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憧れの勇者になりたくて~最強魔王、人間に転生する~  作者: small wolf


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第15話『乱入者』


 アリデルの娘、リルが泣き止んでから。

 僕とリディムは、アリデルにこれまでの経緯を説明した。


「ふうむ。なるほどのう。それでダリウス様……いや、今はセルム様と呼ぶべきか?」


「いや、今の僕はただの人間だから普通にセルムでいいよ」


「それは……まぁ、よいか。了解じゃ。

 つまり、セルムはわらわを封じ込めていた封呪核を奪取しに来たのか」


「そういうことになるね。

 しかし……どうしたものかな。

 封印から解放されたアリデルはやっぱりアレかな? 復讐の為、人間どもを皆殺しにするつもりなのかな?」


 そうされるとアリア・レイフォードはきっと困るだろう。

 彼女に借りがある僕としては、あまり彼女を困らせたくない。

 しかし、今さらアリデル達を殺すのもなんかあんまり気が進まないなぁ。


 などと思っていると。



「む? 何を勘違いしているのだセルムよ。別にわらわは人間を皆殺しにするつもりなどないぞ?」


「え、そうなの?」


「うむ。わらわは封印された魔族と、特区で非道な扱いを受けている魔族達を解放したいだけじゃ。

 黒鱗会の魔族達も、その延長におる者達なのよ。そうであろう?」


「は、はい……」


 黒鱗会の魔族達は、まだ警戒を解ききれない様子でうなずいた。

 って待て待て。


「え? 魔族が北の魔族特区っていうところで管理されているっていうのは聞いたけど……非道な扱いを受けているってどういう事?」


「む? あぁ、そうか。セルムは知らぬのか。確かに、人間達の中でもごく一部しか知らぬ事柄であるしのう。よかろう。現状の魔族達について教えようか」


 アリデルは軽く腕を組み、記憶をたどるように視線を遠くへ向ける。


「魔王の敗北後、魔族達は元々の居住地であった最北の地を"魔族特区"として囲い込まれ、そこから出ることを禁じられた。

 名目上は管理、実態は勇者の監視下での隔離じゃ。

 その先の事は……詳しくはわらわも知らぬ。なにせ危険な力を持っているとの事で今まで封印されておったからの」


 そこで、アリデルは黒鱗会の方へ視線を向けた。


「それより後のことは、貴殿らの方が詳しかろう」


「……はい」


 一歩前に出た、黒鱗会の代表らしき魔族が口を開く。



「特区では、我らは労働を課されました。

 逆らえば罰。逃げれば討伐対象。

 やがて、耐えきれずに逃げ出す者が現れ……我らは、そうした逃亡者同士で集まった者達です」


「それが黒鱗会というわけか」


「はい」


 重々しくうなずく黒鱗会の代表の人。

 それ以外の魔族達も、暗い顔をしている。

 そんな彼らの境遇を聞いて僕は——


「へー。今の魔族ってそんなことになってるんだ。なんというか…………大変だね?」


 言葉通り、大変そうだなあ、と思った。

 そんな素直な言葉を口にしたのに。


「誰のせいじゃと思っとるかこんの馬鹿魔王がああああああああっ!!」


「ひでぶっ!?」


「ま、マスター!?」


 思いっきり殴られた。

 なぜに?


「全てが全てとは言わんが、こうなったのはセルムッ! 貴様のせいなのじゃぞ!?」


「え? なんで? だって、僕の死後の話でしょ? 僕は関係なくない?」


阿呆あほうかっ!! お主が何度も何度も勇者に対して『貴様らの敗北後、家族も後を追わせてやるー』だの『貴様らの敗北後、見せしめに人間の町をいくつか焼き払ってやろうー』だの言うから余計に魔族のイメージが悪くなったんじゃろうがっ!!」


