俺は、これ以上はいられない……」


雨の降る中、二人はオージアスの宇宙船の前で立っていた。オージアスの表情は本当に申し訳なさそうだった。


「ううん。それより、会いに来てくれてありがとう。すごく、うれしかたよ」


そう言った、アーディンという存在は、今のこの地球で唯一、色を放っていた。またね、という別れ際の決まり言葉は互いに言わなかった。地球を離れ、第十一銀河を離れる事を決めたオージアス。彼の船の中には水滴が漂っていた。





エドヴァート


太真暦 二九二一年


『母さん、これ何?』

『ん?あら、それ地球じゃない!』

『チキュウって何?」

『私達の母星よ。今はもう住めなくなってるけど、この緑豊かなところが、私達の故郷なの』


第十銀河、極方の星・シャンテでエドヴァートは母親と、映像の地球の夢をみた。夢から覚め、壁に掛けてある時計を見ると、一人で十三回目の誕生日を迎えたのだと気付く。


「九十三!九十三ッ!」


怒気を含んだ声と同時に、激しく階段を上がってくる足音がした。その数字はエドヴァートを指している。エドヴァートは一瞬体をこわばらせたが、部屋を出て声の主を探した。


「ここです」


エドヴァートの声を聞き、足音は近づいてきた。そしてエドヴァートの前に丸々と太った二足歩行のカエルが現れた。その顔は人間に近く、怒りがむき出しになっている。


「仕事が入った!さっさとこい!」


エドヴァートの茶色い髪を鷲づかみにして、急な階段を降りていった。


「痛っ、離して!」


そう言うと、エドヴァートの要求が聞き入れられたのか、カエルは足を止めて手を離した。開放された、と安堵した瞬間エドヴァートの体が壁に叩きつけられた。


「黙れ、お前が何を言おうと意味はないんだよ」


酷く冷たい眼差しでカエルはそう言い放った。

エドヴァートが連れて行かされたのは死体処理場だった。主に子どもが働かされているが、人間はエドヴァートだけである。皆黙々と流れ作業をこなしている。エドヴァートもいつもの定位置につき、死体の目玉を抜き取る作業に取り掛かった。


「いいか!ついさっき武器製造工場で爆発があった!これからかなりの死体が入ってくるから

手を休めずに仕事しろ!」


カエルの声が広い処理場によく響く。子ども達からは、かすれた返事が返ってきた。


「エド」


作業をしているエドヴァートに後ろから声がかかった。そこにいるのはうさぎのように耳が長くて白い、ラー族のシュシュバだ。


「何?」


エドヴァートは後ろを振り返ることなく返事をした。もし手を休めて振り返りでもしたなら、あのカエルにどんな仕打ちをされるか堪ったものではない。


「最近、人間がシャンテに来たみたいだよ。それもかなり強いハンターって噂」


それを聞きエドヴァートはうんざりした。どうせまたデタラメだろう、と思ったのである。

シャンテには第十一銀河からの移民者が多数いる。しかし、二年前に元首が変わってから移民者は激しい弾圧を受け、生き残ったものはエドヴァート達のように奴隷同然の扱いを受けている。移民者の中でも特に人間は危険視されていて、老人と子ども以外は全て殺されたのだった。そして数カ月おきに、今シュシュバが言ったような英雄的存在の噂が流れるようになった。


「そんなのウソだよ」


気力の無い声でエドヴァートは答えた。そんな彼に掛ける言葉の見つからないシュシュバは黙って作業を続けた。

仕事が一段落したのは六時間後だった。朝の寒い風が、処理場を出た子ども達に吹き付ける。ずっと座っていたので、皆お尻を少しさすりながら寄宿舎へと戻っていく。帰り道、お喋りをする子どもは一人もいなく、弱い足音だけを作っていた。

それから数週間経ったある日、いつものように子ども達が黙々と作業をこなしていると、数人の男が処理場へと入ってきた。処理場の持ち主であるあのカエルは、その男達を丁重にもてなしていた。


「はい。この処理場はそういう役目がありますので、これからもぜひ、我が社のほう、よろしくお願いします」


丸々と太っているカエルだが、精一杯腰を低くして男達に話をしている。その中の一人、頭中に目玉がある男がふと、カエルに質問をした。


「ここに人間はいるか?」


突拍子も無い質問に、カエルは首をかしげた。


「人間ですか?えぇ、子どもが一人だけいます。呼んできましょうか?」


カエルのその答えには首を横に振り、男達は処理場を出て行った。


「あいつら、何だったんだろうね」


ほとんど具の無いスープと小さなパンを食しながら、シュシュバはエドヴァートに聞いた。一部屋に六人が寝起きしている唯一の子ども達の安心できる部屋で、二人は夕食をとっていた。他の子ども達はこの日は夜中の二時までの仕事になっている。


「さぁ。何にしたって俺達には関係ないよ」

「でもさ、あいつら人間の事聞いてたみたいだよ?」


そんなシュシュバの話にもエドヴァートは関心を示さない。シュシュバはいつにも増して無口なエドヴァートを心配した。


「ねぇエド。最近何かあったの?ずっと元気ないけど……」

「別に」

「ウソだ。絶対何かあったんだ。僕には話せない?」


一応二人は仲が良い。いわゆる友達同士である。会話が許されないこの閉鎖的な場所で友達がいるというのは実に心強いものである。互いの存在がいるおかげで、こんな辛い作業も続けていけていることを十分分かっている二人。だからこそ、心配する。まるで自分のことであるかのように。シュシュバはエドヴァートが話してくれるだろう事は分かっている。だから彼が自分から話し始めるまで静かに待った。


