埒外の嫉妬
嫉妬。悋気、それは自分ごとに考えるから生まれる感情。でも、それが身分不相応ならばどうだろうか。私はそれを知っている。私のことだからだ。
あの人を見たのは、偶然だった。ただ、突然目線がそちらへ向いて、ただ目に留まった。平たく言うと、ひとめぼれだった。でも、それ以上のことはなにもしていない。声も掛けていなければ、名前だって知らないのだ。私達は、私があの日、勝手に惚れた以上のことはなにもない関係なのだ。だから、もう一度言う。これは、分不相応の悋気で、私はそもそも嫉妬などしていい関係の埒外にいる存在なのだと。
ああ羨ましい、羨ましい。私は気づかれてもおかしくないほどの熱視線を送る。それは毒々しくて、鋭くて、誰かを傷つける気しか含まれていない。とても人に向けていいものではない。ましてや、恋心を抱いた相手などもっての外だった。
そこにいるのが、私であったらよかったのに。でも、私とあの人は隣を歩けるものじゃない。そもそも私が認めない。私は似つかわしくなどないのだ。詰まるところ、私はなにもできない。それでも、とまらないのだ。だって、目を奪われたから。ずっと、見かける度に目で追っていたから。だって、恋だったから。
とても、身勝手なものだ。だが、恋とはそういうものだ。自分の理想が通って欲しいと貫くものだ。この恋が実らなかったのは、偏に私の行動不足と言えるのかもしれない。愛していたのなら、動くべきだったのか。それはもう遅いのだ。あの人はもう、私が恋をしていた頃のあの人ではなくなったのだ。ああ、羨ましい。そのバッグを持つのも、新しいピアスを褒めるのも私でありたかったのに。
ああ、嫉ましい。ああ……と嘆く私は少しずつ、少しずつ我を忘れていく。目的も、好きだった理由も何もかもが変容していった。もうそれは見つけてしまったときとは、全くもって違う。別物へとなっている。もう全てはわからない。愛していたのかも。なにがそれほど心を縛ったのかも。どうなりたかった、どうありたかった、どうしたかったのか、そのそれぞれも……。残ったそれは醜く、大切だったものを抱きしめようと踠くだけなのだった。
愛していたはずなのに!!流れる涙は、美しいのか、はたまた泥のようなのか。果たしてどう思って欲しいと生まれてたのか。落涙もきっと悲しみを自身から溢れ落としているのだろう。




