第5話 三人の武士
1560年6月12日。14時00分
今川義元は戦場の指揮をとっていた。だが指揮をとっていた場所は戦場ではない。そこは遠く離れた場所。
離れているというのに、今川義元は指示した瞬間に戦場で戦っている兵を動かすことができた。
なぜなら……
世界ではいかに速く情報を伝達できるかが重要なことである。たとえばトランシーバーのように遠距離にいてもすぐに情報を伝達できる物。これにより声での遠距離の会話が可能になった。
やがて携帯電話がつくられどこにいようとも会話ができるようになった。
だが、魔王はそんなものを創らなかった。
なぜか。
それは、もっといい力を彼らは持っていた。
その力の名は……
「テレパシー」
魔王軍の伝達手段のひとつである。
今川義元のそばには魔王軍の兵がいる。その者達が戦場にいる魔王軍の者に伝達をしている。それにより、わざわざ戦場に行かずとも戦場の指揮・統率を簡単に行うことが可能である。
つまり、織田軍に勝ち目は……もう無い。
否、今川義元の背後に三人の武士が現れた。
「森蘭丸」
「前田利家」
「武士琉」
「「「我ら、信長の武士。今川の首、もらいに参った」」」
突如、それは突如であった。
颯爽と現れた三人の武士に、今川義元の顔色は悪くなる。
「殺れ。お前たち」
「ははっ」
スケルトンが武士琉たちを襲う。
「失せろ」
前田利家は剣の達人である。彼を止めることは出来ない。
だが彼とて、何千という敵を相手にすれば死に至ることもありうる。だから彼は託す。蘭丸と武士琉に。
前田利家が今川義元を護るスケルトンを一手に引き受ける。
数千の敵をたった数本の刀で木っ端微塵にして斬り刻む。
「行けー。蘭丸。武士琉」
「「をおおおおおおお」」
蘭丸と武士琉は進む。
だがスケルトンの数は多く、武士琉たちは今川のもとにたどり着けない。
「どうする、蘭丸。キリがない」
「……少しの間だけ私を護ってくれませんか」
彼女には策があった。
「わかった。任せた」
武士琉は蘭丸を襲ってくるスケルトンを迎い撃ち、次々に倒していく。
その間、蘭丸は詠唱をする。
「風の悪魔よ。土の精霊よ。我は武士である。ただ一閃に力を込め、己の全てで討ち倒す。我が刃よ。地を砕け。蘭丸一閃」
蘭丸は上に振るい上げた刀を颯爽と振り下ろす。
その後激しい音と共に地が割れた。
激しい地割れに呑み込まれ、スケルトンが一掃される。
「今だ。行け」
「をおおおおおお」
今川義元に向かって一直線に走り、武士琉が飛び掛かる。
「なあ、裏切り者。今、どんな気持ちだ」