「……俺の母星、地球っていうんだ」


下を向きながら、エドヴァートは呟く。


「うん。すごく綺麗なところだったんでしょ?シャンテとは違って自然が多いって聞いたこと

ある」

「俺、映像でしか見たこと無いんだ。その時は、すごく地球に行きたいって思った」


シュシュバは静かにエドヴァートの声に耳を傾けている。


「でも、もう俺達住めないって聞いて、それから地球なんて星、ずっと忘れてた」

「うん」

「それなのに、最近よく夢を見るんだ」

「地球の?」


コクリ、と少しだけエドヴァートは頭を動かした。そして、何が彼を落ち込ませていたのか、シュシュバはすぐに察した。シュシュバ自身、夢で母星にいたころのことを見た時は、とても切なくなる。なぜ自分は母星を離れ、こんなところに来たのか。なぜこんな辛いことを強いられなければならないのか。そんな事ばかり考えていると、目の前が真っ暗になり、いっそ死という世界へ飛び込みたいとさえ思う。


「俺の居場所は……ここじゃない……」


エドヴァートは音の無い涙を流す。シュシュバは言葉を掛けるでも無く、ただ彼が泣き止むまでずっと隣に座っていた。

次の日、処理場の日常は急変する。なんと一人の人間が乗り込んできたのだ。名前はオージアス。彼は作業しているエドヴァートの所へ行き挨拶もなしに、


「この星から出るぞ。お前が最後の一人だ」


とだけ言いポカン、としているエドヴァートを軽々と肩に担いだ。もちろん場内はざわめいた。と、そこにカエルが慌てて姿を現した。


「おいこら!一体何の権利があってうちの物を持っていくんだ!?」


オージアスはそれを聞き、眉間にシワを寄せた。


「あのな、一言言っておくがこいつは人間だ。物じゃない」

「黙れ!大体お前のような人間がなぜこの星にいる!?今すぐ政府に連絡を入れるから大人しくしていろ!」


カエルは近くにあった通信機のところへ行こうとしたが、それはオージアスに止められた。


「これを見ろ」


そう言って一枚の紙をカエルに渡した。怪訝な表情を作りながらも紙を手に取る。するとそれを読んだカエルの顔が見る見るうちに引きつっていくのが分かる。


「これは、偽造文書に決まっている!」

「そう思うなら政府に確認してみな。まぁ時間の無駄だと思うがな」


口元に笑みを浮かべているオージアスを一睨みし、カエルはまた通信機の方へと走った。


「あの……」


エドヴァートは恐る恐るこの大きな男に話しかけた。


「何だ?」

「あの紙、なんですか?それと、あなたは?」


もっともな質問である。その間も、処理場にいる子ども達はざわめきあっていた。シュシュバも気が気ではない。


「あれは、この星の人間を無傷で解放、及び星外退去とする事が書いてある」


少し難しいことを言われ戸惑ったが、エドヴァートは何とか理解した。


「で、俺はオージアス。もちろん人間で、それなりに名の通ったハンターをやってる」

「……ってことは、俺地球に帰れる?」


エドヴァートは目を輝かせた。しかし、オージアスはそれには首を縦に振らなかった。


「今地球は住めないんだ。特殊スーツを着ても一週間が限度。お前はこれから、人間がちゃんと権利を持てる星に行くんだ」

「そ、っか……」


それを聞きしな垂れるエドヴァート。しかし何にせよこの薄気味悪い処理場を出れることには変わらない。しかし、一つ気になることが彼にはあった。


「あの、俺だけが、助かるの?」

「?言ったろ、お前が最後だって。他の人間はもうこの星を離れてる」

「あ、そういう意味じゃなくて……」


エドヴァートはこの事を聞くのはいいのかどうか躊躇った。なぜなら、自分がここから助けてもらっただけでもありがたいのに、他の子ども達の事も聞くというのは、ちょっと図々しいのではないか、と。


「じゃあどういう意味だ?」


オージアスは話を聞こうとエドヴァートを肩からおろした。


「えっと、その……」

「何だ?気にせず言ってみろ」


オージアスはエドヴァートの頭に優しくその大きな手をおいてなでた。するとエドヴァートは緊張が取れたようで、真っ直ぐ目を見て話した。


「他のみんなは、ここから出られない?」


その言葉にハッとして、オージアスは広い場内を見渡した。ざわめきはもう消えていて、子ども達はじっとこちらを見ている。よく見ると、皆痩せていて、生傷が多数ある。


「本気ですか!?人間を解放するなんて!しかも無傷でなんて!」


静かな場内にカエルの野太い声が響く。そして荒々しく手に持っていた薄っぺらい受話器を置いた。


「おい」

「何だ!?用は済んだんだろ!さっさと出て行け!」


カエルは大げさなほど手を振りオージアスを追い出そうとした。しかしオージアスは動こうとしない。代わりに口が動いた。


「ここの年収はどれぐらいだ?」

「は?一体何をい……」

「いいから答えろ」


オージアスのどすの利いた声がカエルに投げかけられる。カエルはその声と、オージアスの強い視線に冷や汗をかき、


「い、一千万コーコだ…」


震えた声で答えた。その金額を聞き、オージアスは不敵な笑みを浮かべた。


「なるほど。じゃあ六億で買い取ってやる」

「はっ?」


一瞬何のことを言っているのか理解できなかったが、短い話の流れを整理して考える。するとそのあまりにかけ離れた数字の意味を理解し、カエルは目を点にした。しかし、この突然の訪問客である男の言い分をどこまで信用していいのか、そしてこの男は自分で言った言葉の意味をちゃんと分かっているのか、などと必死に考えていると、オージアスはカエルに近づいてきて馴れ馴れしく肩を組んできた。


