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「まぁ、こんだけごちゃごちゃ言ってるけど、完全にあいつらが悪いとも思ってない」
冬のファストフード店、椅子はたくさんのアウターがかけられて鬱陶しそうにしている。
「え?なんで?」
「うーん。私はね、人ってそれなりに育てられたら、極悪人にはならないんじゃないかって思うんだよ。逆を言えば、極悪人はそれなりに育てられなかった何かがあるって」
「でも、だから極悪人がいいとはならないよね」
お姉ちゃんは僕の発言に目を丸くし、やがて吹き出した。
「ははっ。シンはなかなか鋭いことを言うね。でもさ、それって、極悪人がただ単に悪いともならないと思うんだわ」
僕はトレーに敷かれている紙に印刷された、若いクルーの口にポテトを突いていた。
「そうなの?」
僕は至って懐疑的だった。
「そうじゃないのかなぁ、なんか、向こうにも理由があるんじゃないかなぁ」
その言い方は断言というよりは願望のように聞こえた。
お姉ちゃんは亡くなった。「彼」は、ほんとは僕の頭の寸前で止めるつもりだったらしい。そこにお姉ちゃんが僕を助けようと割り込んできたから、距離感覚を制御出来ずそのまま殴打してしまったと言っている。
彼は泣いていた。それが本当の涙か、嘘かわからない。ただ僕にとってそれはどうでもいい。お姉ちゃんを失った喪失感と憤りは消えない。
今も。
きっと、一生。