第72話 敵は本能寺にあり
火炎に染まる本能寺の中、兵たちは混乱していた。
「速く信長様に報告を」
「駄目です。上への階段は火炎によって燃え尽きました」
「何!?」
騒ぐ兵たち。
彼らを標的とし、火炎の中から現れた二人の武将がそこにいた二人の兵の首をはね飛ばした。
「才蔵。信長見つけたら長政様に報告する?」
「いいんじゃない。どうせ俺たちに殺されるような奴なら、浅井は戦おうとしていないし。だから殺せないと判断したら逃げて浅井に報告すればいいよ」
喋りながら進む才蔵と貞宗。
そんな二人へ一人の兵が斬りかかるも、あっさりと首を跳ねられる。
「さあ、次は誰かな?」
才蔵の殺気が本能寺全体へ行き渡り、寒気と恐怖が兵たちに感染する。その恐ろしさに刀を捨てて本能寺から一目散に去る兵もいた。
それを察知した浅井長政は、才蔵の底無しの強さに驚いた。
「おいおい。さすがに敵意をむき出しにしすぎだろ。ま、おかげで信長の居場所は大体解ったがな」
長政は剣を抜き、早足で既に燃え尽きているはずの階段を駆け上がる。長政はほんの小指くらいしかない足場を頼りに、階段を駆け上がる。そしてそこに見つけた。憤怒に染まる織田信長を。
「久しぶりだな、浅井長政」
「おやおや。眠っていると聞いて急いで来てみたら、まさか既に起きていたとはな」
「ああ。それならこいつらが起こしてくれたんだよ」
織田信長の背後には、前田利家と森蘭丸が剣を抜いてたたずんでいた。
「なるほどなるほど。ではでは君たちのせいで私の計画が台無しになったのか」
浅井長政は笑みを浮かべつつも、その仮面の裏に隠された狂気の怒りを隠しきれてはいない。
「浅井。一騎討ちで良いか?」
「当然だ。私はお前を殺し、そしてこの世界の大名となる」
浅井長政は剣を抜き、そして織田信長と向かい合う。
「浅井家当主、浅井長政」
「織田家当主、織田信長」
「「いざ、尋常に勝負」」
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檻の中、武士琉は一人考え込んでいた。
全ては恐らく明智光秀と浅井長政の反抗であると。だからこそ、武士琉は背中に隠し持っていた刀で檻を切断し、外へと出た。だがそこは地下。上に上がるには火炎の中を掻き分けなくてはならない。だが武士琉は魔族である。
火炎など悠々と掻き分け、武士琉は本能寺へとついた。上へと出た瞬間、武士琉へと一人の男が刃を振るう。
「才蔵か!」
武士琉は襲いかかってきた男に驚いた。
「なぜ我が名を知っているのかは解らないが、ここでお前を殺すことは変わらない」
才蔵は刀を自由自在に振り回し、一瞬にして武士琉の両腕を切断した。勝利を確信した才蔵は武士琉の心臓めがけて刀を進める。
「させません」
「武士琉は、殺させない」
才蔵の刀を防ぐように、二人の武士が刀を才蔵の刀に押し当てていた。
「紅真!?それに才可!?どうして俺のことを覚えている」
紅真と才可は振り返り、武士琉を見て呆れたように言った。
「「恩人のことを忘れるほど、恩知らずじゃないですよ」」