「六億あれば一生遊んで暮らせるぞ?もうこんな所に足を運ばなくてもいいんだ。こんなおいしい話はこの先二度とないかもしれないぞ?」


ゴクリ、とカエルはのどを鳴らし、オージアスを見たのだった。





「オージアス、あの星にみんなを降ろすの?」


エドヴァートは旅客機型宇宙船の大きなガラスの先に見える薄赤色の星を指さして聞いた。オージアスは新聞から目を離して窓の方に目をやる。


「……あぁ、あの星ならあいつらもちゃんとした生活が送れる」


それを聞きエドヴァートの顔が綻ぶ。あいつらというのはもちろん処理場にいた子ども達のことである。友達と呼べるのはシュシュバぐらいだったが、やはりどこか仲間意識があったのかもしれない。あの場所で、同じ苦しみを知っている者として。あの処理場の持ち主であったカエルはオージアスの提案を受け、処理場と子ども達を持つ権利をあっさり捨てたのだった。そして数日と置かず、オージアスは子ども達を他の星へ移すために色々と走り回ってくれた。あまり詳しく聞いていないエドヴァートでも、彼が自分達のために動いてくれたことぐらいはわかる。


「あの……」

「何だ?」


窓から離れてエドヴァートはオージアスの前にたつ。


「本当にありがとうございました」


そう言って深々とお辞儀をした。すると、下げていた頭に大きな手が置かれ、乱暴とまではいかないが手荒くなでられた。


「お前の一言がなかったらこうはならなかったんだ。あいつらの笑顔をみる事もなかった……」


オージアスの視線の先には、船内を元気に走り回っている子ども達がいた。彼らの顔に、もう曇りは無い。その光景をみて、オージアスは優しく微笑んでいた。そんなオージアスにエドヴァアートは、


「ねぇ、オージアス。俺、ハンターになりたい。オージアスみたいなハンターになりたい!」


と、張りのある声で突然言い放つ。そして強い眼差しでオージアスをみた。しかし、視線の先の彼の表情は動かない。そしてもう一度、はっきりと伝えたが、彼からの反応は若干冷たいものだった。


「そうか、じゃあいい奴を紹介してやる。今は人間用のハンター育成ってのはなかなかやってないから、そいつの弟子になってハンターを目指すんだな」


エドヴァートは予想外の彼の反応に一瞬とまった。あの優しいオージアスなら、自分を引き取って、弟子にしてくれるだろうと思ったからだ。別にこれから行く星で一人で暮らしていけと言われたらそれは出来る。しかしエドヴァートは会ってしまったのだ。オージアスという人物に。人間ハンターで、いとも簡単に自分達を助けてくれた、まさに英雄と。


「……ゃだ」

「なんか言ったか?」


俯いていたのでエドヴァートの声を聞き取れなかったオージアス。


「嫌だ!俺はオージアスがいい!」


その声は船内の雑音の中に吸収されたが、オージアスの耳にははっきりと聞こえた。そして、ふっ、と笑ってしまった。


「何で笑ってんだよ!?」

「悪い。いやなに、恩人に対して怒鳴り声をあげるとは、中々いい根性してるとおもってな」


エドヴァートは話をそらさせまいとそれから必死にオージアスの弟子を志願したが、この日には了承を得られなかった。あくる日、星で皆と別れ、シュシュバとも再会を約束して別れたが、オージアスとだけは別れなかった。オージアスとしても子どもを一人置き去りにはできないので、しかたなく一緒にいる事にしたが、ハンターにさせようなどとは微塵も考えておらず、知人に預けようと思っていた。しかしその日の晩、エドヴァートは本当に誠心誠意を尽くしてオージアスに頼み込んだのだった。


「じゃあ聞くが、何でそこまでしてハンターがいいんだ?しかも俺を指名。確かに俺は強い。だがお前や、あの子ども達を助けたのは……はっきり言って気まぐれに近い。お前が言ってくれなきゃ助けなかった。俺はお前が思っているようなハンターでもなければ、人間でもない」

「俺と、皆を助けてくれたのはオージアスで、そのおかげで俺は希望が持てた。オージアスは俺に希望を持たせたんだから、その責任を取る義務がある」


とても十三の子どもが話しているとは思えないほど、今の彼は真剣だった。


「はぁ……バカそうなお前のどこからそんな言葉が出てくるんだぁ?」


苦笑いでそう答えるオージアスだが、エドヴァートの澄んだ声を聞き、少し迷った。つまり、ハンターに育てるか否か。

長年ハンターとして星々を渡り歩いていると、自然と他者を見る目が鍛えられる。こいつは強いのか否か、嘘をついているのか否か、など。そして今の彼の声を聞き、オージアスは感じた。彼にハンターとしての資質が眠っているであろう事を。

しばらく二人の間に沈黙があったが、その間もエドヴァートは真っ直ぐにオージアスをみている。それは相手を射抜くほどの強いもので、オージアスはため息を漏らした。


「まったく、何だってお前みたいのに会ったんだろな」

「そういう運命って事で、あきらめて俺を引き取ってよ」


運命ねぇ、とオージアスは目を細めて目の前のエドヴァートから目を離し、虚空に視線を泳がせる。


「どうしたの?」

「ん?ちょっと見えないものを見ようかとおもってな」


エドヴァートは首をかしげ、オージアスの真似をしてみる。するとぷっ、という笑い声が聞こえた。


「何で笑うんだよ」


少しばかり不機嫌な顔をして聞く。


「悪い悪い。……よし!じゃあこうしよう」

「?」


オージアスはエドヴァートをある場所へと連れて行った。


「オ、オージアス。ここって……」

「見たことはなくても聞いたことぐらいはあるだろ?」


そこは広い楕円型の競技場のようなところだった。数千はあるであろう客席はすでにほとんど埋まっている。下にあるグラウンドをみてみると、何頭かの生き物が手綱をつけられている。乗っているのは様々な種族で、シュシュバと同じラー族や、やけに首が長く色黒のグガ族、いくつもの手足を持つメニュメニュ族、それにエドヴァートの知らない種族も見られる。


