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すれちがい戦争~魔王と大名の乱~  作者: 総督琉
六角の戦い
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第58話 武士道

 武士とは、己の掟を護り、そして己のために刀を振るう者のことを指す。

 だがしかし、武士になど条件はない。

 ただ一つ言えることは、武士ならば、誰かのために戦え。


「蘭丸。あと少しだから、待っていてくれ。必ず俺が、お前を救ってやる」


 武士琉は刀を構え、斎藤道三の刀をきれいに弾いた。だがさすがに斎藤道三も素人ではない。斎藤道三の蹴りをくらい、武士琉は吹き飛ぶ。


「おや、足が治っている?」


 武士琉が平然と立ち上がったのを見て、斎藤道三は足の傷が塞がっていることに気づいた。だがそれが隙となった。

 武士琉は刀を大きく振るい、斎藤道三の腹部の鎧を刀で粉砕した。


「なっ!?」

「まだぁぁぁああ」

「速い……」


 武士琉の刀は斎藤道三の頬をすれすれで通る。が、斎藤道三にはやむ無くかわされた。斎藤道三は前傾姿勢となっている武士琉の顎を掴み、そのまま上に振り上げて振り回す。

 その腕力に驚くも、武士琉は刀で斎藤道三の腕を斬ろうと刀を振るう。だがそれを読んでいた斎藤道三は、思いきり壁へ放り投げた。


「ぐはっ……」


 武士琉は血反吐を吐いて壁を寝床として倒れ、刀を握る力を弱めた。

 意識を失い欠けている武士琉へ、斎藤道三は刀を武士琉の右腕へと刺した。武士琉の右腕からは地飛沫が散り、刀は地面を転がった。


「終わりだ。武士琉」

「まだだ」


 斎藤道三は首めがけて横一閃に刀を振るう。

 だがしかし、武士琉はそれを完全に読んでいた。


「負けられない」


 武士琉は斎藤道三の刀をしゃがんで回避し、下から上へと刀を振り上げた。その一撃をくらった斎藤道三は腹部に傷を負い、血を吐き出して後方に身を倒した。

 血が目に滴る中で、男が夢を見た。


「パパ上」

「パパ上じゃない。父上と呼ばんか」

「パパ上」

「違う、ち・ち・う・えだ。」

「じゃあ上田」

「上田じゃなぁああああああああああい」


 いつものように笑い合い、男は娘の手をとって夜の町を歩いていた。

 時々浪士に絡まれようとも、刀の一振りで浪士は血を吐き出して倒れた。無惨に倒れる彼らを背に、男は真夜中に溶け込んでいく。

 灯りが見え、男はその家の中へと入っていく。娘はすぐに布団へと潜り、寝返りをうってずれた布団をもとに戻した。


「全く、帰蝶は相変わらずだな。寝るときは静かに眠れというのに」


 男は娘の布団を撫でながら、時間が経つのを刻一刻と待っていた。

 もうすぐ経てば、きっと彼女が帰ってくる。だがいつまで経っても、彼女が帰ってくることはなかった。

 やがて夜が明け、娘は目を覚ました。


「上田。今日もお母さんは帰ってこないの?」

「明日の夜こそ帰ってくる。明日こそ……帰ってくるから…………」


 男は辛気臭くそう言って、昇り始めたばかりの朝日を静かに眺めていた。だがどれだけ朝日が昇ろうと、男の心の朝日は昇ることはなかった。

 いつまで経っても、男の心は暗いまま、真夜中に溶け込んでいた。


 そして今、男は死ぬ。


「帰蝶……。必ず……お母さんは帰ってくるよ……」


 地べたを這いつくばって移動するその最中、城の壁が破壊されて男は爆炎の中に消えていく。


「さようなら……。帰蝶…………」


 爆炎が真夜中を飲み込み、そして朝日が昇った。


「やっと会えたな。小見の方……」

「あなた。死んでしまってすみません」

「これからは二人で帰蝶を見守ろう」

「ああ」


 そして今、魔王の船がどこかへと降りた。


「これより、ここを終わらせる。進め」

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