第59話 打倒、織田信長
倒すべき相手を魔王は見つけた。
倒さなければいけない相手を魔王は見つけた。
「魔王様。なぜここを攻めようと思ったのですか?」
「気まぐれだよ」
「本当ですか?」
「ああ。そんなに問い詰める暇があるのなら、君も戦場に赴いたらどうだ?そしたら鈍った腕も少しは強くなると思うがな」
「何をおっしゃるんですか。戦場に興味はありませんよ」
そう言って魔王に背中を向けた男は、静かに立ち去った。
魔王船の中、魔王は静かにため息を吐いた。
「またいつか、あの人に会えるでしょうか」
その問いは空にかかっていた雲に覆われ、そしてかき消された。
ーー1547年。吉良大浜の戦い、決着。
ーー1547年。石田家家督争いの乱、開幕。
「守成様。石田家の家督を一成に継がせるというのは本当なんですか?」
「そんなに驚くことか?」
石田守成は平然とした態度で驚く兵たちの問いに答える。
だがしかし、兵は石田守成とは正反対に、尋常ではないほどの冷や汗を出してあたふたした声で問いを続ける。
「ですが守成様、今はまだ魔族大名の一角と交戦中です。こんな中で家督を継がせるとなると、いささか問題があるように思えるのですが……」
「確かに急に魔族大名と戦わせるのはさすがにまずいか……」
石田守成は腕を組み、眠っているかのように考える。
「解った。そんなに言うのなら、私が一成とともに戦略を練る。それでまずは戦いを学ばせるのはどうだ?」
「一応守成様が考えてくれると言うことですよね?」
「まあな。さすがに兵を死なせるわけにはいかないからな」
「解りました。では失礼します」
「待て犬吉」
走り去ろうとした男を制止し、石田守成は立ち上がった。
「もしかしたら二成や三成が何か仕掛けてくるかもしれん。だからここは用心深く息子たちを観察してくれ」
「はい。解りました」
この時既に、石田守成は漂う不穏な気配を感じていた。
まるで今まで牙を潜めていた獣が牙をむき出しにするように、血肉を喰らうかの如く駆ける何かに少しばかり怯えていた。
石田家の家督。
それを継ぐに相応しい者は、一体誰なのやら。
そんなことを考えている最中、彼のいる佐和山城から少し離れた森の中では、一成とその護衛である前野忠康とともに歩いていた。一成の左側を歩いて周囲に気を配っている前野忠康は、ふと視線を感じて周囲を見渡す。だがその正体は見えないまま。
気のせいかと視線を左手へと向けた瞬間、弦が弾かれる音とともに、前野忠康の脳天には一本の矢が刺さった。前野忠康は脳天から血を吹き出して倒れ、そして眠るように死んでいった。
「思い通り」