「一番人気はあのグガ族だ。だが俺は一発逆転を狙ってメニュメニュ族にする。お前は?」

「え?」


オージアスはいつの間にか券を手に持っている。


「ほら、早く決めろよ!レース始まっちまうだろ?」

「え、えっと……」


急かされてまたグラウンドを見やる。しかし一体どの種族がどのようにこの競技に有利なのか

まったくわからないエドヴァート。


「まだかよ?決めないとお前の負けだからな」

「え?何それ!?」

「ほ〜れほれ、スタートコールのお姉さんが出てきたぞ〜」


オージアスはからかうように言ってエドヴァートを追い詰める。


「くそっ、ぜってー負けねぇ……」


妙に敵対心を抱きエドヴァートは今一度選手達をよく観察する。そして、あっ、と小さく呟き、口元に笑みを作る。


「……五番」

「え?何番だって?」

「五番!ラー族!」


それはシュシュバと同じ種族。エドヴァートは自信満々でオージアスと目を合わせた。するとちょうど、スタートの音が鳴り響き、観客の嵐のような声援が場内を駆け巡った。


「さぁついに始まりました!第十銀河・セボット星の王者を決める戦いです!一番人気は十二

番のグガ族!観客の期待を裏切らず先頭を切って走っています!」


アナウンスが観客達をさらに盛り上げる。エドヴァートも初めての体験で心弾ませている。今のところ五番のラー族は三十位中十三位という中々のポジションにいる。一方オージアスが目をつけていたメニュメニュ族は二十七位というところ。オージアスは声を荒げている。


「おいこら!チンタラ走ってんじゃねぇよ!俺の財産のほとんどつぎ込んだんだからな!!」

「えぇ!?オ、オージアスそんなにお金賭けたの?」

「あったりまえだ!男はここって大勝負の時は腹くくるもんだ!」


このレースがそれほど重要なのか、と疑問に思ったが、とりあえずこのオージアスの大胆さはエドヴァートにまた憧れを抱かせた。


「五番!負けるな!!」


エドヴァートも負けじと自分が選んだ選手を応援する。レースも終盤にさしかかった頃、トップ集団が動いた。


「おぉっと!ここで何とセッチェ族が転倒!次々と後続の選手が巻き込まれていきます!一位を走っていたグガ族の選手、独走という形になりました!」


観客席から大ブーイングが飛んできた。しかも飛んできたのはブーイングだけではなく手に持っていた飲み物の容器やイスの背もたれも投げられている。


「落ち着いてください!まだレースは続いています!ってあぁっと!何とグガ族に鉄棒が直撃!転倒です!!」


エドヴァートは声を張り上げた。


「頑張れ!もう少し!!」

「ここで第二集団がトップ集団となりました!グガ族の選手はどうやら気を失ってしまったようでまったく動きません!」


選手達がほぼ一列になってゴールを目指す。最後の追い込み。エドヴァートの耳は一瞬何も聞こえない感覚に陥った。そしてゴールを切る瞬間、それはスローモーションで目に映る。


「「「わああぁぁぁ!!!」」」


観客の歓喜の声が耳に届き、ハッと我にかえる。


「くっそー、結局最下位かよ〜」


隣からオージアスの落胆の声がした。


「さぁここで改めて順位の発表です!一位、二十四番のユーディー族。二位、八番のモント

族、そして三位は五番のラー族です!!」

「やった!三位だ!」


エドヴァートとオージアスはまだ興奮の冷めない競技場からでてきた。そしてオージアスは開口一番にエドヴァートに、


「あーあ、しょうがない。お前の面倒みてやるよ」


と言った。えっ、とエドヴァートはオージアスを見上げる。


「それって、つまり……」

「何だ、嬉しくないのか?せっかくトップハンターのこのオージアス様が弟子にしてやるって言ってるのに」


意地の悪い笑顔でそうエドヴァートに聞くと、彼は激しく首を横に振った。


「う、嬉しいよ!本当に?ウッソ〜、なんて言わない?」


エドヴァートはオージアスの服を引っ張りながら問う。オージアスは体を屈めてエドヴァートに言う。


「男に二言は無い。よく覚えとけ」


そして歩き始めた。その後姿をエドヴァートは笑顔で追いかけた。







アーディン


太真暦 二九三二年



「ねぇユウ、そろそろお別れだね」


アーディンは新しい研究室でまったりしながら黒ネコのユウに話しかけた。


「なんで?」

「僕の寿命は最初から二十年なんだ。だから、お別れ」


それを聞き、ユウは顔をしかめた。


「アーディンなら自分の寿命を延ばすぐらいわけないだろ?」


根拠はある。彼はその頭脳をもってついに地球を蘇らせる術を手にしたのだ。それを手にした時のアーディンはこれ以上ないほどに喜びを見せた。


「それは出来ないんだ」

「なんで?」

「どうしても」


答えようとしないアーディンにユウは近づいていき、彼の顔を覗き込んだ。するとその顔は穏やかな笑顔を浮かべた。それを見たユウは、


「……私は、また一人になる」


と、体を丸めながら言った。今のユウには不安しかなかった。そして少しの怒り。それは人間に対してのものだった。


「ユウ……」


アーディンは小さくて柔らかいユウの体を自分のひざの上において撫でてやった。


「ごめんね。僕の我がままで君をここまで生かしてしまって……」


それは違う、と言いたかったがユウは言わなかった。そうすることで、彼が罪悪感を感じ、少しでも長く生きてくれればと思ったからだ。なぜ人間は彼を生み出したのだろう。自分達が捨てていったこの地球に、たった一人だけ彼を置いて、彼に全てを任せて……。ユウには理解しがたいことが多すぎるほどあった。


「ねぇユウ。君が望むものの中で僕に出来ることがあるなら、僕はそれをしてあげたいんだけど、何かある?」

「……」


ユウはそれには答えず、アーディンのひざの上から降りてどこかへ行ってしまった。アーディンは追いかける事はせず、近くの海岸へと足を運んだ。

崖の下では、海が荒々しいほどにその存在を主張している。足をぶらん、と崖から垂らして座った。背中は細すぎる木を頼って体重を預けた。今日は黒い雨は降っていない。ただ少しだけ強い風が吹いている。ついに自分の役目を果たす時が来たのだと、アーディンは深いため息をついた。


