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1.呪いと結婚
「お前を下賜する相手が決まった」
皇帝であるお父様が告げる。
「いつか」は分かっていたつもりだった。
もう二十三歳で、普通ならとっくに嫁いでいるはずの年齢だ。体調や呪いのせいで思ってたより随分遅くしてもらったはずだ。
「ですがわたくしの呪いについては」
感情が高ぶると勝手に色々な生き物へ姿が変わってしまう。自分でコントロール出来ないので、なるべく人と会わないように過ごしてきた。
出来るだけ感情を乱さないように人と接してきたためついたあだ名は「冷姫」
いつ変化するかわからない妻を公務に伴うわけにはいかないだろう。
政略結婚とはいえ愛されない事がわかっている結婚など、相手が不憫すぎる。
「それは心配ない」
お父様は続ける。
「ルーカス・ファジャール魔法局研究科副科長」
色白で長髪の男が現れる。
人好きのするような柔らかい笑みを浮かべている。
そこから一通りの説明を受け「二人で話してきなさい」と庭園を案内するよう促された。
庭園を進み、周りに誰もいないことを確認した上で振り向き口にした。
「わたくし、実験台になるつもりはないわ!」