一日目の終わり(夜)
なんか前段だから時間が飛びまくります。すいません。
〜アングート天空界王城:シェノスの執務室にて〜
「すぐにアンサーを呼んで頂戴。」
とシェノスはメイドNPCに言った。折角手に入れた鉱山(シェノス達アングート勢しか知らない。)なのだから活用すべきだ。
それに加えてレベル70の金属はシェノスたちからすれば低レベルの使い道が無いようなものだが、こちらに転移してから法則が変化して武器などの作成アイテムをワールドマップクラスの拠点を持つユニオンの特典作成のNPCが装備出来るようになりアングートの戦力強化を図れるようになったため、他のプレイヤー対策が出来る様になった。実はシェノスは自身が負ける事はまずないと思っているが、それでも最上位クラスのプレイヤーであれば拠点自体に対して大きな損害を与えることは可能な為、防衛力が低い事に対し(それでもゲーム時代では上位5本の指に入る防衛力はあった。)必要以上に警戒していた。
すると五分も経たずしてアンサーがシェノスの執務室へとやってくる。
アンサーはシェノスの前で一礼する。
「シェノス様、このアンサー御身の前に。」
そして一言も聞き逃すことがない様に細心の注意をはらう。
「さてアンサー、今回貴方を読んだのには早急に取り掛かって欲しい事ができたからなの。まずはこれを見て頂戴。」
とシェノスはこの辺り一帯の地図ととある書類を見せる。アンサーは書類は読むことができないが、出された地図の中に赤く囲ってある山との関係が有ると考えその意味を理解すると目を見開く。
「もしや、この鉱山を手に入れたのですか⁈」
その質問にシェノスは少し得意げな笑みを浮かべて、
「そうよ。だから早急に採掘して鍛治師の職業を持ってる彼らにアイテムを作成させたいのよ。第四階級の者たちが作成されたアイテムを装備出来るようになった以上、防衛力の強化は早急に取り掛かるべきことの一つだったからね。」
とアンサーに言った。これを聞いたアンサーはたった1日でこれ程の事を成し遂げてしまう自らの主の底知れぬ力に畏怖し、それと同時に狂喜と敬愛の念に駆られる。しかし、今はまず主の要望に応えるべく提案する。
「でしたら一応隠密に長けるミネルヴァに転移門を開けるタナトスをこの二つの山に連れて行かせたのち、転移門を開き採掘に長けた僕達を送り込むというのはどうでしょうか?」
「それが一番いいかもしれないわね。わかったわ。ならば早速開始しなさい。」
「かしこまりました。では失礼します。」
そしてアンサーは退室し即座にミネルヴァとタナトスへ念話を飛ばす。
『ミネルヴァ、シェノス様からの命令です。すぐに装備を整えて……… 』
〜sideシェノス(カリブ)〜
「では、ネイサー。お前の成果を聞きたい。」
「はい、ではまず商業エリアでの話からさせて戴きます。」
〜午後三時頃〜
(シェノス様はまず経済面からこの国に入り込もうとしておられる。ならばこの商業エリアで売られているものとその量を調べて、なるべく怪しまれずされど比較的楽に利益を上げ、商業ギルドの中枢に入り込めるようなものを見つける必要がありますね。)
とネイサーは考えた。そして露店で野菜や果物を売っている店主に声をかける。
「すいません。ここのおすすめのものが有ればそれを下さい。」
「お、おう。(すげー別嬪さんだな。)ここのおすすめはこのリンゴだな。甘さが他のところより良くてな、それに俺の友人が作ったやつで特別価格で仕入れられてるからな、安いんだ。」
「ならそれを二つください。」
「おうよ、代金は銅貨一枚だ。」
と言われたネイサーは銀貨を一枚出した。すると店主は目をパチリとさせた。