「……僕らの、最大の恩返し」


そう呟き、光の無い水平線を長い時間眺めていた。




ユウはある倉庫へ行った。そこには真上を向いている大きな大砲のようなものがあり、周りにはいかにも複雑そうな機械が並んでいた。こここそが、アーディンがその短い生涯をかけて作り出した地球を救う装置なのだ。

彼の話によれば、この大きな大砲から放たれるものがあの厚い雲を一層し、太陽光を再び地上に降り注がせるということらしい。ちょうどあの厚い雲の中間地点で爆発し、その爆風を綺麗に地球全体に行き渡らせるにはどうしたものかと苦労したようだ。彼は毎日をこの研究に費やした。ユウにしてみれば、その頭脳をなぜ自分のために使わないのか疑問であった。

アーディンのおかげで地球は再び蘇る。しかし彼は二十年しか生きられないと言う。彼は、自分が救った星の蘇った姿を見ることは無い野田。ユウは言いようの無い怒りを感じていた。

ある日、ついにアーディンは動いた。その日は雨も風も無い、まさに世界が死んでいるような日だった。


「ユウ、僕らの前の研究所があるでしょ?あそこに棺のようなものがあるの覚えてる?」


アーディンは作業をしながら聞いた。


「あぁ。たしか、アーディンが生まれたっていうあの棺だろ?」

「そうそれ。あれをまた使えるようにしたんだ。今度は別の目的で」

「?」

「長生きは赤いボタン、他の星に行くなら青いボタン、それと、出来れば選んで欲しくないけど、生きるのに疲れたなら黄色いボタンを押して。もちろんどれも選ばないっていう選択もあるからね?」


一度もユウを見ないでアーディンは淡々と話した。


「……アーディンと一緒に死ぬ」


ユウはか細い声でそう答えた。それを聞きアーディンは手を休めてユウの方を見やり、


「そしたら今日死ぬことになるよ?」


弱い笑顔でそう言った。ユウは一瞬、彼の言っている意味が理解できなかった。


「今日、死ぬ、って……?」

「そう」

「なんで?」

「……雲を、除くだけじゃあまり意味が無いんだ」


アーディンはまた作業を再開した。


「どういう意味?」


ユウは大分混乱していて動けなかった。今すぐにでもアーディンの傍へ行き、ちゃんと顔を見て話を聞きたいと思ったが、それはとても怖く感じた。


「爆発と同時にある物質を大気中にばら撒くんだ。そうする事でやっと自然のサイクルがまた正常に動き出す。今まではコア一つで頑張って地球を何とか動かしてきた。でもこれからはまた元のように多方面から地球を支えていく」


アーディンはまた手を止めた。そして一つのボタンを押すと、それぞれの機械が音を上げて起動し始めた。


「その必要不可欠な物質が、僕なんだ」


笑顔で振り向き、ユウを見る。ユウは固まっていてピクリとも動かない。いや、動けなかった。そんなユウを見てアーディンはまた弱く笑い、大砲の方へと近づく。


「出来れば、青いボタンも選んで欲しくない。だって、たしかにもう会えないけど、僕は地球の隅々にいることになるから」


アーディンは上着を脱ぎ始めた。ユウはまだ動けないでいる。瞬き一つせず、アーディンを見ているしかできなかった。


「ユウは、人間を嫌っているけど、僕は違うんだ」


階段を上がり、大砲の底への入り口の前に立つアーディン。そこでユウはようやく、声がでた。


「なんで!?理解できない!人間がアーディンに何をもたらした!?あいつらは自分達の尻拭いを君にやらせただけじゃないか!」

「違うよ」

「何が違うんだよ!?」


ゴゴゴゴゴ……


大砲が本格的に動き始めた。アーディンの青く綺麗な髪が乱れる。


「……あのね、僕らは一度、彼らに逆らったんだ」

「え?」


大きな風と機械のような音でアーディンの声を聞き取るのが難しいが、ユウは必死に耳をすました。


「でも、彼らは許してくれた。そして、僕らの力を信じて、僕をまた、生み出したんだ」


アーディンが入り口の扉を開ける。その中には緑色の液体が入っているカプセルが見えた。


「人間は、僕らと地球を信じてくれたから、だから僕も、人間と地球を信じようと思った」

「アーディン!」

「ユウ、さようなら。……ありがとう」


アーディンの姿が大砲の中に消えてまもなく、ユウの前に特殊な壁が作られた。そして間をおかずに、大砲は放たれた。ユウは急いで外へと出て行く。すると一筋の、力強い光が天をめがけて飛んでいくのを見た。それは、抗うかのような、救いを求めるような。光が厚い雲の中に吸収される。すると、光の柱から波打つ形で雲が動き始めた。そして少しずつ、地上に太陽の、命の光が降り注いでいった。それと同時に、緑色に輝く、雪の結晶のようなものも、地上に降り注いだのだった。











記憶と誕生


太真暦 二九四四


「イレギュラー?」

「あぁ。で、俺達みたいのをオリジナルって言って区別してたんだ」


第十一銀河に入って地球に近づいてきた頃、オージアスは地球の話をエドヴァートに聞かせていた。


「へぇ。でも差別とは違うんだろ?」

「もちろん。むしろオリジナルはイレギュラーに対して尊敬の念をもってたからな」


オージアスが話しているのは人間が地球を離れていく少し前に起きたある反乱のことである。


「でもその遺伝子操作で生まれてきたイレギュラー達は、俺達人間であるオリジナルを支配しようとした、ってわけかぁ」


最近宇宙食として新発売されたヌードルを食べながら、エドヴァートは話を進める。


「元々できが違うから大分苦戦したようだ。で、その後はよほどのことが無い限りイレギュラーは生み出されなかった」

「じゃあそのイレギュラー達の反乱には一応勝ったわけなんだ?」

「だから俺やお前がいるんだろ?」


そっか、と気の抜けた顔で頷くエドヴァート。


「しかしよくそんな危険な奴らを生かしてたなぁ。危ないだろ?」

「イレギュラーだって同じ地求人、っていう考えが強かったらしい。人類皆兄妹、ってやつだ」


そんな話をしていると、窓から一つの星が見えてきた。


「あ!オージアス、もしかしてあの星が地球か?」


エドヴァートは食事を中断して窓に張り付いた。その星はほどよく雲がかかっていて、どちらかと言えば、青かった。それを見てオージアスは首をかしげた。たしか地球は厚い雲に覆われていて、ぱっと見は薄黒い星となっていたはず、と。そして念のためコンピューターで地球かどうか調べた。


