第65話 せめて愛しきかの者へ
森が火炎に染まる中、犬吉は笑っていた。
「何がおかしい?」
「おかしくて仕方がないんだよ。だってその作戦が、守成様の考えと全く一緒だったんだから」
「何!?」
火炎の中を掻き分け、一人の男が現れた。
「まさか一成、お前が石田家を潰そうとしていたとは、さすがに驚いたよ。だがな、やはりお前は裏切りにはなれていないか。穴が多すぎた」
「親父……」
石田守成は巨大な矛を構え、その矛には火炎が纏われている。
「本気を出したか。親父」
「当然だ。息子が道を歩み間違えたのなら、正しい道を教えるために叱ってやるのは父であろう」
「ったく、しょうがねえから殺してやるよ。親父」
「こっちの台詞だぁぁあ」
石田守成の矛は地を砕いたーーが、石田一成はその側面へと駆け、刀を振るって守成の腹へと一撃をいれたーーが、その一撃を守成は素手で受け止める。
「犬吉。お前は城に戻って魔族大名の相手をしろ。恐らく魔族大名は、城にいるかもしれない」
「解りました。守成様、死なないでくださいね」
「ああ。格下には負けん」
犬吉は火炎の中を勢いよく駆け、その後を追おうとした一成を守成が矛で殴る。一成は回避し、守成と距離をとった。
「親父。俺は武士などには興味はない。ただ俺の胸中にあるのは、一人の女だけだった」
「そうか。別にどんな理由があろうと、何か目的はあるのならそれは武士に違いない。だがな、俺にも護るものがある。その傷害となるものはたとえお前であろうとも、慈悲はかけんぞ」
「全力で来い」
守成は矛に火炎を纏わせる。それは膨大な量であり、先ほどの火炎の量とは比べ物にならないほどだ。その火炎は天をも突き抜け、その矛を持った守成は一成を標的とした。
「既に壊れた森だ。どうなろうと関係ないだろ」
「なぜ森を燃やした。俺は全て壊すつもりでやったが、お前は違うだろ」
「ああ。俺は城さえあれば皆救えると思っただけだよ。いつか森は燃え尽きるし、それにもうすぐ雨雲が近づいてくる。だから魔族だけを殲滅するため、お前たち裏切り者一派には内緒で兵を撤退させた」
「さすがは親父だな。頭がはたらくものだね」
そう言う間にも一成は守成の懐へと忍び込む。が、守成は足に火炎を纏わせて一成を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた一成は地面へと倒れ込み、その直後に守成は巨大な矛を振り下ろした。
「さようなら。一成」
火炎が巨大な爆発音をたてて周囲へと飛散し、巨大なクレーターができるとともに爆煙が周囲に立ち込める。
ーーごめん。やっぱり俺じゃ、君は救えないみたいだよ。本当に……ごめんね。




