二日目の始まり
ちょっと短めです。
〜朝5時半過ぎ〜
全ての冒険者がギルドに集められていた。当然シェノス達も来ていた。
「さて、皆に集まってもらった理由だが、明朝に王国から手紙が来てな。まずは読み上げるぞ……」
ギルド長は王国からの正式な手紙を、邪竜に関する事を読み上げていった。中には驚くものや低位の冒険者たちは逃げるべきか迷う者もいた。あの後王国は冒険者ギルドに依頼を出してたんだなとシェノスは皆が真剣な中、場違いな感想を抱いていた。
「私はこの王国の依頼を受けるべきだと思っている。なぜなら今回は国絡みとはいえ下手をすれば人類の危機になる。これはまさに我々が動くべき時だろう。モンスター討伐は我々の専門分野だからな。」
「だが、相手は神話の怪物だぞ。俺たちにやれるのか?ただ死んで帰るのは勘弁だ。それに炎神の所の聖女様が使える蘇生魔法でも大金を払わないと生き返れねぇし、仮に生き返っても反動で格度がかなり減っちまう。低位の冒険者なんてそのまま消滅だろ。確実な作戦でもねぇ限り俺は参加したくないんだが?」
とAAランクの冒険者が言うとギルド長は分かっているとばかりに作戦の説明をした。
「まず、第3位階魔法の使い手が後方から砲撃をし、低位の冒険者はうまく身を隠せるだけの壕を掘るんだ。そして格度180を超える奴らが鏃として二体のリーダー格ではない竜を倒す。簡単に言えばこんな感じだ。リーダー格の一体は王国軍が受け持つらしい。だから我々の方はどちらかと言えば危険度は低い。」
この話により低位の冒険者たちは何とか参加する意思を見せた。
「なら俺たちの目的はその二体が王国軍の邪魔をしないようにするって事だな⁈」
「あぁ、そうゆう事だ。ならばお前たちは人々に見せなければならない。冒険者が人々の平和を守る存在という事を!我々が見せなければならない。弱者を守る強者の姿を!では後少しで作戦の場所へ移動する解散!!」
冒険者というのは皆大きかれ小さかれ何かしらの英雄願望を持った奴の集まりだ。さっきまでの不安とは違いほぼ全ての人たちがやる気に満ちていた。シェノスはギルド長の指揮官としての有能な一面を見た気がして、うまいね〜と思っていた。
「カリブ、少し話がある。来てくれ。」
とギルド長から声がかけられシェノスはギルド長のところまで早歩きで行く。
「どうやら君はあの場で殆ど驚いてすらいなかった。一体何故だい?」
これにシェノスは内心しまった!と思った。何故ならあの場でこのことを知って尚且つ相手の強さまで知っていたのはシェノスたちだけだからだ。どのようにしてこの場をやり過ごそうか考えていたが、
(待てよ、ここはカリブが圧倒的な強さを持つと示した方がXランクへの道が近くなる。だったらここは傲慢な態度で話すべきだ。)
「なぜって、そりゃ空飛ぶ蜥蜴如きに警戒する方が無理でしょう?」
「君は何を言っているんだい?ただの飛龍とは違うんだぞ?」
とギルド長はまるで狂人を見るような目でシェノスを見る。しかしこれにシェノスは追い討ちをかけるように言う。
「鑑定系統の魔法では魔法使用者と対象に力の差がありすぎた場合、➖以上としか結果が出ません。しかし私がその➖よりも圧倒的に力を持つ場合だったら?こう考えれば私の言いたい事が分かりますよね。」
ギルド長は何を馬鹿な事を!と怒鳴りたくなった。確かにそれならさっきの狂人発言にもうなずける。しかしそんなことは普通ありえないし、神話の世界の力を持つなど眉唾物もいいところだ。だが、ギルド長はカリブという男の目を見て無意識に体が震えた気がした。なぜなら長年の経験が決してこの男が嘘を言っていないと訴えているからだ。しかし、確実な事が分からない以上確認が必要だった。
「だったら、君は遊撃に出てもらおう。君の力をこの作戦で見極めさせてもらうぞ。」
「別に構いませんよ。その代わり今回十分な働きをしたらXランクは確約してもらいたい。」
「それはなぜだい?」
「ただ野心があるから。なんて冗談を聞きたい訳ではないようですね。ならばこう答えましょう。冒険者はいちいち絡まれるのでね。動きやすくしたい。」
