第40話 箕作城へ
「なあお前、この先の城はたしか箕作城だったよな……」
「ああ。そこには僕の仲間が大勢いる。だからそこへ逃げれば、僕たちは助かるはずだ」
だがしかし、武士琉には一つ懸念があった。
「どうした?武士琉」
「俺はこの後の展開を知っている。このまま箕作城へ行ったとしても、信長軍にせめおとされた後の箕作城しかない。つまりは、俺たちは今敵に向かって走るという無謀なことをしているんだよ」
過去を知っている武士琉は知っている。
「それでも僕は、仲間を信じているんだよ。だから行かせてくれないか。箕作城へ」
悲しげな顔で、何か護りたい者があるような顔で、六角義治はそう言った。
なぜ武士琉が信長軍について詳しく知っているのかも問わず、彼は城へ向かいたい、ただそう言った。
未来は変えられるかもしれない。だが確定された過去だけは、どうあがいても変えることは不可能なのだ。
それは武士琉がよく知っていることだ。が、魔王に支配され、そもそもが変わってしまった世界、それもここはパラレルワールドとかいう世界かもしれない。
「なあ六角義治。俺はな、もう何も失いたくないし、何かを失っている者の顔は見たくない。誰かを傷つけるのは嫌だし、誰かが傷つくのはとても痛いことなんだ。だからね、俺はお前の提案にのるよ。世界を変えられるのは、いつだって自分から行動した者なのだから。だから六角義治様、俺を率いてくださいませんか?」
武士琉は膝をつき、六角義治へとその身を捧げた。
六角義治は膝をつく武士琉へ、たった一言こう言った。
「僕の仲間になるのなら、一つだけ護ってほしいことがある」
「はい。なんなりと」
「死ぬなよ」
「はい」
いつか別れは来るのだろうーー当然だ。
いつか悲しむ時が来るのだろうーー当然だ。
いつか誰かを殺し、その者へ償う日が来るのだろうーー当然だ
あの日あの時、少年は何も護れなかった。
ただ死んでいく仲間を地に、少年はただ泣き叫ぶのみであった。
そんな自分はーーもう嫌なんだ。
「行くぞ、武士琉」
仲間がいた。
友人がいた。
盟友がいた。
恋人がいた。
だから少年はーー武士になった。
武士琉は六角義治の背を追って、箕作城へと足早に駆け抜ける。
だがしかし、自分の足を使って走るのだ。箕作城まで速くとも一時間はかかるだろう。
ーーそれじゃあ間に合わない。
そんな武士琉と六角義治の前へ、馬にのった一人の武士が現れる。
武士琉が一度見たことのあるどこかの一家の家紋が見え、その者は刀を数本腰に携えている。透き通るような美しい笑顔には、武士琉はどうしても見覚えがある。
「利家!?」
「前田家当主ーー前田利家。ただいまをもって、戦場に復帰した」
馬にのり、長い刀を天へと掲げ、男は武士琉と六角義治の前に現れた。
爽やかイケメン、それを擬人化したかのような顔立ちから覗かれるのは、不純な笑み。
前田家当主ーー前田利家。
彼は今、戦場で馬を走らせる。




