第41話 火花が散らされる戦の中で
「明智殿。一体、誰を倒せば次の戦場へと向かえるのですか?」
「それはな、彼にしか解らないことだ。というか、そもそも彼がいる戦場は本当はあったかもしれない戦だ。だからこの戦いが本当にあるとは限らない。というか、彼がいる世界は妄想かもしれない。だからこそこの魔術は面白い。そして、もうじき彼は次の戦場へ向かうか、ここで死ぬかの結末がつくだろうな」
明智光秀は黒幕のような笑みを浮かべ、彼が体験している世界を覗いた。
ーーさあ、彼は蘭丸を救えるのかな?
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ーー観音寺城内部にて、
観音寺城を駆ける二人の武士。
そんな二人の前に、刀を持って斬りかかってくる武士が五人。
「才可。俺は右から三人斬る」
「じゃあ私も左から三人斬る」
五人の武士が一斉に斬りかかる、が、紅真と才可は刀を抜き、一瞬にして五人の武士を斬り裂いた。そして真ん中にいた武士だけが、二人の刀の攻撃を受けた。
一人だけオーバーキルされたが、二人は気にせず観音寺城内部を徘徊する。
「紅真。そういえばこの城の城主は誰だっけ?」
「六角義賢っていう武士だよ。たしか彼は戦闘よりも知略に向いていると囁かれていたから、多分この分厚い城の守備も彼のものだよ」
「すごいな。けどそれにしては城内部は少し脆いね」
観音寺城を走る紅真と才可であったが、彼らを発見し、襲いかかる者はほとんどと言っていいほどにいなかった。それにさっき会った五人組の武士が城に入ってきて初めて会った敵であったのだ。
才可はそんな不審な気配を感じるも、その正体を掴めないでいた。
「大丈夫じゃないか。多分明智光秀様が倒してくれているんだ。きっと……そうなんだ……」
紅真も何かを悟ってはいたが、それを口には出さなかった。
二人は城内を駆け回っていると、味方である信長軍の兵士が多く倒れている場所を見つけた。
「大丈夫ですか!?」
才可は咄嗟に駆けよって、血まみれになって倒れている兵士に問う。
兵士は何かに怯えた様子で言う。
「この城には……人じゃない何かがいる……」
「人じゃない何か?何だそれは?」
「それは……ほら、後ろに」
才可は振り向いた。
背後の壁では、紅真は血まみれになって壁に横たわっていた。
「紅真!」
血まみれになっている紅真の頭を殴ろうとしていたのは、人ではない何か。
「紅真は、殺させない」
才可は刀を水流のように抜刀し、その人ではない何かの腕を斬り飛ばしたーーだが、よく見たら人ではない何かは腕が六本生えており、振り向いたその形相から窺えるは、六本の目。
「何だ……こいつ!?」
才可は震えた足で一歩二歩と足を下げた。だがしかし、壁はすぐ背中についた。
才可は逃げ場などなく、刀を構えるしかなかった。
「何者?」
「俺は人喰い阿修羅。魔族の中でも魔族大名に位置する存在だよ」
むき出しの殺意。
その威圧感に敗れ、才可は足をすくめる。
遥か巨大な敵、そうとしか表現できないほどに、才可にとっては圧倒的過ぎる強さを誇る化け物であった。
勝てないーーそう錯覚させるほどに、目の前の壁は高すぎる。
「俺は人間を喰うのが趣味でな、時々美味しく食べてるんだよ。でもさ、腕を吹き飛ばされるなんて初めてだから、殺意がぷんぷんに湧き出ちゃってるんだよ。解るよな。この気持ちがぁぁあ」
人喰い阿修羅は腕を後方へと振るう。そして振り下ろす。
才可は身を翻してかわすも、複数の腕を持っている人喰い阿修羅にとって、一撃がかわされるなどなんら問題のない話。地面についた一本の腕、それ以外の腕で才可の脇腹を殴り、才可は床を転がった。
「おいおい。腕を斬ってくれた礼は、この程度で済むと思うなよ」
人喰い阿修羅は才可へと殺意をむき出しにしながら飛び込む。
才可は何もできず、圧倒的過ぎる絶望を引き連れる人喰い阿修羅の拳を、避けることはできなかった。
「終わりだよ。人喰い阿修羅」
「は!?」
次の瞬間、人喰い阿修羅の体は真っ二つに切断された。血が周囲に錯乱するとともに、消滅した人喰い阿修羅の背後から一人の男が現れた。
「全く、魔族とは下品なものだな」
「明智……殿……」
そこにいた長身の男はーー明智光秀。
彼であった。
「大丈夫かな?まだ若き武士よ」