確かに冒険者は力はあるが野蛮な集団という認識は少なからずある。そのため店によっては最高位の冒険者以外認めてないところも多かったりする。
この答えに何か隠しているのではとギルド長は考えたが、案外面倒くさがりな一面がこのカリブという人物にあるような気がして、少しおかしく感じて笑ってしまった。
「なんか、私変なこといいました?」
「いや、君にもそんな一面があるのだなと思ってな。わかった約束しよう。」
「では、私は遊撃なのでしばらくは自由に動かせてもらいます。まぁ主力がピンチで戦線が崩壊する前には手助けに入りますよ。」
「できればもっと早くに手助けに入って欲しいんだがね。」
「考えときますよ。それではまた」
そしてシェノスは他の冒険者のいる方へ戻っていく。
「カリブの旦那、いま少しいいですか。」
突然前で声がした。シェノスはあーそうだったと思い出した。
「で、何がいけないかわかったのかゴードン?」
「正直自分は感情のまんまに戦斧を振り回してるのに近かったのかなと思いました。あと無意識に見ているものが狭くなるようになっていました。」
「そうだな、お前は感情が昂ると注意が削がれる。まぁ相手に付け入る隙を与えてるんだよ。まぁいい、だが、そうだな。まぁまだダメだな。自分で考えてやれるだけのことを全てやってから俺がお前に戦いを教えてやる。まぁ要するにお前はまだ俺が教えるに足る存在ではない。まぁしばらく自分で鍛錬をしてからまた来い。」
「……分かりました。」
ゴードンは暗い気持ちのままギルドから出て行った。
シェノスは今後の事を考えデメリットを減らす為にゴードンを断ってしまった事に若干申し訳なく思ったもののすぐに今回の動きについて考えていた。
少し時間が経った頃シェノスはネイサーとクレイと集合した。
「さてと、ネイサー。私たちは最初はただ傍観に徹する事にしよう。それとクレイ、君は私のかわりに二匹いる整体竜のうち片方を潰してもらうからそのつもりでいろ。」
「「はい。」」
「それと竜の素材は確実に一匹分は欲しい。だからネイサーは場合によってはクレイに協力して2人だけが活躍した状態でその片方を確実に仕留めるんだ。そうすればギルドや他の連中も口出しできない筈だ。」
シェノスはいくらでも使い道がある竜の素材について活用方法を考えていた。
(スクロールにしようかな〜、いやそれとも融合錬金でメタラシファーと混ぜてみるか?どっちにしろクロスアドラーで手に入れた物は極力使用は避けるべきだからなー。まあ今はいいか。)
しばらくすると他の冒険者たちも話をやめて各々の準備に取りかかり出し、ギルドを出て行った。シェノスたちもギルドを出て一旦宿に戻った。
宿に戻ったシェノスはクレイに竜の正確な情報を伝えた。
「という訳で、クレイは少し鱗が緑色をしている奴と戦えば、レベルの違いも考えて負ける確率はかなり低い筈だ。」
「分かりました。なら僕はそいつと戦う事にします。」
クレイからしてみれば竜と戦うなど今まで考えられなかったが、シェノスにより魔改造が施されたことでこの世界では上位の実力者となったため、そして二ヶ月間とはいえシェノスに戦いのいわゆるプレイスキルを全て叩き込まれたのが効き、不安はあるが、その分自身もあった。また、妹を守る為にも今回は必ず成功させようとも思っていた。
ネイサーはネイサーで今回が主の計画で重要な場面だと考えていたので今まで以上に役に立つべく、忠誠心に燃えていた。
〜しばらくして〜
「そろそろ王国軍に合流するため街を出てくれ。各自自由ではあるがなるべく早めに行ってくれ!」
ギルド長が広場で冒険者たちに指示を促す。そして冒険者たちはその言葉に従い移動を開始した。
「そろそろ我々も移動するべきかと。」
「そうだな。なら私たちも出るとしよう。」
シェノスたち三人も移動をする。移動をシェノスたちは飛行で飛んでいった。
空を飛んで来た分他の冒険者よりも圧倒的に早く着いた事もあり、シェノスは王国軍を遠見の眼で見ていた。
次回は王国軍になると思います。