「嬢ちゃん、銅貨一枚だと言ったはずなんだが。」
「そうですね。確かにあなたはそう言っていました。しかし今私には銀貨しか無いのです。ですので余りは差し上げます。」
「そんなもらえねぇよ。自慢のリンゴだが、所詮リンゴだ。銀貨一枚には釣あわねぇよ。」
「ならば、少し聞きたい事があるのでそのことに答えてもらってもよろしいでしょうか?その対価としてなら釣り合うでしょう。」
すると店主は厄介事の様に感じたのか少し警戒しつつ何が知りたいのかを聞いた。
「では、商業ギルドの事についてと有名な商人のことなのですが…」
とネイサーは必要な事は聞いていたが、踏み込んだ話はしなかったため、店主は肩透かしを食らった様な気になったもののきちんと教えてくれた。
(さて、おそらくこの街に入ってきているものは商業ギルドと領主の二ヶ所に記録があるようですね。今回は商業用の方が欲しいのでギルドの方ですね。)
ネイサーはシェノスが必要としている情報の確保の為少し離れたところにある商業ギルドジオステレオス支部に向かった。
〜商業ギルドに建物の横の路地にて〜
ネイサーは情報を確実に手に入れるための方法を考えていた。
(まず、何がどのくらいこの街で流れているのかは必ず手に入れたい情報ですね。しかしその書類はさっき上位透視で見たところどうやら執務室の後ろの資料室にあるようですね。今回は後に商業ギルドに入る以上、余計な騒ぎを起こして行動し辛くなるのは避けなければならない。とすると資料室に忍び込むのが手取り早いですね。)
ネイサーは忍び込むのが一番良いと結論付け、ギルド内にまずは普通に入る。そして受付の方へ行く。
「すいません。筆記用の紙を売っているのはどこでしょうか?」
「紙でしたらこちらで売っております。何枚ご用意いたしますか?」
「では500枚の束でください。」
「かしこまりました。では銀貨5枚を頂戴いたします。ありがとうございます。銀貨5枚たしかに頂戴いたしました。またのご利用をお待ちしております。」
大量の紙を買ったネイサーはアイテムボックスに他人からあまり見られない位置で(アイテムボックスが珍しいため)しまうと行動を開始する。
「最大延長化魔法自己時間加速。」
と即座にネイサーの周りの動きが減速していく。そして停止しているか否かまで減速した。そしてネイサーは資料室へと向かう。
資料室の前まで行くと透視による目視転移によって中に入る。
(さて、まずはこの文字が読めないのが問題ですね。紙の数に限りがある以上ある程度絞らなくてはならないですし。)
ネイサーは解読の魔法を使いなるべく大商人やこの街での物流に関するものに絞って見繕っていく。
「さて加速の魔法の持続時間が後三分を切りましたか。ではこれらの記録にしましょう。多重化魔法複製。ひとまずはこのあたりが限界ですね。」
この複製は対象を文字通り複製する魔法だが、同じ材料が有れば消費魔力量を抑えられるためネイサーはあらかじめ紙を買っておいたのだ。
ネイサーは資料を元の位置に戻した後に転移魔法でシェノスのいる宿へと帰って行った。
「つまり、ギルドから持ち出せた訳か。よくやった。これでかなり動きやすくなった。」
とシェノスはネイサーを褒めた。ネイサーはそのシェノスの言葉に感無量になった。だがシェノスの方はというと実際は
(マジで⁈いや、有能すぎだろ。しかもかなり社会的に危ない事しちゃってるし!いやまさかただの聞き込み程度のはずがスパイミッションみたいになるとわ。これは今後かなり言い方に気をつけた方がいいな。時空属性の魔法まで使うとか過剰もいいところだぞ!)