「なぁなぁ、あれなのか!?俺達の母星って!」

「今調べてるからちょっと待ってろ」


子どもの様にはしゃいでいるエドヴァートを背中に、もし、あの命の息吹を感じる星が地球なら、とオージアスは内心少し焦りながらコンピューターの結果を待った。


「確認、第十一銀河、地球。確認、第十一銀河、地球。確認、第……」


繰り返されるそれを聞き、オージアスはコンピューターの無機質な答えさえ神の声に聞こえた。


「エドヴァート、席に着け!すぐに着陸する!」

「おう!」


二人は操縦室へと走った。




ある日、日向ぼっこをしているユウの耳に騒音が聞こえた。音のするほうへ目をやると、見慣れない物体が空から降ってきた。しかしそれを見たユウは、


「やっと来たか……」


と呟き、ゆったり体を起こしてその物体の方へと近づいていった。ユウが近くまで行くと、ちょうど二人の人間が降りてきた。そしてどうやら二人はユウに気付いたらしい。


「あ!オージアス見てみろよあれ!」

「ん?」


二人の視線の先には、一匹の黒猫が佇んでいた。


「すっげー!あれって猫ってやつだろ?」


エドヴァートは駆け足で近づいていった。そして屈みこんで目を輝かせて黒猫を眺める。


「すっげー!マジすげー!」

「まぁな」

「……え?」


エドヴァートは目を点にした。たしか、彼の記憶によれば猫というのは言葉を話すことはないからである。


「えええぇ!?」


エドヴァートは立ち上がり奇声を発した。それを聞きオージアスが走って来た。


「どうした?」

「どうも。私の名前はユウです。あなた方は?」


オージアスは奇声こそ発しなかったがやはりエドヴァート同様目を点にした。二人が何の反応も示さないのでユウは不思議に思った。


「どうかしましたか?」


ユウの問いかけに、オージアスが戸惑いながらも答える。


「いや何、猫が言葉を喋っているからちょっと驚いてな。俺はオージアス。こっちはエドヴァートだ」

「あぁなるほど。実はある少年に喋れるようになる薬をもらったんです。ところで、もし時間があるようでしたら付いてきてもらえますか?」


ユウは二人の答えを聞く前に歩き始めた。二人は顔を見合わせてから、ユウの後をついて行った。エドヴァートは未だに興奮がさめていない様子で、色々な質問を絶え間なく聞いてくる。


「なぁなぁ、母さんもオージアスも地球は住めないって言ってたけどさ、これなら頑張れば住めるんじゃないか?」


オージアスは深く頷く。


「あぁ。少し前までは厚い雲に覆われていたのにな」


道端には緑も見ることができ、空を見れば眩しい太陽の光が溢れている。ほんの数十年前までは、黒い雨がふりそそぎ、色の無い地球だったというのに、とオージアスは胸に熱いものを感じた。


「ユウ、お前の言っていた少年というのはもしかしてアーディンという少年か?」


ユウはピタッ、と止まって振り返った。


「知ってるんですか?」


やはり、とオージアスはアーディンにあった時のことを思い出した。唯一色を放っていた少年。オージアスが汚いと言ったら、そんな事は言ってはいけないとたしなめられた。


「まぁ、な」


オージアスのその言葉を聞き、ユウの視線は一瞬冷たいものになったが、すぐにまた歩き出した。それを感じ取ったオージアスは何も言わなかった。ユウが何を言わんとしているか察したからだ。つまり、なぜ彼を一人にしたのか、と。


「何々?そのアーディンって奴がどうしたんだ?」


エドヴァートは相変わらずのテンションの高さだ。この質問に答えたのはため息をついたオージアスではなく、二人の前を歩くユウだった。


「彼がある装置を完成させて、地球を覆っていた厚い雲を一掃したんです。さらに、その身を犠牲にして命の種を地上に降らせました」

「その身を犠牲に、ってまさか死んじゃったの?」

「ええ」


ユウはそっけなく答えた。それからしばらく静かに歩いていると、目の前にドーム型の廃墟が見えてきた。中に入ると大きな大砲のようなものが真ん中にポツン、と存在していた。


「ここは?」

「ここが彼の、アーディンの最後の場所です。あの大砲の中に入って、特殊分解され、空へと飛んで行きました」


オージアスとエドヴァートは言葉を失った。そんな二人をよそに、ユウはまた他の場所へと歩き出した。二人は慌ててユウの後を追った。次についた場所はオージアスの見覚えのある建物だった。それはアーディンの住んでいたあのボロボロの古代魚のような建物だった。エドヴァートが口を開けてポカン、と眺めている。


「おい、置いていくぞ」


オージアスの声を聞き、エドヴァートは崩れはしないかと心配しながらも建物の中へと入っていった。


「この建物は空を飛びます。アーディンは地球の色々な所へと足を運びました。彼以外に人間がいるかもしれないという希望を抱いて。しかし結局誰一人として会うことはありませんでした。」


