お見合い芝居起
ツヅミ姫こと私は見合いをしている。
御簾を挟んでお見合い相手と向かい合っている。
貴族の女性が顔を見せる相手は結婚相手だけと決まっているからだ。
こんな謎な決まりがあるから早く貴族を辞めたい。
御簾の向こうには、私が操る人形の一つ、霧崎がかっちりとした黒色の束帯をきている。
そしてその隣にはもう一人のお見合い相手として天野王も同じ格好をしている。
なぜこうなった。
重い十二単さえ来ていなければ頭を抱えていただろう。
あの謁見からしばらくして、私と霧崎人形の家にそれぞれ天野王名義の手紙が使者によって送られてきた。
私の方には、霧崎という名の武士が見合いを申し込みたいという知らせがきた。
霧崎の方には、見合いの礼儀作法を内裏に学びにくるように言われたこと。
私の方は、両親や姉と妹にその手紙を読まれて、喜ばれた。
それは、三姉妹で婚約者もおらずお見合いもしてないのは私だけだったからだ。
さらに、私の両親は、あの身分違いの姫と武士の結婚を祝福した側の人間だから尚のこと喜んだ。
手紙が来てから礼儀作法の講義で先生が厳しくなった。
霧崎の方は、手紙をもらってから翌日、輦が来て、仲間と鍛錬中の霧崎を攫うように内裏に乗せて行った。
そして連れてかれた内裏の中で、王お墨付きの礼儀作法の先生が紹介された。
そして、厳しい礼儀作法の講義が始まった。
自分の礼儀作法に集中しなければいけない状況でさらに、人形の方にも集中しなければいけない。
荒妖と戦っていた時は夜に私の体が眠っている時に戦っていたから、そんなに辛くなかった。
今は、二つの体を同時に違う動きさせないといけないから辛い。
早く見合いをしたい。
見合いをして、はやく結婚して貴族を辞めたい。
この状態は霧崎の先生の方で、妥協点及び合格点を取り、見合いの席を用意するまで一ヶ月続いた。
そして今のお見合いの状況がこれである。
てっきり仲人として、この見合いに出るのかと思えばまさかの敵人。
どうなるんだこの見合い。