第53話 目の前の絶望
それは森の中のとある基地。
たとえ幾千もの武士が歩こうと見つかることなく、幾千もの刺客が送り込まれようとも見つかったことなど一度もないその基地。
その基地の中の一室ーー畳の間で武士琉は加堂才可、藤条紅真、藤条亜李葉は身を潜めていた。
「なあ。どうして誰にも見つからないような場所にあるのに、紅真たちはここを見つけられたんだ?」
「それは当然、ここを造ったのは俺たちの父母だ。だから見つけたというよりかは、最初からこの場所を知っていたという方が正しいかもな」
「なかなかやるな」
「まあな。だがここは絶対に見つからないわけではない。それは入り口を見て解ったろ」
ここ秘密基地の入り口は、"木"である。
そう。今彼らのいる秘密基地へとたどり着くには、五万と生えている木の中から扉のついている木を探し、そしてそこからいくつもの迷路を抜けてようやくそこへたどり着く。面倒な代わりに、完璧な安全が得られる。
「紅真。亜李葉。才可。俺はもうすぐ行かなくちゃいけない。短い間だったがお世話になったぞ」
「武士琉。そこへ行くの」
襲われる眠気に堪え、亜李葉は目を擦りながら武士琉へと問う。
「そうだな。悪を倒しに行くのさ。というよりかは、行かなくてはならない。俺には刀の道しかない。だからこそ、戦ってくる。もしかしたらもう会えなくなる。だから皆、今までありがとう」
「武士琉?」
武士琉は彼らに背を向けて、長い迷路を通って出口である木の中にと移動した。だがここが扉だとはバレてはいけない。だから武士琉は木の上から地面へと飛び降り、あたかも木の上にいたように振る舞う。
運が良かったのか、周りには誰もいない。
「よし」
武士琉は駆け抜け、魔族の臭いがないかを探しに嗅ぐ。だが周囲には魔族の臭いは微塵も残っていない。
「今回は魔族大名などいないのか?」
ふと困り果てた武士琉は空を見上げた。武士琉は空を見て、そして固まった。
「はははっ……。これは……何だよ!?」
ーー真夜中の金閣寺は小さな輝きを見せ、警備ががら空きとなった金閣寺を襲う三十六人衆の影は、次々と首を斬り落としていくのであった。
「おやおや居眠り坊主。もう山城国から返ってきたのか!」
「当然だ。全部暁姫に任せただ。だから暁姫さえ揃えば全員集合だ」
「ったく、お前は相変わらず自分勝手だな」
「自分の生きたいように生きる。それがわいの居眠り道だ」
「これだからガキは。ところで海良、未だに足利家の生き残りは誰一人としていねえんだよ。それどころか、足利家専用の馬を厩舎に置いてだぞ」
元無はそれを聞き、さすがに何かがおかしいと察する。
まるで人手はない何かが、この戦いにあらかじめトラップでも仕込んだかのように、それはまるで魔族の手法である。
「足利家は魔族がかくまっている」
「やはりあの噂は本当だったのか」
「そのようだな」
元無は"あの噂"に対する疑念が確信に変わり、いささかホッとしている様子であった。
「これで心意気なく奴らを殺せる」
そして元無は空を見上げた。
そこにはーー
「あれは……北近江国が滅んだ時に落ちてきた…………"巨大隕石"!」
絶望から絶望へ。
優勢から劣勢へ。
今ここにて、魔族による神の制裁とも言うべき裁きが、武士たちに下された。
「そんな……」