軋む階段を上りながらユウは話し続ける。


「その希望というのはどうやら私と会う前に、一人の人間と会った事があるからのようです」

「それは俺だ」


オージアスは建物の中を懐かしそうに眺めながら呟いた。


「え、じゃあアーディンってずっと地球で暮らしてたわけ?」


なぜオージアスがアーディンという人物を知っているのか、いまいち掴めないエドヴァート。


「いや。俺は地球を離れた後、一度だけ地球に来たんだ。その時に会った」


二階の研究室につき、ユウは散らかったテーブルの上に乗った。


「へぇ。それにしてもそのアーディンってのはすごいな。皆が捨てた地球のために命懸けるなんて」


エドヴァートは若干軽い口調で言い放つ。というのも、彼はオージアスやユウと違って地球というものをまったく知らない。ただ、自分の母星であり、ただそれだけで自分の居場所だと思っているだけなのだ。しかし、このものの言い方にオージアスより先にユウが口を開いた。


「あなたのような人間より、よっぽどアーディンのほうが人間らしかった」

「な、どういう意味だよ?」


ユウの怒気が含まれた言葉にエドヴァートはムッとした。


「ユウ、すまない。コイツは地球で生まれ育ってないんだ。だから……」


オージアスがフォローするが、ユウは聞かない。


「そもそもあなた方が壊したこの星を、なぜあんな幼い少年一人に再生の道を作らせようとしたんですか?彼はずっと一人孤独に耐えながら、それでも人間のため、地球のためにと二十年という決められた寿命を必死に生きたんです。そんな彼に対して、よくもそんな……」

「知らねぇよ!」


エドヴァートがユウの言葉を遮って声を荒げた。これにはオージアスも驚き彼を見ると、いつもの負けん気な顔ではなく、どこかやるせない顔になっていた。


「俺は、今日始めて地球に来たんだ!地球のことなんか、映像と、人づてに聞いた姿でしか知らない!」

「地球、なんか……?」

「ああそうだ。何が悪いんだよ。俺の母星はたしかに地球だ。だけど知らないんだよ!この目で実際見たことも、耳で聞いた事も、肌で感じたことだって、一度だってないんだ!」


一気に話したせいで肩で息をするエドヴァート。途中止めようかと思ったオージアスだが、彼の気持ちを察してそれはやめた。きっと彼は戸惑っているのだろう。誰しもが当たり前のように持っている帰るべき場所、母星。しかしエドヴァートはそれを知らない。ただ漠然と、その存在があるだけで、それゆえに漠然とした不安を感じているのだろう。


「俺は……」


エドヴァートの声のトーンが下がったので、オージアスは彼を一旦外へと出した。


「悪い……」

「何も、悪くは無い」


オージアスはそれだけ言ってまた建物の中へと入っていった。残されたエドヴァートは近くに腰をかけて深呼吸をした。


「……わかんねぇよ」


目の前に広がる、まだ傷跡の残る地球の姿。エドヴァートにとって、それが全てだった。あまりにか細く、弱弱しい全て。地球を知らない自分に、エドヴァートは苛立ちを感じた。何も知らない自分は、はたしてこの地球という人間の母星に受け入れてもらえるのだろうか。そう考えたとき、幼い頃、死体処理場で働かせられたことを思い出した。


「い、やだ……」


決して自分の存在を認めてはくれなかったあの場所。二度と戻りたくないあの時。エドヴァートはしばらく外で太陽の光を浴びながら、顔を俯かせていた。大分たった頃、エドヴァートの前に銀の人が現れた。


「お前!?」

「彼は、アーディンはただひたすら信じたのです。一度しか会う事がなかった人間を、恵みをもたらさない地球さえも」

「……何が、言いたい?」

「見えないものを信じ、さらに信じ続けるというのはとても恐ろしい事です。それは見返りを求めない自己犠牲ですから。信じ続けた先は、何も無いどころか、拒絶がまっているかもしれません」

「……」

「でも、アーディンはただ純粋に、信じて疑いませんでした」

「俺には、出来ない……」

「恐れる事はありません。地球は、誰も拒絶などしません。そして、信じた分だけ恵みをもたらしてくれます」


銀の人はまた、静かに消えていった。エドヴァートはしばらくの間、少しだけ彩を見せる地球の景色を感じていた。





オージアスはユウのところへとすぐに戻っていった。ユウは同じ場所にいて動いていなかった。


「すまない」

「いえ。私も感情的になりました」


オージアスは部屋を見渡す。相変わらずの散らかった部屋である。前に来た時となんら変わってはいなかった。


「アーディンに、なぜここにいるんだ、と聞いた」

「……」

「そしたら、信じて頼られた、と言っていた」


そして頑張る、と笑顔で言っていたアーディンの姿をオージアスは思い出した。曇りの無い笑顔。信じて疑わないあの声。


「俺は、地球を信じる事も、頼る事もできなかった。捨てたんだ。裏切りと一緒だ。そんな俺が、今更母星に何ができる?」


オージアスは自嘲気味に話す。彼もアーディンのような勇気があったなら、例え一人だろうと地球に残っただろう。しかし彼には出来なかった。


「……あなたが決めればいい」

「?」


ユウを見ると、こちらを真っ直ぐ見ていた。


「私は、自分で自分の役目を作った。だから、あなたも勝手に自分に出来るであろう事を、役目としたらいい」

「そう、か……お前の役目とは、何だ?」

「彼の存在を、伝えることです」


ユウは揺るがない眼差しでそう言った。それを聞いたオージアスは、少しばかり考えこんでから、こう言った。


「じゃあ俺はお前の手足となってその役目を手伝う」

「?」


彼はユウの前にひざまずいた。


「もし、おま、いや。あなたが許してくれるのなら、俺を手足として使ってください」


こいつは正気か?とユウは訝しく思った。あの人間が、たかが猫にひざまずき、自分を使えと言っている。


「本気ですか?」

「男に二言は無い」


ユウは心底人間の不思議さを感じた。


「……そこの机の上にある封筒をあけてください」


ユウは目線だけを送りそこを示した。見るとその机だけは妙に整えられていて、綺麗に重なった机の上に、一枚の白い封筒があるのがわかる。


「あなたが、私の役目のスタートです。そして、知力も体力も劣る私をこれから先、この命が許すまで支えてください」

「謹んで承ります」


オージアスは封筒を手にまた頭を下げ、中に入っていた便箋を読み始めた。


「  人へ

僕らを信じてくれてありがとう。頼ってくれてありがとう。僕に出来る、最大限の恩返しを、罪滅ぼしをしました。こんな僕が、願いを持つというのはたいがい外道である事は重々承知の上で、それでもあなた方の恩恵に甘えて願います。どうかこの有限無き闇の端々へ散らばった全ての地球人が、地球という唯一無二の彼らの母星へ、希望と謙遜と共に帰し、母星と兄妹と共に省みて、和と信を持って歩んでください。

