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クロスアドラー  作者: 霧川雄二
前段
11/11

王国軍

遅くなりました。


 冒険者達が戦場に向かって移動している頃、王国軍は飛行艇でジアステレオスの近くにもうすぐで着くという所まで来ていた。飛行艇は一隻あたり約10000人の収容が可能なものであり、これ程のものは周辺国家でも王国しか持っていない。


 王国軍は邪竜討伐という歴史に名を残す様な出来事に対し、ほとんどが英雄願望を持つ者たちであふれていた。しかし、一部には今回の討伐作戦に対して勘が働きやや消極的な者もいた。



 一方の王国軍の陣営作戦室ではこの期に功績を挙げようと目論むもの達が言い合っていた。


「陛下、もう直ぐで作戦の場所に到着いたします。作戦には冒険者供も参加するとはいえ我が飛行部隊の精鋭にかかればいかにドラゴンと言えど容易く討伐して見せましょう。それこそ脆弱な魔法師など必要ないかと。」


と飛行部隊隊長が勇ましく言う。


「何を言っている?王祖様の資料によればかの封印の戦いで魔法師、特に魔法砲撃隊は必要不可欠。特にかの邪竜はかなりの物理攻撃に耐性があった筈。ただ剣を振り飛龍で突撃する飛行部隊や騎士の脳筋が敵うほど甘い相手ではないわ‼︎陛下、かの邪竜の討伐は我が魔法砲撃隊が仕留めて見せましょう。」


 王であるゼトリラック=カルグ=ロンデル=イルナスと宰相は作戦前にしてこの纏りの無さに内心うんざりしながら、権力争いの時期に邪竜が復活したことに恨めしく思っていた。


「お前達のことを心強く思う。お前たちがいれば必ずや邪竜が討伐できると思っている。」


しかし、王自身もこの機に王家の威光を示さなくてはならないためあまり止める事が出来なかった。


「父上。此度の邪竜は正しく神話の怪物。幾ら王国の精鋭部隊といえど、討伐は難しいのでは無いのでしょうか?」


と口を出し爆弾に火をつけるような事をイルナス王国第一王子アルベルト=ロイス=ソイズ=イルナスは言った。


「なんですと!我が部隊を侮辱するおつもりか?いかに王子殿下と言えど今の言葉は取り消していただきますぞ!」


 一拍置いた後に侮辱されたと思った魔法砲撃隊隊長が怒りだす。しかしアルベルトは意にも返さず王に進言する。


「陛下、神話の怪物に対抗できる存在はいつの世も英雄でございます。ならば英雄の領域に到達している近衛騎士団団長を軸とした英雄部隊を編成し別動隊を作るべきかと具申いたします。もはや単なる精鋭部隊では王祖様が封印した存在に勝つことは不可能でしょう。ならば精鋭中の精鋭で戦うべきであると思われます。」


 この王子の言葉に各部隊や軍の隊長は黙った。なぜなら王子の言っていることが正しく、また今回功績を残した者の陣営が王位を継げるのがほぼ確定しているような中とはいえ、王子が精鋭部隊に各隊長達が所属することで功績を挙げる機会が平等にあると皆が理解したからである。


「アルベルトよ、其方の言う事には賛成だ。ならばその精鋭部隊に使徒殺しの令嬢は入れるのか?」


この王の言葉に場は騒がしくなった。使徒殺しの令嬢とは、王国に在る五大貴族家の一つであり莫大な財力を持つセルスラー公爵家の第三女リーゼ=シャルル=セルスラーであり、7年前の当時まだ十歳だった頃魔神の使徒であった暗黒の影王を殺した桁違いの才能を持った令嬢である。


 かつて第一王子が婚約をしようとしたが自分より強い男としか結婚をしないと言われ、断られてしまった。普通ならば王家を侮辱したとして王家を敵に回す事となり弾圧を受けるが、1人で王国全軍を相手に勝ってしまう程の実力を持っていたので王家が彼女を敵に回すことが出来ず以降、王族や貴族の間では腫れ物の様な扱いをされてきた。

 

 リーゼはどこの派閥にも所属しておらず、今回野心のある者たちからすれば手柄を立てる機会を奪う様な存在であり、また向こうの方が強いため文句を言えない厄介な存在であった。


「いえ、陛下。彼女に戦ってもらうのは最後の手段になります。むしろ彼女で駄目なら王国は終わりですよ。しかし、念のためいつでも動けるようにしてもらいましょう。」


アルベルトは冗談を言う様に言った。まるで()()()使()()()()()()()()()かのように。



 1人の兵士が部屋へとやってきた。


「陛下、まもなく作戦の地へと到着致します。準備を進めて下さい。」


「わかった。皆のもの作戦の最終調整をするぞ!」


王の言葉と共に全員が作戦を再度確認を始めた。





〜SIDEリーゼ〜


まったくつまらないわ。私に勝てる人間はいないのかしら?この国には私の次に強いのであの近衛騎士団長だけ。だいたいあんな弱い程度じゃ物差しにすらならないし。はぁー、つまらない。運命の出会いって物語の中だけなのね。

 だいたい、竜討伐だって万が一のためってだけに私がいるんでしょう?だったら別に来る必要なくない?


 国王は万が一に備えてリーゼにいつでも動けるようにさせていたのだが、本人はやる気がまるでない。


 しばらくして王国軍と冒険者が合流した。リーゼは飛行艇の自室から軍と冒険者の様子を見ていると…


(何あの三人⁈あの子はひょっとして第二王子⁈でもそれだとなんであんな別人みたいな気配があるわけ?私ほどじゃないけど近衛長とは格が違う!しかもあの2人からはオーラが全く感じられない。何だか面白いじゃない。)


 生まれつき気配の察知に長けていたリーゼにとってオーラが全く感じられないのは異常でしかない。リーゼはこの2人のうち男の方に期待しないでは居られなかった。願わくば自分を超える存在であってくれる事を。そしてもし、そうならば自分は自分の持つ全てを捧げようと思っていた。




〜しばらくして〜


「ではこれより王祖様が封印した竜を討伐する!聞け、我が臣下たちよ、軍の者達よ!お前たちの後ろには多くの民がいる。必ずや邪竜を倒し、民を守る強き者の姿を見せようではないか。ならば今ここにイルナス王国国王ゼトリラック=カルグ=ロンデル=イルナスは邪竜討伐開始を宣言する!」


「「「「「おぉー」」」」」


軍や冒険者たちから雄叫びが上がった。それは強大な敵に立ち向かう強き者たちの姿だった。

 

 しかしその中で国王は一抹の不安があった。それは王祖が何故邪竜を倒したのではなく()()したのかという事だった。伝承通りの場合、邪竜は大量の瘴気を放っておりそれだけで数多くの人が死に病が広がってしまう。

 だがここに来て後戻りが出来ない以上国王は使徒殺しの令嬢に動けるようにして貰うしか出来なかった。





更新は不定期です。

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