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04

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アレースの部屋から戻ったディアーナは、ベットにうつ伏せで飛び込むと中々戻らない顔を枕に強く押し付けていた。


とんでもないことをしてしまった。勢いに任せて勇者様の胸にうずくまるとか……とんだ変態だ。あの鍛え抜かれた胸板……考えしまうと上気してしまう顔を戻すことなど不可能だ。そう思って上着を脱ぎ捨てると布団に潜り込む。

いっそ魔王を倒した瞬間、姫を切り捨てるか……脳裏に浮かんだ恐ろしい妄想に怖くなり自らの肩を抱いた。


この魔王討伐は絶対に成功させなくてはならない。もちろん国のため、民のためである。しかし一番は送り出してくれた両親のためだ。騎士として生きていけるようになったのは全て両親のおかげである。

そして今回の旅に赴く前に会った両親に、絶対に魔王を打ち破り務めを果たして帰ってくる!そう固く約束をした。それは絶対に成し遂げなくてはならない両親への恩返しであった。

それが『王族殺し』の罪なんて物に代わってしまえば、一族全て処刑されたとしてもおかしくはない。


私はガバリと起き上がり、道具袋から日記を取り出した。

毎日ではないが、時間を見つけては日々の思いを書き綴っていた。

両親への思い、勇者様への強い憧れ。そしてその勇者への思いが深い愛情へと変わってしまった事を懺悔し、それでも書き添えてしまう許されるはずのない勇者様への愛の言葉……


そし、てその度に勇者様に対する強い贖罪の言葉を、何度も何度も書き綴った。


ある種の精神安定を図る儀式のようなものだった。吐き出せない気持ちを、日記にぶつけることで消化していった。

そしてまた、抑えきれない気持ちに涙を流しながら眠りについた。


まずは早く魔王を倒す。そして勇者様も救い出して……でもそれは姫様を、いや国を?結局は両親をも裏切ることになる?……どうしたらよいのか……夢の中でさえ葛藤する日々を送るディアーナであった。


◆◇◆◇◆


翌日、食堂に集まった三人。

ディアーナとは少しだけ気まずい雰囲気になってしまった。さすがにすぐは目を合わせることは困難であった。


それでも日々は過ぎていく。

翌日以降、俺の部屋を訪ねてくることはなかったディアーナ。時間が解決してくれた関係は、すでに元の関係へと戻っている。相変わらずルーナとの関係も良好だ。立ち寄る町での依頼も順調にこなしていく。


目的は魔王城。

そこに向かって進んでいる為、徐々に魔物の強さも上がっていくが連携の取れた三人に敵はいなかった。


そして3週間。

北方の最後の街へと馬車は到着した。


「ここが最後の街……今夜はしっかりと寝て明日からは山登りだ!」


そう言って笑う俺に、ルーナもディアーナも笑顔を見せてくれた。


すでに部屋を取っている宿へと入っていく二人を見送ると、俺は街の道具屋へと足を進めていた。ここは魔物討伐の最前線の町。かなり高レベル向けの道具もそろっている。そしてその店内で目的の物を見つけた。

かなり高額とはなったが、兵士時代に使い道もなく貯めていたお金と王から頂いた報奨金の前払い分を合わせれば、ギリギリ購入することができた。


「もしものための命綱……使わなければそれに越したことはないんだがな……」


そういってそれを収納にしまい込むと、宿への道を戻っていく。いよいよ明日からは山を越え魔王城に殴り込む。拳を握り締めて魔王を打ち倒すことを心に願った。

そして宿へとたどり着く。


俺の部屋の前には、ディアーナが待っていた。


一瞬足を止めた俺だが、ディアーナに「どうした?」と声をかけ部屋の扉を開けた。


「少しだけ……いいかな……」


そう言うディアーナを仕方なしに部屋へ招き入れる。そして俺はベットに座り、立ち尽くしているディアーナに椅子を勧める。

暫く躊躇していたが、しばらくして椅子に座るディアーナ。


そしてまた沈黙の時間が続いた。


「あのさ……このまま姫様を置いていかないか?」


やっと口を開いたディアーナの第一声がこれである。


「またその話か。万全を期すといったあの時の気持ちは、今でも変わらない……」

「でも姫様は……」


またしばらくの間、黙り込むディアーナ。


「私が!私があなたを守る盾になる!この道中でかなりレベルも上がった!たとえこの身が砕け散ろうとも、あなたを守り魔王も絶対ぶち殺す!だから……二人でこのまま進んではくれないか?」


突然のディアーナの強い言葉に驚く俺は。その必死な形相に違和感を感じてしまう。


「予定は変わらない。三人で魔王を倒す」

「私が、勇者様に……アレースに、欲しいものは全部くれてやる!この身だって喜んで差し出そう!……望みは全部叶えよう!それでも、だめなのか?」


真剣な表情をしながら俺の手を握り、そしてそのふくよかな胸に手を押し付けるディアーナ。俺は「やめろ」と小さくつぶやきその手を掃った。


「俺には、ルーナがいる……すまない……」

「姫様は、勇者のことが、あ、あまり好きじゃ、ないかも、しれない……」


突然のその言葉に少しだけ怒りがわいた俺は、ディアーナ睨みつけてしまう。

すぐに気持ちを落ち着けようと深呼吸をした俺は「もう帰れ。明日も早い」と伝え、部屋から強引にディアーナを追い出していた。自分でも薄々感じていたルーナの違和感。


ルーナはこの旅の最中、一度も俺にふれてはいない。もちろん道具の受け渡しだったり戦闘中などに、軽く手が触れることはあった。だがそれ以外の場面で手を握ったり、ましてや抱き合ったり……そんなことは一度もなかった。

口では「魔王を倒すまでは」と言っていたが、そこに心がないのだと気づいた時から、ルーナの愛らしく思っていた動作などすべてが薄っぺらい演技に見えてしまっていた。

それでも……それでも魔王を討ち倒し、結婚して子をなせば、徐々に愛情も芽生えるだろう。

そもそも貴族や王族は、女性の結婚は愛情よりも政略結婚といった意味合いが強いという話も聞いていた。だからそれで良いんだ!俺はそう思っていたんだ。


「ディアーナのやつ!改めて言わなくても言いやがって……」


そんな自暴自棄な感情からくる八つ当たりで、声を荒らげてしまった自分を恥じた。しかし後悔してももう遅い。せめて何もなかった風を装おう。そして布団に潜り込んで眠りについた。

お読みいただきありがとうございます。

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