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第6話 悪喰姫と懲りない侍女

 しばらくの間 7:10と19:10の2回更新致します。 宜しければ是非ご覧ください。


 ルシオ殿下の発火事件の後、私の周囲には不審な事が起こり始めた。


 早く出ていけと書かれた手紙が部屋に置いてあったり、服が無くなったり、針が仕込まれていたり……なんてアルテラの方がまだ気の利いた嫌がらせがあったけれど。


「ごふっ……姫様、このスープに毒物が入っています」


 私には恩寵があるから毒味などは必要無いのだけれど、主人である私よりも先に食事に手をつけていたエルマが血を吐いてうずくまる。


「はぁ……吸い出してあげるからこっち向きなさい」


「はい、姫様! 優しくしてください!」


 そう言って目をつぶって唇を尖らせているエルマ……コイツ結構余裕あるんじゃないの!? 確かに毒ぐらい直接口で吸い出せるけれども。


「オ、オロロロロォ……ひ、姫様激しい……」


 なんか嫌だったから大口にエルマを突っ込んで激しく吸い出してやったわ。 酔ったのか吐いてしまってるけど、それなのに何故かうっとりしちゃってるエルマが怖い……


「失礼します。 ルシオ殿下がいらっしゃいました」


 そんなことをしていると、ドアがノックされる。 返事をすればルシオ殿下とその護衛騎士の2人、さらに侍女が数名入ってくる。


「えっと……これはどういう状況?」


 ルシオ殿下の視線の先を追ってみると、大口の唾液(?)によってびしょびしょに濡れ、着衣が乱れたエルマが恍惚の表情で横たわっている……


「あー……ウチの侍女たまにこうなるのです」


 説明するの面倒だからとりあえず雑に笑って誤魔化しておこう。


「……それで、数日ルシオ殿下のお姿を拝見出来なくて心配しておりました。 お身体の具合はいかがですか?」


「あ、あぁ……このとおり問題ない。 実は呪い対策の魔導具が出来るまで強力な結界の張ってある部屋に監禁されていたのだ」


「まぁ、監禁だなんて。 うふふ、殿下の身を案じての事でしょう」


「まぁ、そうなんだろうが……俺は直ぐにでもシェリム王女に会いたかったのだ……その、この間、俺が燃えた時も助けてくれたそうじゃないか。 本当に助かった、ありがとう」


「いいえ、殿下がご無事で何よりですわ」


 ルシオ殿下がはにかみながら少しだけ顔を赤くして頭を下げる。 その姿を見て私は可愛らしいな、と思ってしまう。 性格も素直だし、見た目は美少年だし、と言うことなしね。


「その……俺とシェリム王女とは、婚約してるのだから……その、改まった話し方はやめてほしい……俺の事もルーと呼んで欲しいんだ。 昔、母上がそう呼んでくれてたから」


「まぁ、うふふ。 それじゃあ少しくだけさせてもらうわ。 無礼討ちなんて言わないでね」


 顔を真っ赤にしてルーと呼んでくれだなんて可愛すぎじゃない!? 思わず生唾を飲み込んでしまうわ。


「それじゃあ、私の事もシェリーって呼んでくれる? 一度も誰にも呼ばれた事がないから憧れてたの」


「わかった。シェ、シェリー……少し城内を散歩でもしないか? 俺も呪いが解けてからはちゃんと見ていないんだ。 10年も経っていたら色々変わっているかもしれない」


 その後、ルーの案内でアルトエンド城を色々と見て回った。 マールの王城と規模がまるで違くて全部見て回るのは一苦労だろう。

 城内にある中庭や温室などを回ったあと城下の見える眺めのいいテラスでお茶を頂く事になった。

 ルーの侍女が淹れてくれた紅茶を飲みながら話しをする。


「じゃあ、この間の呪いは城内に犯人がいたってこと!?」


「そうだ。 城内をくまなく調べた所、地下の牢に呪術を行使した痕跡と焼け焦げた死体があったそうだ」


 ルーによると皇城には外部からの魔法や呪術などを弾く結界が張られているらしい。 この結界は内部に入ってしまえば効果はないらしく、単純に外からの攻撃を防ぐ為のものだ。 だからルーは携帯式の結界が出来るまで部屋に別の結界を張って引き篭もっていたらしい。


 けれど、死の呪いなんて物騒なものが命の等価交換だけならばもっと頻繁に使われて貴人は暗殺され放題な気がするけど、人を殺す様な呪いにはそれ相応の媒体が必要になるらしい。 呪う人間の身体の一部とからしいけど、髪の毛とかだと効力が弱いみたい。 指とか腕とかある程度しっかりした肉体の一部じゃないと死の呪いなんてかけれないみたい。

 ルーの肉体の一部をどうやって手に入れたのかは知らないけど、不老不死であるルーの……あのおぞましい肉塊の状態だったなら肉片ぐらいいくらでも取ってこれそうではある。


「俺だけじゃなくシェリーも狙われたとなれば、俺の呪いを解いたのがシェリーだとバレたんだろう。 ……実は犯人の目星はついているのだが……決定的な証拠が掴めないんだ。 けれど、必ず捕まえてみせる! すべて終わったら盛大に結婚式を挙げよう!」


「うん。 私もルーがまた呪われたりしたらいくらでも喰べてあげるわね!」


「……もしかしてだけど、俺もシェリーに呪いを食べられた後ってあの侍女の様になってたの?」


 ルーが何か思い出したのか、ちょっと恥ずかしそうに聞いてくる。 私はそれがおかしくってちょっとイジワル言ってみた。


「あぁ……ふふっ、どっちかっていうとルーの方が酷かったわ……アナタって2回とも産まれたばかりのように裸だったしね」


 そう言って微笑んで見せるとルーはまた顔を真っ赤にして俯いてしまった。



☆★☆★


「姫様……シェリー姫様……」


 私が部屋に戻って来ると、エルマがニヤニヤしながら呼んでくる。


「……何よ?」


「言ってくれたら私がいくらでも呼んであげたのにぃ。 シェ・リー・ひ・め・さ・ま!」


「ウザッ……」


「もぉ〜ぉ、そんな照れなくていいんですよ〜? シェリー姫様! 私の事はなんて呼びます? エルエル? エリー? 私としてはエリー呼びの方が愛称ぽくていいかなぁって思うんですけど?」


 いつもウザいけど今日は特別ウザい……


「本ッ当にウザいわ……ウザルマだわ。 いい加減にしないとその無駄にデカい胸を食べてしまうわよ!」


「ウザルマ!? え〜全然可愛くないです〜! それに私のおっぱい食べたって姫様のおっぱいは大きくなりませんよ? エヘッ」


「エ〜ル〜マ〜!!」


 コイツ私が気にしてる事を〜!! 私はまだまだ発達途中なんだからね〜!!



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