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21 勝敗


「対戦モードとかあるのか」


 デュエルの申請画面を見ながら、俺はふーんと鼻を鳴らした。


「そうね。評価ポイントを賭けられるから、ポイントデュエルとか言われているわね」


 ルネはくだらないという口調でこう続ける。


「ポイントに限らず、両者の同意の下でなら、なんでも賭けられるわ。相手に約束を履行させることもできるわね」


 じゃあ、俺が勝ったら結婚してくれ、とかもアリなのか。


「逃げねえよな?」


 レンジが片眉を上げてあおってくる。

 そんな安い挑発に乗るほど俺は子供ではない。

 とはいえ、女子の前だ。

 見栄もある。

 簡単に引き下がるのもな……。

 ゲーマーとしてもPvPは燃える展開だ。

 そもそも、こいつは織田に似ている。

 なんかこう、一発殴ってやりたくて仕方がない。

 受けてやってもいい。

 勝てるなら、だが。


「ルネ、あいつの情報をくれ」


「あいつ、本名はチンナルっていうのよ。チンと鳴るから、みんなレンジって呼んでるわ。ただのアホよ」


 どうでもいい情報をありがとな。

 俺は【はい】をタッチして、対戦申請を受諾した。

 俺とレンジを中心に光の檻ができた。

 土俵リングってところか。

 町を行き交う天使たちが面白がって足を止める。

 喧嘩が華になるのは江戸も天界も同じらしい。


「ユーシン、てめえ漢だな。このオレの挑戦を受けるなんてよ。フェルネが惚れちまうのも納得だぜ」


 レンジは指をバキバキさせてからニカッと笑った。


「賭け金はどうするよ? オレは全額ベッドするぜ。お前も漢ならどんと張れよ」


◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━


 【チンナルが13ptをベッドしました】


━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇


「いや、そこはルネを賭けろよ。つか、お前の持ち金13ptかよ」


 漫画1冊とボールペン1本分だ。

 求婚するなら貯金くらいしておけ。


 俺も満額を投じた。

 カン、とゴングが鳴る。

 決闘開始だ。


 レンジは仕掛けてこなかった。

 後ろ体重でニヤついている。


「オレがスキルを使っちまったら勝負になんねえからな。拳だけでいくぜ? お前は装備もスキルも好きにしな。着替えくらいなら待ってやってもいいぜ」


 そう?

 でも、装備なんてないしな。

 代わりに、俺は無料ガチャを引いた。

 レア度Aの【強化手投げ弾】が出る。

 グレネードか。

 これも天界の町には似合わない代物だな。


 俺はピンを抜いた。


「おい、レンジ。ちょっとこれ持っててくれるか? 今、着替えるからさ」


 手投げ弾を投げて渡す。

 受け取ったレンジは首をかしげた。


「なんだ、これ? オレの世界にはなかったな」


 それが奴の最期の言葉となった。

 どかーん。

 上半身が爆散して町を朱に染めた。

 だろうとは思っていたが、町に被害はない。

 フレンドリーファイアが解禁されるのはリングの中だけなのだろう。


◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━


 YOU WIN――!!

 13ptを勝ち取りました。

 120ptを受け取りました。


━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇━━◇


 俺の勝ちらしい。

 見物人たちが苦笑しながら去っていく。


「この120ptはどこから湧いたんだ?」


「投げ銭よ」


 と、ルネも苦笑気味に答える。


「デュエルは天界中に中継されるの。高位の天使同士の対戦だと、1分で何万ポイントも動くわよ」


 そりゃすごい。

 こんなストリートファイトではなく、翼をフルに使った空中戦をするのだろう。

 今度、俺も見てみよう。


「でも、1万pt以上賭けたことを考えると割に合わないな」


「そんなことないわ。あんたがベッドした分は、レンジの負債になるのよ」


 ルネは、ぷっふふ、と笑った。


「あいつ、これから借金生活確定だわ。恋敵のために貢ぐ生活なんて笑えるわね」


 笑えるか、それ……。

 俺はレンジが可哀想になった。

 もう一輪、供えてやるか。


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