第2話 賢者、名を名乗る
帝国暦1400年3月
―古代の魔女の家―
私は目の前にいるアイに言った。
「さて、今からお前は私の弟子だ。まずは相手の事を知ることが大切だ。アイ、私について何か聞きたいことはあるか?」
「それなら1つ気になっていたことがあります。賢者様の本名って何なんですか。ここに来る前に町で聞き込んだんですけど、皆知らないの一点張りで分からなかったんですよ。きっと、私をよそ者扱いして適当にあしらっていたんですよ。本当に有り得ない。とにかく、弟子なら師匠の名前くらい知っていなければいけません。賢者様、教えてください!」と興奮ぎみに詰め寄ってきたアイに私は「私の名前くらい教えてやるから少し落ち着け」と言った。「すいません」と顔を赤らめるアイに「取りあえず訂正しておくが町の者は私の名前を恐らく知らない。」と言ったするとアイは驚いた顔をして「なぜですか」と聞いてきた。私は「フフフ」と自虐的に笑った後「それはな私が20年前に起きた"ある事"をきっかけに私は町にほとんど行っていないからだ。ついでに国の式典にもほとんど出席していない。つまり、私はここ20年間は人里に姿を現していない。そりゃ、皆私の名前を忘れるよな。」と言うと「そうだったんですか。町の皆は本当に賢者様の名前を知らなかったんですか。それは町の皆さんに失礼なことを言ってしまいました。」と自らの無知を知り落ち込むアイに「まぁ、この事をエルフのお前が知っているわけもないし、そういう風に思っても仕方ない。元といえばずっと引きこもっていた私が悪いんだ。お前は悪くない。」と慰めてあげた。
「ありがとうございます」
何処か納得していないアイが言う。
場の空気が重くなっていることに気づいた私は本題に切り出した。
「それは一旦置いといて、本題に入ろう。私の本名だろ。私の本名はアオイ。シジョウ・アオイ(四条葵)だ。」と言うと今まで落ち込んでいたアイの表情が明るくなり、通常のアイの表情に戻った。
「シジョウ・アオイ。それが賢者様の本名なんですね。じゃあ今日からアオイ様って呼んでも良いですか。」と元気よく言うアイに
「それは…、少し恥ずかしいが、アイがその名で言いたいのであれば勝手にしろ。」と照れた。
「フ〜、照れてるところ可愛い」
茶化してくるアイに「うるさい!それで、質問はそれで終わりか。」ともっと照れ恥ずかしそうに言った。
「もう1つだけ質問良いですかアオイ様」
真面目な顔に戻ったアイが言う。
「何だ」とまだ、恥ずかしさが抜けていない表情で言うと「アオイ様の適正魔法って何ですか。」と聞いてきた。
ここで少しこの世界の魔法(魔術)について説明しておこう!まず、この世界には適正魔法というものがある。これは、世界の基本魔術(火・水・風・土)4つと光と闇、それから極稀に持っている人がいるユニークスキルのとを言う。この中から基本的に1つだけ適正魔法があり、適正魔法以外の魔法は使えないのがこの世界の常識である。
「私の適正魔法は全てだよ。厳密にはユニークスキルと水が適正魔法になるんだけど、私にとっての適正魔法は詠唱がいらなくて少し使いやすい程度の物だから、普段、あまり気にしないな」
アイの表情が変わる。
「あの〜、お話中、失礼するんですけど一応確認しておきますが、全ての魔法が使えるのは異常ですよね。それも詠唱なしで。」
「あぁ、異常だね。おそらく世界でも私だけだと思うよ」
「ですよね。ちなみに詠唱がいらないというのはどういうことなのでしょうか。」
「そのままの意味で、普段使う魔法程度であれば詠唱なしでいける。それこそ古代魔法レベルになると少しの詠唱は必要だけどね。」
「古代魔法!?古代魔法ってあのおとぎ話で英雄が使う、あの古代魔法ですか!本当に存在したんですか!」
「あぁ、存在するよ。けど、古代魔法は消費する魔術量が桁違いに多く、非常に複雑だから精霊への捧げ物が必要。それが詠唱という訳なんだけど…、君もいつかは使えるようになるよ。きっと。」
アイのの表情が何を馬鹿な事を。とでも思っていそうな顔に変わった。
「いや、私には古代魔法は無理ですよ。そもそも、私、今まで魔法使ったことないし。」
「つまり自分の適正魔法が分からないという訳だね。それじゃあ、明日は教会に行って適正魔法を調べようか。そのために今日はもう寝な。」
ベッドの中に入ったアイが質問を投げてきた。
「寝る前に一つ質問をします。アオイ様は私の適正魔法が分からないんですか?」
「ある程度は分かるけどしっかりと断言できるほどじゃないからね。さて、話がそれだけだったら、今日は明日に向けてしっかりと睡眠をするべきさ。私のベットを使って良いよ。」
「アオイ様はどこで寝るんですか?」
「そもそも今日は地下室で研究に没頭する予定だったし…」
「だめですよ。そんなの健康に悪い。アオイ様も一緒に寝るんです。さあ早くこちらへ来てください。」
「いや、マジで要らないんだけど」
「だめです。一緒に寝るんです。」
そう言い、アイは私を、無理矢理布団に連れ込んだ。
この先にどのような未来が待っているのだろうか…。
私は不安な気持ちでいっぱいになった。
とある本の一節
古代魔法…謎多き魔法。英雄記によると遥か昔、勇者が魔王を倒した時に使用したという。しかし、勇者が悪用されるのを恐れ誰にも教えなかったため、現在では幻の魔法と言われる。英雄記自体、信憑性のない創作物である可能性が高いため、そもそも存在しないという説が濃厚。




