第49話 策の策
三十六人衆。
彼らが真っ先に狙いを定めたのは金閣寺にいる足利家。
山城国で起きた暴動はあくまでも足利家が所有している兵を山城国へと集めることであった。
「おいおい。魔王軍などいるはずがないというのに、いとも容易く騙されてしまったよ。足利くんは」
「さすがだな。麗菊」
「流魔様ほどではないよ」
「いや、流魔は少し条規を逸している。あいつの作戦は、被害などは何も考えていない。ただ目標を討ち取るためには、どんな犠牲であろうとも容易く捨てる。彼にはその覚悟がある。だからこそ、彼の作戦は必ず成功する」
金閣寺を見つめる麗菊と元無。
そこへ割り入るように、海良が現れた。
「麗菊。元無。流魔がサボっていないで戦場に行けと、そう言っております」
「了解」
「海良。私も行かなければならないのか?」
「麗菊。あなたの腰に提げている刀はなんですか?戦う気がないのなら、戦う意思がないのなら、そんな刀、もう捨ててしまいなさい」
「へいへい。戦いますよ」
麗菊は刀を抜き、金閣寺へと歩みを進めた。
その頃、山城国では未だに暴動が収まらずにいた。というのも、山城城へと攻め入った者たちは、伊勢貞宗を見つけることができていなかった。
「伊勢貞宗を探し出せ」
「そうだ」
「駄目です。下の階には伊勢貞宗はいません」
民兵や武士たちが山城城を駆けずり回る中、伊勢貞宗の従順な家臣である山本勘助は城へと攻め入ってくる武士と戦闘を繰り広げていた。
「貞宗様。私はあなたを死なせるわけにはいきません。ですので、生きてください。私が少しでも兵の足止めをしますので」
刀を乱暴にも振るい、己を鼓舞し、山本勘助は城内部にいる武士を次々と斬りつけていく。
だがしかし、さすがの大勢に、山本勘助は力尽きつつあった。
「私はぁぁぁあ、まだぁぁぁああ」
山本勘助はたとえ骨が折れようとも、たとえ拳に力が入らなかろうとも、たとえ命が燃え尽きようとも、山本勘助は刀を振るい、足に力を入れて立ち上がった。
「負けるわけにはいかないのだ」
そんな山本勘助の前に現れたのは、石田守成。
「久しぶりだな。山本勘助」
「石田……守成。どうしてお前までここに!?」
「当然だろ。お前が従えている伊勢貞宗があの時裏切らなければ、俺たちはあんな犠牲を出さずに済んだというのに、お前らは一体何を考えている。それでも武士か」
石田守成は怒りに任せて刀を抜き、その刀を天へと掲げた。
「山本勘助。今ここで、お前を討つ」
「私は負けるわけにはいかないのだ。我が主、伊勢貞宗様のため、刀を振るうと決めたのだから」
山本勘助と石田守成は刀を握り、そして交えた。
幾度の擊が飛び交う中で、二人の武士の血は錯乱する。
そして伊勢貞宗、彼は城の外へと逃げ、その道中で一人の男に会っていた。
「久しぶりだね」
「浅井長政……!?死んだはずじゃ…………?」
「策の策。私はね、それを誰よりも上手く使えるんだよ」




