第35話 歩むべき道
武士琉は純白の光に包まれると、石畳でできたどこかの壊れ欠けた城の中にいた。天井の壊れた石塊であろうか、石片が地面にいくつも落ちていた。
無数の石片、それを眺めていると、巨大な足音が近づいてくる。まるで小さな地震が一瞬で何回も起きているように、そんな揺れが何度も起きている。
その足音が響く方を見ると、そこには巨大な魔族がいた。
赤い皮膚、少しポッチャリとした体からは異臭が漂い、その魔族の手には巨大な紅蓮色の刀剣が握られていた。鋭く、そして大きなその刀剣は、武士琉の身長とさほど大差ないだろう。その刀剣を握るのは、四メートルを越える巨大な異種。
「わいはアンタレス。貴様を殺すように仕向けられた、上位魔族に位置する中でも優れた者、魔族大名だ」
「魔族大名?」
「ああ。七名の災厄より下の階級。だが魔族は多くの魔族を率いる将だ。そういえば最近、わいと同じ魔族大名の蛇王たちが何者かに殺られたらしいが、お前か?」
「ああ。蛇王は俺が殺した」
その言葉を聞くと、アンタレスからは鋭い殺気が放たれた。
「そうか。お前があの意味の解らない巨大な穴を造るほどの攻撃の主犯者か」
「大穴?」
「とぼけるな。というかこれ以上喋るな。今ここで貴様を殺すのだから」
アンタレスはその刀剣を振り上げた。その瞬間、武士琉は側面へと走り抜ける。が、刀剣は振り下ろされるのではなく、横へと振られた。
武士琉は足をすくわれ、体を浮かした。その瞬間を見計らい、アンタレスの蹴りが武士琉の腹へと炸裂する。
武士琉は宙を盛大に転がって、そして窓ガラスを割って違う部屋へと横たわる。
「痛い……」
武士琉は腹に硝子片が刺さり、それをゆっくりと抜いて武士琉は仰向けになって横たわる。
「何だあいつ……。それに、どうして蘭丸がいない?」
その独り言を聞いていたのか、武士琉へと歩み寄っているアンタレスが口を開いた。
「ここは死んだ魔族の霊園。このわいを倒せば次のフィールドに飛ばされるだろう。そして六の魔族を倒した時、お前はこの長い旅から解放される。が、ここでお前は死ぬがな」
アンタレスは剣を振り上げた。そしてその剣を勢いよく振り下ろした。瓦礫をかき分けて刀剣が地面を粉砕し、武士琉の左腕は吹き飛ばされた。
「もう終わりか?人間」
その言葉を聞いた途端、武士琉は笑いを堪えきれずになった。
「俺が人間?お前の目には俺がそう映っているのか。それはいいことを知った。だがな、残念ながら俺はもう人じゃないんだよ。だからほら、」
武士琉が吹き飛んだ左腕を拾い、斬れた腕の断面に当てた。たちまち腕は繋がって、元通りとなった。
その芸当を見て、アンタレスは武士琉が魔族ではないことを悟った。
「何だ……こいつ……!?」
「武士琉だよ。そして、お前を殺す武士でもある」
武士は刀を抜き、アンタレスへと向けた。
「アンタレスとか言ったっけ?俺、一応魔族だから、お前と同じ魔族だから、蘭丸を救い、そして今まで死んでいった武士達の思いを、俺は叶える」
武士琉は刀を構え、アンタレスと睨み合う。
「お前はこのわい、魔族大名にも勝てないんだろうな」
「魔族大名?なんだそれ?どうせ、七名の災厄に到底敵わない雑魚魔族だろうが」
「お前。殺す」
溢れんばかりの殺気を放つアンタレス。
だがそれを手前に、武士琉はアンタレスの背後に回っていた。
「教えてやろうか。武士というのはだな、ただでかいだけの化け物には負けないんだよ。だから、武士は勝つんだよ」
武士琉は刀でアンタレスの背中に無数の傷をいれ、アンタレスが振り向いた瞬間、武士琉は飛んだ。そして刀を強く握り、一回転してアンタレスの首を跳ね落とした。
「これが魔族の血か……」
武士琉は何か思い詰めたような感情にうなされながらも、前へと歩み出した。が、倒したのは六いる内の一角。
武士琉は純白の光に包まれ、そして新しいフィールドへと飛ばされた。