とまあこのような有様である。しかし直ぐに冷静となりもう一度考え直す。
(たしかに、この資料が有れば大体のことはスムーズに進める事ができるな。少し見たがやはり胡椒などの香辛料はかなり高く売れるな。キノエルに任せたあの雲の上で栽培でもさせるか。高速栽培の魔法や技術を使えば品質は1段階落ちるが問題ない。そもそもこっちの世界の品種がアングートのものより二段階ぐらい低いからな。けどまずは情報を入手できる方法の確立させるために冒険者としてのランクを上げる方が先だな。)
シェノスはひとまず冒険者としてのランクを上げる方針にシフトする。
そしてもうすぐ夕食の時間になる事を思い出したシェノスは一旦考えるのをやめて食堂へと向かった。
〜SIDE⁇⁇〜
「陛下!一大事です。魔法省の大術式の儀式による遠視によるとかの山脈にいる邪竜三体の封印が解けこの国にまっすぐ向かって来る模様です!」
1人の男が法衣貴族院に息を切らしながら入ってくる。
「何だと⁈それは誠か?」
と陛下と呼ばれた男はかなり驚いた様子で聞き返す。
「間違いございません。ワイバーンなどの亜竜ではなく正真正銘の竜です!直ぐに部隊を編成する事を具申いたします。ただの魔物の連鎖発生によるものとは違う桁違いの被害が予想されます!おそらく明日の朝には封印が解け昼頃にはジアステレオスに到達する模様です!」
すると貴族達と国王は事態の深刻さを理解したのか、国王は貴族たちに命令する。
「王祖様が封印したと言われる邪竜が復活する。早急に飛行部隊、魔法砲撃隊、第三位階魔法以上の使い手である宮廷魔法師そして腕の立つ騎士や武人は全て集めろ。王祖様の残された飛行艇を使いジアスでレオス周辺の草原にて迎え撃つ!これは王命である。余も出るとしよう。宰相よ、暫くこの王都は任せるぞ。」
「かしこまりました。」
1人の男が会議の場から外へ出る。
(まったく、陛下自ら戦場とは。これは私の出番だな。この近衛騎士団団長たるこのフレデリックが仕留めてみせよう。ふふふ、私が活躍すれば殿下の評判が上がり王位継承へ近づく。)
「しかし、相手は王祖様が封印せし邪竜。格度100に満たない者では相手にならないだろうに。しかし私は英雄の域に住う者。格度200を超える。まぁ英雄の戦いというのを見せようとではないか。」
と男はこれからの自分の勇猛果敢な姿を疑ってはいなかった。
〜SIDEシェノス(本体)〜
(いや無理だろ。格度200を超えると言っても、お前のレベルは所詮54だろ。)
とシェノスはため息をついた。こんなに勘違いしている姿を見れば誰だってこんな気持ちになる筈だ。
(だいたい、三体の竜がいて一体が古老竜で残り二体が成体竜なんだよ。確かに成体竜二体はレベル58だから君でも頑張れば片割れぐらいは倒せるよ。だけどな、エルダーはレベル110で格度400超えてるだから無理に決まってんだろ。あぁー哀れだ。)
シェノス達アングートの第一階級の者たちはこの様子を見ると、哀れんだり、見下すような反応をしていた。
「私のカリブとしての知名度を上げるためには有効活用できるわね。それと、私が作った監視装置は問題なく使えているかしら?」
「全く問題ございません。全て正常に稼働しております。しかしこれがシェノス様にしか使うことのできない第六位相の力ですか。全く凄まじいものですね。」
シェノスはアングートが転移してきて一週間目の間にこの世界の太陽と二つある月に監視する第五位相の術式を付与していた。これにより世界級までの守りしかない所は簡単に見ることが出来るようになった。第三位相すらも神の領域であるこの世界ではほぼ全てを見れる事を意味していて、これは情報戦術では圧倒的であり太陽や月が空に出て入る間は第四位相までの守りしかないところならどこでも見れるのでまさに神の見えざる目と言えるのだ。基本的にある術式をオブジェクトに付与する場合にはその術式より一段階高位の位相の力を用いる必要があり、第六位相はゲーム時代シェノスの固有の力でシェノスを最強たらしめていた力であり第五位相の術式の付与はシェノスにしかできない。
配下のNPCたちは主人の絶対的な力を感じ取り、また自分達がそんな主人に仕えることができている事に感謝の念を覚えていた。
「なんとか、この竜の素材を手に入れられるようにするから、城下町エリアの解体場と作業場を一つ開けといてちょうだい。」
「かしこまりました。そのように収集長に伝えておきます。」
と五星天使の一人であるスミエルが答える。NPC逹からすればかれらの支配者であるシェノスのいうことは絶対であり、言わば未来の予定で、確実に起こることである。
「さて、私たちはこの世界のトップになれる程強いわ。しかしただ世界の覇権を握るというのも味気ない。ならば、この世界を裏から征服してみようと思ってね。という訳で、ここに私は世界征服する事を宣言するわ‼︎」
これにNPCたちから歓声が上がった。そして、魔の属性の者たちは主人が世界を支配する事への、そして聖の属性の者たちは主人が下々のものたちを管理する事への、喜び。そしてシェノスは自分の人生の半分を費やしたこの仲間たちとの思い出のものをこの世界に刻み込むという決意が固まった。
〜その後〜
(ひとまず明日が最初の勝負どころだな。明日でなんとかランクをXにしたいからな。それに最初はこの国の集団戦のレベルがどのくらいか知りたいから傍観と行きますか。)
と寝る必要のないシェノスは明日のドラゴン戦についてどのように動くかを考えていた。
次から王国編に入れると思います。