第56話 初陣
ーー1547年吉良大浜の戦い、開戦
純白の光に包まれた武士琉がいた場所は、既に城の中。
多くの兵が「何だこいつ」という視線を武士琉に向ける中で、一人の男が武士琉へと歩み寄って刀を武士琉の首もとに当てた。
「何者だ?お主」
「斎藤道三!ここはどこだ?」
「質問に質問で答えるとは、お主、死ぬ覚悟はできているようだな」
斎藤道三。
彼は美濃国盗りという偉業を成し遂げ、現在の世において、悪名名高く、そして知略と戦術、そして実戦の全てに優れている完璧な武士である。
それを知っている武士琉は、思わず出てしまった言葉に後悔し、冷や汗を流す。
「口を閉ざさぬ方がよい。終わるという場面で抗う者の最後の言葉を聞いてみたいものだからな」
(まずいな……。明らかにこのままでは殺される。斎藤道三は確実に俺を生かしはしないだろう。とは言っても、魔族の血が入っているからには簡単には死なない。だからといって、ここで首を跳ねられるのはまずい…………)
武士琉は喉を唾が通らないほどに焦っていた。
このままでは確実に首は跳ねられる。その状況を回避するには、いや、そんな方法はないだろう。
強いてあげるとするならば、刀を抜くこと。
武士琉が隼のように刀を抜いて斎藤道三の首もとへ当てた瞬間、襖が思いきり開けられた。
それに呼応するかのように、斎藤道三の刀は武士琉の首から血を数滴垂らす程度に刃が刺さっており、武士琉の刀は斎藤道三へ当たる寸前で止まった。
「何事だ?そんなにも焦って」
「斎藤道三様。て、敵襲です」
「はぁ!?んなわけ。だってここは……」
斎藤道三は襖を開けて外を見た。だがその瞬間、火を纏った矢が斎藤道三の額へと放たれた。
「道三様!」
「安心せえ。この程度じゃ俺は殺せねーから」
斎藤道三は紙一重で火を纏った矢を手で掴み、そして矢が放たれたであろう木を目掛けて矢を素手で投げた。
木の陰に隠れていた一人の男ーー雑賀孫一。その男は木の陰から襖を開けたばかりの斎藤道三を見ようと覗いた瞬間、彼の頬を先ほど射ったはずの矢がかする。
「おいおい。人間技じゃねーだろ」
雑賀孫一はその恐ろしさに驚嘆し、付近の平地を忍の如く足で駆け抜け、何とか城下町まで走り抜けた。
「あの足の速さ、忍か?それとも、どこかの隠密集団か?」
「道三様。どうかされましたか」
「まあきにするな。だがしかし……まさか既に火攻めされてるとはな……」
斎藤道三の視界に映っていたのは、燃え盛るこの城であった。
「せっかく魔王軍様様に創ってもらったばかりの城だというのに、まあ魔王軍に内通していたのがバレたとかで燃やしてきたのかな?それにしても、なかなか質の悪い奴だ。まあ武士でないなら正々堂々などしなくても良いか」
斎藤道三は腰に刀をしまい、武士琉を視界にいれつつ兵たちに怒号する。
「お前ら。既にこの城は燃やされている。ということで、その男を拘束しろ。交渉道具に使う」
その指示が下った瞬間、兵たちは一斉に武士琉へと襲いかかった。
「待て」
兵たちの足は、その声を聞いた途端に止まった。
それは斎藤道三の声ではない。その声の正体は、
「「「明智光秀様!?」」」
「皆、その男は私の親友なんだ。だから私が預かろう」




