第18話 最愛の義妹
帝国暦1400年2月
―フランティア王国首都パリース―
「アオイ様、見てください、あれがノトールダム大聖堂ですよ。おっきいですね。」
新たな地に来たことに興奮しているアイが目を輝かせながらあちこちを忙しなく見ている。
「アイ、前を見ろ。今から行くのはあそこだ。」
私が指した先にある物。
それはノトール大聖堂が2つ分は入るであろう大きさの屋敷とその裏にある屋敷よりも大きな庭。
「うわ〜、おっきいお屋敷ですね。あそこにアオイ様の妹さんがいるんですか?」
未だに興奮しているアイが聞いてくる。
「…多分な。」
私は自分でも驚くくらいの笑顔で言った。その後その屋敷の前まで来た私はその屋敷の門番らしき男に話しかける。
「失礼。この屋敷の主は王女殿下で間違いないですか?」
「間違いないですよ。この屋敷の主は王女殿下です。」
その返答に安心した。
「では王女殿下に少し話をしたいという女がいると伝えてくれないか」
「それは無理なお願いだ。」
私の表情が険しくなりその門番に聞く。
「どうして無理なんだ。王女殿下に伝えるくらいやってくれても良いだろう」
「お前のような弱そうな娘に会う程、王女殿下は暇ではない。大人しく帰れ。」
そのうちに両者一歩も引かない言い争いになった。10分位経った頃騒ぎを聞きつけ何事かと王女殿下が現れた。そして私の顔を見てひどく驚いた。
「…お姉様!?どうしてここにいるんですか?」その一言で周りから驚きの声が出る。
「あれが王女殿下の姉?」
「ほんとかよ。うちの娘よりも若そうなのに。」
ザワザワザワ。
その中でも特に驚いていたのは私と言い争そっていた門番だった。
その驚きの顔は驚きから恐怖へと変わる。
そして勢い良く「すいませんでした!王女殿下の姉君だとは知らず無礼な事の数々を言ってしまいました。どうかこの命だけはお救いください。」と土下座した。
それはもう感心するくらいにきれいな土下座を。
「元々は私が無断でシズクに会いに来たのが問題だった。つまり、君は悪くないし、謝る必要なんてない。君はただ職務を全うしていただげだ。今回の件は全て私が悪いんだ。分かったら顔をあげてくれ。」
笑顔で言う。
「ありがとうございます。」
元の体勢に戻った。
「それはそうとして、シズク〜〜。お姉ちゃんシズネに会いたかったよ」
私は最愛の妹に飛びかかった。
「お姉様、離れてください。国民達が見ています。」
顔を赤らめ恥ずかしそうに私から逃げようとするシズク。
「そんな事言ってもシズクに会うの300年ぶりなんだもん。多少は我慢してよね。」
私は言い更にシズクへの力を強めた。
「お姉様、痛いです。」
それでも放そうとしない私に「あぁ〜。このままだとお姉様の事、嫌いになっちゃうかもな〜」とまるで子どもに言い聞かせるかのようにシズクは言った。
私は急いで今までシズクを抱きしめていた手を放した。
「ごめんシズク。どうか私を嫌いにならないで。」
「分かれば良いんです。お姉様。」
満足気な表情をしたシズクは「ゴホン。それではお姉様要件について屋敷の中で聞きましょう。」と私達を屋敷に案内してくれた。
屋敷の中の応接室に通された私達はそこにあったソファーに座った。
紅茶少し飲んだシズクが聞いてくる。
「それではお姉様、早速ですが本題に入りましょう。お姉様なら王女である私に会う事のリスクが分かっているはずです。現に300年間は私に会っていません。それなのにわざわざリスクを負ってまで私に会いにきた理由は何ですか?」
真面目な表情で聞いてくる。
「始めに言っておくが私はお前を疑っている訳ではない。ただ何か知っている事があれば私に教えて欲しいだけだ。」
「知っていること?」
不思議そうな顔を浮かべている。
「私の家にある本が1冊、何者かに盗まれた。そこには微少だが魔力の乱れがあった。お前も知っていると思うが魔力の乱れを生み出すには相当強い魔法を使わなければならない。そんな強い魔法を使えるのは、私が知る限り私とお前しかいない。」
「国家機密を誰かに教えるなんて事は私の王女としての信念、プライドに関わりますのでここからは私の独り言です。良いですね。」
「あぁ、分かった。」
シズクはコクンと顔を縦に振り話を続ける。私にとって予想を大きく超える話を。




