蝉の声
ミーンミンミンミンミン...。
外から蝉の声がする。
これが、人生最後の祭りであるかのように。
うだるような暑さが毎日続く。
あぁ...、暑い。
肌を搔きむしりながら、もがく男。
外は燦燦と輝く太陽とどこまでも突き抜けていきそうな青空が広がる。
眩しさに目をまともに開けていられない。
歩くたびに、汗が顔面から滴り落ちる。
「なんでこんな日に外回りなんかしなきゃならないんだ...。」
「熱中症で倒れたら会社はどう責任とるんだよ...ったく。」
外は人もまばら。
40℃を超える酷暑日。
...だからこそ、誰もまともに営業なんかしてない。
今がチャンス!とか言う上司。
「ちっ、クソが...。」
ミーンミンミンミンミン...。
蝉の声がする。
「うるせーな!」
蝉に文句を言っても始まらない。
それは分かっているが、どうしようもない怒りだけがフツフツと湧き上がる。
「もう、いい。帰る。上司はエアコンの効いた会社にいるんだし、俺だけ外で仕事なんてやってられるか!」
そう呟き、家路に急ぐ。
エアコンが入っていない部屋は蒸し風呂状態。
スイッチを入れるも動かない。
「こ、故障だ...と...。」
倒れこむ男。
ミーンミンミンミンミン...。
どこかで蝉の声がする。
暑い、暑い、暑い。
あまりの暑さに混じり、強烈な痒みに襲われる男。
体を掻きむしり、ふとぼんやりと考える。
「このまま、脱皮できないかな...。」
重い肉と皮を脱ぎ去れば、体も軽く涼しくなれる。
空だって飛べるはず。
あぁ...。
ビリビリビリッッ!
どこかで何かが裂ける音がした。
頭が痛い、割れるように痛い。
慌てて鏡を見る男。
額にヒビが入りほんの少し、中身が見えていた。
あぁ...!?
何かが俺の中から出ようとしている。
中の目が動いた気がした。
ミーンミンミンミンミン...。
口の中から蝉の声が響いた。




