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焼けつく想い

 その頃、晶も直人同様、学校へ行く準備をしていた。彼女も部活に出るためだ。


 彼女は部屋の大鏡に自分の姿を映す。


 細い腕と首、成長とともに膨らんできた胸、女の体。


 晶と直人がまだ知り合って間もない頃、直人よりも晶の方が強かった。晶の方が背も高く、ケンカでは負け知らずだった。


 なのに、中学生になった頃から直人は本気で戦ってはくれなくなった。


 二人は心も体も成長し、互いを異性だと意識し始めた頃から晶のそれは始まった。


 成長すればするほど自分は直人を好きになっていくのに、直人は成長すればするほど晶を遠ざけ、男子達とばかり遊ぶようになった。


 自分と話す回数は日に日に減り、自分から話し掛けても晶自信、直人を意識してしまうためか会話は続かない。


 ただ、それが辛かった。どんなに明るく振る舞ってもその悲しみは拭えなかった。


 そして今では友人どころかロード同士、敵になってしまったのだ。


 晶の目にはうっすらと涙が溜まる。すると後ろから人の気配がする。


 晶が振り返るとそこには現代の服を着た義経が立っている。


 しかしその様子に不良達を斬り殺した時のような冷たさは無い。


 そこにいるのは鉄面の英雄ではなく、冷酷さという鉄の面をはずし、本当の自分をさらけ出した一人の男だ。

 晶は涙を制服の袖でぬぐう。


「・・・義経、どうしたの?」


 すると義経は申し訳なさそうに下を向き話す。


「・・・すいません、私のために、晶は・・・あの直人という者のことを・・・・」


 晶は無理に笑顔を作る。


「気にしなくていいよ、あんたの(ロード)になるって決めたのはあたしだもん」


 義経は辛そうな顔になり、晶に頭を下げ、申し訳ありませんとだけ言った。


 晶は直人と同じ、自分が腕輪の持ち(ロード)にならなければ義経の夢が終わってしまうという理由で義経のロードになったのだ。しかし、それが直人と敵同士になってしまうというのは予想していなかった。


「とにかく、昨日話したとおり、晶はあくまでも私に無理矢理、(ロード)にされている被害者を装ってください、そうすればあなたが直人に責められることはありません」


 晶は小さく頷くと玄関へ行き、靴を履き始め、晶が扉に手をかけた瞬間、義経が言った。


「昨日、人間を殺したことは申し訳ないと思っています、しかし、ああしなければ被害はさらに増えますし、敵には冷酷な姿を見せなくてはいけないのです・・・・・」


 そう言う義経の声はわずかに震えている、それが彼のやり方だ、本当は誰よりも他人を気遣う優しい心を持っているにも関わらず、味方を守り、敵を倒すため、敵にはあえて冷酷な危険人物という印象を与える。


 派手に騒げばスレイヴ達は自然の自分の所に集まってくる。そうすればこの戦いをより早く終わらせられるのだ。


 晶は優しい笑顔を義経に向ける。


「だいじょうぶ、義経が本当はすごく優しいの知っているから・・・でも・・・・」


 晶はとたんに真剣な目で義経を見据え言う。


「もうどんなことがあっても現代人を殺すのは許さないから」

「・・・・・はい・・・・」

「じゃあ、行ってくるね」


 そう言って晶は家を出た。



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