「えー。でも、実行に移したことなかったし……」


「貴様自身はなっ!! だが、かつて貴様の言葉を本気にした魔王派が何度もその脅しを現実のものとしてくれたんじゃよっ!!」


「え、そうなの?」


「そうじゃよっ! だというのに貴様は勇者との戦いが楽しいだと人間は素晴らしいだのと言うてばかりで部下のコントロールは我らに丸投げ。

 当然、我らだけで当時の問題児だらけの魔族達をコントロールしきれるわけもなく、多くの者が人間を家畜にしたり面白半分に人間の町に攻め入ったりして……。

 そうした事が重なったからこそ魔族の敗北後、こんなにも魔族の待遇が悪くなったんじゃろうがー-----!!」


 あー、それは悪かった。

 確かに僕は、部下のコントロールなんてしてなかったね。


「うーん……どうしようか」


 さすがに、少し責任を感じてしまう。

 今の僕は人間だし、『知ーらない』で逃げることもできる。

 でも……それをやったら、さすがにダメだよなぁ。


 とはいえ、僕の人間としての寿命はとても短い。

 そんな中で寄り道をするのはなぁ……。

 勇者になりたいっていう目的も、できれば諦めたくないし……。


 そうだ!


「よし。じゃあ僕は勇者学園に行くつもりだから、そこで魔族の扱いを少しでもマシにしてみせるよ。

 あと、自分の目で、本当にそんな状況になってるのか確かめたいっていうのもあるからね」


 僕がそんな、自分の願望交じりの対処法を口にすると。


「……ふむ」


 アリデルは短く息を吐いた。


「よかろう。もともと、セルムに頼る気などない。

 貴様は昔から、やりたいようにしかやらぬ主であったからのう……」


「いやあ。それほどでも」


「褒めとらんわ!」


 ぴしゃりと切り捨てられる。


「ともかく、貴様は好きに動くがいい。我らも我らで動かせてもらう」


「そうかい」


 そう答えて、僕は一息ついた。

 これで話はまとまった——と思ったのだが。


「ですが、マスター」


 控えていたリディムが、ふと疑問を口にする。


「封呪核の奪取については、どうします?

 このままアリデルを逃がしたと報告すれば、厄介なことになるのでは?」


「ああ、そうだった」


 完全に失念していた。


「……どうしよう?」


「む? それは、わらわも困るのう。わらわレベルの魔族が自由にしておると人間側に知られると幾人もの勇者が出張ってくるであろうしな……」


 アリデルは少し考え込んだ後、あっさりと言った。


「よし。ならば、わらわを封印から解き放った後――退治した、ということにしてはどうじゃ?」


「お、いいね。そうすれば僕も胸を張って帰れる」


「ですが、口で言ってもおそらくあの小娘は当然のこと、他の者も信じないでしょう」


「そっかー。それじゃあどうしよう?」


 僕が肩をすくめ、リディムも小さく首を傾げた、その時だった。


「それなら、私が」


 黒鱗会の魔族の一人が、一歩前に出る。


「死体の偽装には慣れています。

 我々は逃亡の際、何度も討伐されたように見せかけてきましたから。

 ……まず、ばれません」


「そうかい。それは助かるよ」


 その後、細かな取り決めをいくつか確認し。

 これ以上話すべきこともなくなったところで、アリデルが静かに口を開いた。


「では、ここでお別れじゃな。セルムよ。

 また会えることを祈っておるぞ」


「アリデルもね」


 僕は軽く手を振り、それから思い出したように付け加える。


「ああ、そうだ。

 人間には、あまり危害を加えないでくれよ?

 僕、一応勇者を目指してる身だからさ。

 下手すると、アリデルと戦うことになるかもしれないし」


「無論じゃ」


 アリデルは即座にうなずいた。


「人間を刺激したくないのは、わらわも同じ。

 勇者に襲われでもせぬ限り、手は出さぬよ」


 ――そのときだった。


「——人間を刺激したくない? なに言ってるの? ……ふざけるのも大概にしなさいよ」


 背後から、聞き覚えのある声がした。

 冷たく、張り詰めた声。


 慌てて振り返ると、そこにはアリアが立っていた。


「——あれ、アリア?」


 一体、いつの間に?


 索敵魔術を使った時には、反応はなかったはずなのに……。


「さっきから黙って聞いていれば……」


 アリアは、強く拳を握りしめている。


「魔族特区で魔族が非道な扱いを受けている?

 自分たちは人間を傷つける気がない?」


 その瞳が、僕たちを射抜く。


「なによ、それ……。

 そんなのまるで……まるで……私たち人間が悪者みたいじゃないっ!!」



 そんなこと、認められない。認められるわけがない——

 そう言いたげなアリアの怒声が、その場の空気を凍りつかせた。




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