3話 『街へいこうよ』
移動。
因みに赤い小鬼はゴブリン君でした。
まともなバトルはもう少し成長してから
はぁ
逃げ切った安堵と、のしかかる敗北感に思わず溜息をつく。あの小鬼がゴブリンなのだとしたら、この世界ですごく弱い部類なんじゃないか?
森を直線に歩きながら、思考を続ける。
異世界転生、説明が無いパターン、しかもゴブリンに勝てない、と。
最悪の気分だ。とりあえず生きていくために人を見つけないと――――
人?
この世界に、人間はいるのか?
絶望しか芽生えない問いに頭を抱えようとしたその時、森の終わりを告げる光が視界に入った。
塀がある――――
人工物にこれほどの感動を覚えたことがあっただろうか。その高い壁は、まさに俺の希望だった。
森を抜けて、まだ人が通れる道に足をつける。
突き当たった壁を右に、壁沿いに歩き出す。
「この壁の中に町があったとして、町のすぐ横に森があるのは良くないんじゃ…」
喋ると疑問が沸く。塀が作れるくらいの文明の力があって、森を伐採しないのは何故だろうか。
―――ゴブリンが怖くない、から?
あまり明るい考えは出てこないまま淡々と歩みを進めていると、塀の角が見えてきた。
期待と一抹の不安を胸に、角を曲がると、数メートル先に整備された道と門が見える。
安心感と、達成感からだろうか。
どう立ち振る舞えばいいかなんて考えは全く浮かばないままに、走り出した。