01:魔力のない少年
「魔力適正はありますが、魔法は使えませんね。」
告げられた宣告を受け入れきれないまま僕は思った。
ああ、僕の夢は終わった。
2042年12月29日突如非科学的な力が使える子供が生まれた。その力は身体から炎や氷を出したり、筋力を一時的に高める力のことだ。その後使える力は違うものの、その非科学的な力を使う子供が次々と生まれていった。
人々はその力を魔法と呼び、その10年後には魔法を使える人間は人口の95%に昇った。そんな魔法が発達する中で、魔法国家が出来上がっていった。
その名は魔法学国。魔法の力によって日本海上に作られた小さな国家である。
それはそんな国に住む一人の少年の物語だ。
「やっとだ、やっとこの日が来た!」
軽い足取りで魔力測定所に向かうこの少年は名は、望月満だ。
この魔法学国では、15歳になると魔力測定を行う。なぜ15歳で受けるのか。それは一般的に魔法が使えるのは15歳を超えてからだからだ。
「お母さん、僕どんな魔法が使えるのかな!」
「お母さんが炎でお父さんが氷の魔力だから、そのどちらかじゃないかしら。」
そう、どんな魔法が使えるかは遺伝なのだ。魔力の強い親の魔法が使えるようになるのが一般的だ。ただ、例外もある。今までに数件だけだが。
「お母さんと、お父さんはどっちも二級魔法使いだし、魔力測定値も同じだからねぇ。」
「でもそれってすっごい珍しいんでしょ?」
例外の数件で測定された魔力は全て平均を大きく上回っている。
「きっと満なら特級魔法使いになれるような魔力があるわよ。」
にこにこと頭を撫でるように微笑む。
「うん!」
希望に満ちた声で返事を返すと、足取りを軽くして魔力測定所の中に入っていく。
魔力測定所で告げられた現実を受け入れられず、その場から飛び出した。
「なんで、なんでなんだよ…」
「僕だって魔法使いに、お母さんやお父さんみたいになりたかったのに…」
そんなことを今更嘆いても意味がないと分かっていても、つい漏らしてしまう。そんな僕の顔はびしゃびしゃになるほど濡れていた。
飛び出した勢いで走っていると、段々あたりが騒がしくなっていった。
「なんだこの匂い。」
焦げた匂いだ。
匂いの方向に走っていくと…
「え?」
ついそんな言葉が漏れてしまった。
そこはさっきまでの光景が嘘かのように火の海が広がっていた。野次馬かは知らないがそこにはたくさんの人が集まっていた。僕もその野次馬に混ざるかのようにその集団の中に入ってしまった。すると隣にいた男性が叫んだ。
「火の中に人がいる…」
男性の言葉は”スパッ”という音と共に途中で途切れた。
ぼと…
そんな生々しい音がした。恐る恐る隣にいた男性を見ると、その男性に頭はもうなかった。そして男性の頭があった場所には、頭の代わりかのように持ち手の異常に伸びた斧があった。
一瞬の間が空いてあちこちから悲鳴が鳴り響いた。