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誾千代の過去

 新撰組監察、山崎烝を倒してから四日、あれから誾千代とこれからの方針について話し合い、山上の件でこの町にまだ過去の戦士(スレイヴ)が潜伏していることを考慮し、腕輪(リング)は無理に隠さず、腕輪(リング)で自らの存在をアピールして敵をおびき寄せ、帰りは誾千代が学校に迎えに来る。




 一般人の前で敵が戦いを挑んでくる可能性は低いので授業中は安全と考えていいだろう、これでいつでも敵と戦える状態になる。


 そして誾千代に知らされたことが一つ。


 過去の戦士(スレイヴ)達は今回の戦いの間に限り、自分の武具を召喚し使い終わると下の場所に送り返すことができるらしい。


 誾千代が山崎と戦ったときに武具が突然現れたのはそのためだ。


 余談だが彼女は直人の期待をとことん裏切る存在らしく、誾千代は四百年前の人間、漫画や映画の場合、現代の道具に慌てふためく、直人も当然それを期待していたのだが誾千代は


「未来になれば便利な道具ができていて当然だ、それに私のいた九州は貿易の中心となっていた場所で南蛮渡来の珍しい物なら見慣れているから特別驚いたりはしない」


 と言ってテレビや掃除機を当たり前のように使っている。


 話は戻るがこのように誾千代は神刃家に溶け込み、今ではすっかり直人の大切な家族になっている、それでも直人は不満だった。


 確かに直人は誾千代とうまく付き合えるようになった。しかし直人は彼女の人生を、歴史を知らない。


 学校の教科書に立花誾千代の名前はない。


 よほどマイナーなのか、どの歴史書にも彼女に関する記述はほとんど無く、ネットや図書館を駆使してわかったのが戦国時代の九州を島津家と二分していた大友宗麟の重鎮にして三十七戦無敗、雷神の生まれ変わりと称えられた猛将、立花道雪の一人娘で、天下分け目の関ヶ原の戦いの二年後、一六〇二年にわずか三十三歳という若さで死んでいるということだけだった。


 直人は窓を通して空を見つめる。空には雲ひとつ無く、鳥も飛んではいない。


「三三歳で死亡か、なんでそんな若さで、でもやっぱり聞いたら失礼だよなぁ……結局俺、誾千代のこと何も知らないんだな……」

「なーおちゃん」


 明るく陽気な声と共に直人の視界を(しのぶ)の顔が覆い尽くす。

直人は思わず後ろに仰け反り、その姿を見て忍が笑う。


「望月……何か用か?」


 忍は名前で呼ぶよう注意してから右手の人差し指をアゴに付け背筋を伸ばした。


「うーんとね、剣道部の子から聞いたんだけどぉ、なおちゃんがすっごくかわいい女の子と同棲してるってホント?」


 直人は右手を額に当て、ため息を付く。


「ただの内弟子だって……」


 だが忍は直人に顔を近づけ、子供のように笑いながら興味津々に聞いてくる。


「でもでも、若い男女が一つ屋根の下で暮らしてるんでしょ? 気になるぅー」


 直人が呆れ、次の言葉を言おうとすると晶の声が聞こえる。


「ちょっと直人!」


 声のするほうを見ると声の主が直人にずんずんと近づいてくる。


「あたしと三倍密度で過ごす約束でしょ! だいいち入学してからあたしを避けといて何、他の女子と楽しく談笑してんの!?」


 晶に首をギチギチと締められ直人は何度も晶の手をタップする。


「今回のクラス替えで一緒になって向こうから一方的に話し掛けてくるだけだって!」

「あたしだってさんざん話し掛けたじゃん!」


 直人の首を締める手に力が入り、晶の指が直人の首によりいっそう食い込む。


「……し……忍は晶を越えるマシンガントークとしつこさが、って、そろそろ離してくれ……」


 直人の顔は徐々に青ざめ動きも鈍くなってくる。


「あはは、なおちゃんと内弟子の子と晶ちゃんの三角カンケー? じゃあ、あたしも入って四角カンケーせえりつー」


 ガク

 (しのぶ)の陽気な言葉の終了と共に直人は落ちた。

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