僕という存在は忘れられても一向に構いません。けれど僕らの存在は忘れないで下さい。僕の記憶は、たとえ直接の接点がなくても僕らは共有できるものです。だから僕らは二度と思い上がったりはしません。

どうか地球に生まれた命が、この星に生まれた事を魂の喜びとして感じてくれますように。

             人より  」





太真暦 三〇〇〇年


第十一銀河、中枢星・セセトアイで全銀河主要中枢星会議が行われていた。なんの詰まりもなく会議は終了を迎えようとしていたが、綺麗にひげを生やした初老の人間が会議に入ってきた。


「一つ、よろしいでしょうか?」

「星を持たぬあなたが、一体何について発言するんですか?」


大きな会議室からクスクス、と笑い声が聞こえる。しかし言われた当人はまったく気にしていない様子で話し始めた。


「我々の母星であった地球が、今年度をもって全銀河生活可能最低水準法が定める一〇一の項目をクリアしました。さらに、全銀河の認定する国星基準も全てクリアしました。詳しくは今送っているデータをご覧下さい」


各主要中枢星の代表者達のコンピューター画面に、現在の地球の状況が細かくデータで示された。


「なんと……」


いつの間にか笑い声は消え、驚きの声が会議室を覆った。


「このデータは本当か?」

「全二十一銀河のトップが集るこの大事な会議に嘘偽りを発表するなんて事は私には出来ません」


データは現在進行形で画面に映されていた。空気中、水中、地中の成分の割合や動植物の種類の有無とその数、そしてどれだけの人間が数分毎に地球に戻ってきているという事実。


「以上の事を踏まえ、地球にまた国星としての認定を頂きたく存じます」


深々と頭を下げて、その人間は凛と言い放った。

会議室を出た広い廊下で、老人とあまり若くない男が早足で歩いていた。


「俺の出番は無かったですね〜」

「それに越したことは無い。それともお前は乱闘の末の地球否認を望んでいたのか?」

「まさか!そんなの絶対嫌ですよ!」


男は慌てて首を横に振った。その男の慌てように、先程会議室で言葉を発していた老人が柔らかく笑った。


「エドヴァート、これからまだまだやらなければならない事が山ほどある。途中邪魔をする輩ももちろんいるだろう。しばらくワシの護衛をしてもらえるか?」

「もちろん!それが俺の地球への恩返しですから」


エドヴァートは力強くそう答えた。


「はは、やはり彼らを信じて正解だったな」

「?」


老人の言う彼らとは一体誰なのかエドヴァートにはわからなかった。


「ところでエドヴァート、首国を新しくするんだが知っていたかね?」

「そうなんですか?」


それは初耳であった。以前、まだ人が地球を離れる前は首国はインドであった。


「あぁ、場所はあの大砲とボロ屋敷のあった、昔でいうエジプトの場所だ。首都名は……」

「元首!次の会議がすぐに始まってしまいます!お急ぎ下さい!」


それまで早足だったが、この声を聞き二人は小走りになった。ようやく船につき、元首と呼ばれた老人は息を切らせている。


「まったく、あと何年生きれば楽が出来るのやら」


そうは言っているが、老人の顔は嬉しそうだった。


「そうそう、首国名だが、アーディンというのはどうか?まだ誰にも言っていないのだが……?」


老人は秘め事のように言った。それを聞き、エドヴァートは破顔した。

地球の元首を乗せた船は大きな音を上げて、次の目的地へと飛び立った。







エピローグ


「ふぅ。まったく本当に、いつまで働かせるつもりだ?銀の人よ」

「あなたの役目が終わるまでかと」

「それは一体誰が決める?」

「天が決めます」

「そんな抽象的な事を言うとは、君らしくない」

「そんなことはありません。はるか昔、天の意は民の意でした」

「……たしかに。ところで銀の人よ。それほどの、まさに全知全能とも言えるその力を持っているのに、なぜ君が地球を治めようとしない?」

「それは私の役目ではありません」

「冗談は言うな」

「子は親に従うものです」

「だがこうも言う。老いては子に従え、とな」

「なるほど」

「どうだ?」

「……やはり我々はあなた方には敵わない」

「謙虚な事だ。なに、望まないのなら望まれているワシが成すまでだ」

「ありがとうございます」






―人へ

我々を許してくれてありがとうございます。我々を生んでくれてありがとうございます。

どうぞその恩恵を、今度は子である我々ではなく、母なる地球にお与え下さい。

我々がこんなことを望むのは、甚だ身の程知らずとは存じ上げますが、それでもあなた方の慈愛に甘え、願います。

どうか我々が、再びあなた方と共に歩めますように。

           イレギュラーより―










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― 新着の感想 ―
[一言] 感動を頂きました。初めの少年と猫のシーンに魅せられて、一気に最後まで読みました。二度も泣いてしまいました。地球を再生していく部分が読みたかったです。短編では勿体無いと思いました。執筆頑張って…
[一言] 17ページという長い作品でしたが、すらすらと読むことが出来ました。細かい設定を分かりやすく文章に表した分、ページ数が多くなったのかなと思いましたが、苦もなくところどころの状況を把握出来てよか…
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