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五角関係

 授業が終わり直人が帰ろうとすると晶と忍が一緒に帰ろうと誘ってきたため、断る理由のない直人は二人を連れて玄関へ向かう。


 三人が廊下の角を曲がるとあたり一面にプリントが散らばっている。


 見ると一人の女子生徒がその落ちているプリントを拾い集めており、制服とリボンの色から高等部の一年生であることがわかる。


 直人は鞄を置き、誰に言われるわけでもなく、プリントを集めるのを手伝う。

 全てのプリントを集め、その女子生徒に渡すと彼女は直人に微笑みかける。


「ありがとう、直人君」

「あっ、長城先輩」

「知り合い?」


 晶の問いに長城が応える。


「私は長城(ながしろ)水樹(みずき)、神刃君とは病院で何度か会ったことがあるの」


 そう言う水樹は背が高く、病的に肌が白い華奢な体つきで髪が長い、そして元気が無く、いかにも病弱そうな容姿だ。


「俺は修行でよく派手にケガしてたからな」


 水樹は目を細め、直人を見る。


「私は昔から体が弱くてよく風邪ひいていたから、そういえば直人君、この前の大会、中学生剣道の全国大会で優勝するなんてすごいのね、おめでとう」


 直人が礼を言おうとすると忍が割って入りふざけて言った。


「でもぉ、相手を全員一撃で病院送りにするなんてやりすぎじゃない? もしかして恨みでもあったのかな?」


 直人は右手で後頭部をかきながら答える。


「んなわけないだろ、俺はほどほどにしたいけど父さんに次の対戦相手を怯えさせて敵の勢いを殺せるようにできるだけ派手に倒せって言われてるんだよ」


 水樹は細めていた目を開く。


「す、すごいお父様なんですね……」


 直人は顔をひきつらせながら。


「え、ええ、まあ……」


 と答えた。


 水樹は再び直人に礼を言うと、その場を立ち去る。直人がその後ろ姿を見続けていると(しのぶ)が直人の肩に飛びかかる。


「あれれー、なおちゃんもしかして、みっちゃんにホレちゃったのかな? みっちゃん美人だもんねえ」


 直人は忍を力任せに振りほどく。


「そんなんじゃない、ただ先輩、病気なのかなって……」


 人並みはずれて勘の鋭い直人だから察知できた、長城水樹につきまとう死の匂い、今日明日に死ぬというわけではないが、数年のうちに彼女は死ぬだろう、ただ直人はそれが気になったのだ。


 だがそれ以上に気にかかることがある、自分は人の死まで分かっただろうか、直人は自分が人並みはずれて勘が鋭いのは昔から知っていた。


 それでも人の病や死までは分からなかったはずだ。誾千代と出会い、史上最強を決める戦いに参加したのが原因かと考えていると忍の陽気な声がその思考を破壊する。


「みっちゃんも入って五角カンケー」

「人の話聞けよっ!」

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