第4話 賢者、謁見する
帝国暦1400年8月
―謁見の少し前―
「アイ、恐らく私は国王の軍に襲われる。もしも私が襲われたら私の後ろにいておけ。」
「アオイ様、何を仰っているのですか。そんな襲われる理由があるって言うんですか。」
「あぁ、あるぞ。実はな…だから覚悟しておけよ。」
「了解しました。」
―レイヌ帝国 レイヌ城―
「王よ、古代の魔女が謁見を求めております。いかがいたしましょう。」
「何、それは真か。」
「はい真でございます。」
「そうかそうか。あの女が来たか。うむ、玉座の間に通せ。後、例の件も用意しておけ」
「了解いたしました!」
―30分後―
私はレイヌ城の玉座の間に来ていた。左右には官僚や近衛兵達が並んでいる。そして一番奥に座っている、あの立派な髭を蓄え、いかにも悪そうな事を考えているであろうあの男が、大陸最大の国であるレイヌ帝国の現国王、チャーリー九世である。この男は執念深い男で幾度となく私に求婚してきては断られている。私のどこがそんなに良いのかと聞いたら、私の白銀の髪といつまでも若い顔、そしてこの魔法が彼にとっては相当魅力的だ。と言っていた。きっとそうなんだろう。私をそこまで愛してるいる気持ちを断るのは心が痛かったがそれでも、幾度となく断っており、四度断った位から正攻法で無理なら私をさらい、無理矢理自分の女にしてやろうと刺客を出してくるようになった。その度に私はその刺客を撃退したければならず、大変迷惑である。
私がこの城に行きたくなかった理由はこの男にある。しかし、一応これでも国王であるからそれなりの態度をしなければならない。まったく、面倒くさい男だ…。
そんな事を考えているうちに私はチャーリー九世の前まで来ていた。
「本日はお目通りが叶い光栄でございます。国王、チャーリー九世」
「うむ、そなたはあの時と一切変わっておらんな。あの時と同じようにきれいじゃ。わしの女にしたいくらいにな。」
ニヤニヤしている国王に吐き気を覚え、これが国王でなければ今すぐにも叩き斬っているのに、と思いながらも「王にそのようなお褒めのお言葉をいただきありがたき幸せでございます。」と言った。
「して、本日の要件は何じゃ。そのエルフに関わることか。」
王がアイを指さす。
「はい、おっしゃる通りでございます。王はエルベニア大公国の様子をご存知ですよね。」
「あぁ、前女王が死に国は第一王女派と第二王女派で分裂。その後、第一王女派が戦いを有利に進め、第二王女派は降伏寸前。明日にも降伏しそうな勢いじゃ。」
何やら殺気を感じる…。
「さすが国王です。そこまで知っているとは驚きました。このエルフは此度の戦争で両親を失い、難民として彷徨っていたところを私が保護し、弟子にいたしました。私は、この弟子の修行のために旅に出たいと思っております。どうか、国王には私が旅に出ることを認めて頂きたいのです。」
この殺気は…。
「了解した。認めよう。」
「ありがとうございます。王よ、恐れながら一つだけ質問しても宜しいでしょうか。」
「何じゃ。」
「この玉座の間の周りから、55程の殺気を感じます。これは王の指示を受けた部隊の者でしょうか。」
「いや、我が愛するそなたを殺す指示を出すわけがなかろう。」
少し動揺している。黒だな。少し、脅してみるか…。
「では、殺してしまっても構わないでしょうか。」
やはり動揺している。いい気味だ。
「気絶させるまでなら許す。」
「では、少し失礼いたします。アイ、下がっておけ。」
ドーン
玉座の間の扉が開けられる。
「覚悟…」
その言葉を言い終わる前に奴らの目の前には大量の雪(石入り)が現れ、放たれる。
「ギャー」悲鳴だけが玉座の間に響き渡る。あっという間に敵は全滅した。
「アオイ様、先ほどの魔法は一体何なのでしょうか」
アイが不思議そうな顔で聞いてきた。
「あぁ、これか。これはスノーヴァイトと言って私が得意な水属性魔法のスノーシュートを改造したものでスノーシュートはただの雪玉を数発飛ばす程度の魔法だが、私のスノーヴァイトは大量の石入り雪玉を敵に向けて飛ばす。要はスノーシュートの何倍も攻撃力と継続力がある魔法、という訳だ。」
言い終わると王のほうを向き「さて、王を狙う無礼者の賊は全滅したので私達は帰らせて頂きます。失礼します。」
そう言い残し私達は王に一礼し、足早に城を出た。旅の許可は得たのだ。願わくばチャーリー九世にはもう二度と会いたくない。




