第33話 揺れ動く戦乱の世の中心で
そこは魔王の一室。
だがしかし、魔王、そこにおらず。
空席であるその玉座には、精霊が一人ーーその玉座に腰かけていた。
「相変わらず魔王の部屋は広いな。だがもう魔王はいなくなったし、正直私どもは何をすれば良いのやら。魔王様、速く戻ってきてください。でなければ、私どもの軍は崩壊してしまいます」
一方その頃、ゴルゴーンの拷問部屋、そこにいる彼は目を開け、周囲の状況に驚くばかりであった。
頭を吹き飛ばされゴルゴーン、その残骸などどこにもなく、ただ一面が赤い血の海に染まっているのみであった。
そんな血生臭い石の大地。その部屋の壁に鎖で吊るされているはずの武士琉の拘束はなぜか解けていて、地面に置かれた自分の刀を腰に携え、石畳の扉を押し開けた。
「速く蘭丸を見つけなければ」
武士琉はこの広い船の中を足早に駆け、部屋を何度も行き来する。
そんな武士琉を見た通りすがりの魔族は、腕を鎌にして武士琉へと斬りかかった。がーー
「舐めているのか」
瞬殺。
武士琉が抜いた刀の早業により、通りすがりの魔族の首は吹き飛んだ。血が飛び散るのを背に、武士琉は蘭丸を探す。
だが、再び武士琉の前に男が現れた。
その男の顔を見るや、武士琉は刀を振り上げ、そしてその長身の男へと向けた。
「会いたかったですよ。明智光秀」
「おやおや。速攻で刀を抜こうとは、敵意が丸出しではありませんか」
長身の男ーー明智光秀は不敵な笑みを浮かべ、銀色に鈍く光る刀で美しい軌道を描いて武士琉へと向ける。
「武士琉。再び君を斬るのは嫌なんだがね」
「何を言っている。お前は蘭丸を一度殺した。だがなぜ生きている?」
「知っているかい?魔族の生命力、そして魔族が生まれた時の爆発力を」
「知らないな」
「魔族が生まれる時、大きなエネルギーが生まれる。そのエネルギーは人をも再生させるほどの莫大なエネルギーなんだよ。たとえ首が跳ねられようとも、それを再生することが可能だ。何を言いたいか、解るかい?」
彼が話した内容。
それと蘭丸の関係性、それらを武士琉は理解した。だが、それは到底受け入れることのできないことであった。
「まさか……」
「まさかまさかのそのまさか、蘭丸ちゃんは魔族になっちゃったんだー。人と魔族のハーフ。つまりは彼女はもう、純潔なる人には、戻ることができないだろうな」
「明智。着様ああぁぁ」
武士琉は憤怒を露とし、強く握りしめた刀で明智光秀へと襲いかかる。
「おやおや。やはり君も強くなったな。人でなくなったから」
告げられた残酷な言葉。
「まさか……」
「まさかまさかのそのまさか」
油断したのか、武士琉は明智光秀の刀を腹に受けた。武士琉は血反吐を吐いて膝をつく。
座り込む武士琉、であったが、腹に何やら違和感を感じていた。
「治……ってる!?」
武士琉の腹に空いた穴は、数秒と経たずに塞がっていた。
「さすがは魔族の子だね。武士琉」




